大腸がん患者が気を付けたい腸閉塞
大腸がんに伴い「腸閉塞」という言葉を耳にすると、激しい腹痛に襲われるのではないか、病気が進行しているということなのか、治療は手術しかないのか、といった様々な疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。また40~60代で治療と生活の両立を考える方にとっては、症状が日常生活にどのような影響を与えるのか不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。この記事では、大腸がんによる腸閉塞が起こる仕組み、症状、緊急時の対応や治療の選択肢、ご自身でできる生活の工夫に至るまでわかりやすくお伝えします。不安を少しでも軽くし、今後の生活や治療の見通しを考えるきっかけになれましたら幸いです。
-もくじ-
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①大腸がんによる腸閉塞とは?
- 腸閉塞の種類
└機械的イレウス
└機能的イレウス
- 大腸がんによる腸閉塞の症状
- 緊急性の高い症状
②大腸がんによる腸閉塞の診断
- 問診と身体診察
- 血液検査
- 画像検査
-大腸内視鏡検査
③ 大腸がんによる腸閉塞の治療法
- 保存的治療
- 外科手術
- 内視鏡的治療:ステント留置術
- 薬物療法・緩和ケア
④大腸がんによる腸閉塞の予防とリスク軽減
- 食生活の見直し
- 適度な運動と体重管理
- 定期的な大腸がん検診
⑤まとめ
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‖ 大腸がんによる腸閉塞とは
一般的に腸閉塞とは、消化しにくい食べ物や消化液、ガス、便などが腸管の中を通れなくなってしまう状態を指します。大腸がんによる腸閉塞は、がん本体が大きくなり大腸の通り道を塞いでしまうことで発症し、処置をしないと命に関わることもある緊急性の高い病気の状態です。ここでは大腸がんがどのように関連し、どのような症状に注意すべきかを解説していきます。

[機械的イレウス]
機械的イレウスは、術後の癒着(腸がほかの場所にくっついてしまう)で腸管がうまく動けずねじれて狭窄(きょうさく)することや腫瘍が腸管の中で大きくなり、徐々に腸管が狭窄するものを指します。腸管自体に血流障害がないタイプの「単純性イレウス」と、腸が強くねじられ締め付けられることで腸管の血流が阻害され、壊死している非常に重篤なタイプの「絞扼性(こうやくせい)イレウス」があります。大きく腸管が捻じれる腸管軸捻転(ちょうかんじくねんてん)やヘルニアの嵌頓(かんとん)*2は「絞扼性(こうやくせい)イレウス」になる可能性がある病気の一つです。
●狭窄(きょうさく)*1 :血管や腸など、管のようになっている臓器の内部が狭くなることをいいます。
●ヘルニアの嵌頓(かんとん)*2 :本来あるべき場所から腸などの内臓が飛び出してしまい、筋肉の隙間などで締め付けられてもとに戻れなくなった状態をいいます。
[機能的イレウス]
機能的イレウスは、腹部の手術後や腹膜炎の影響、ミネラルバランスの異常(代表的には低カリウム血症)により腸の動きが一時的に停止してしまうことで生じる「麻痺性イレウス」と、精神的な緊張や特定の薬物、腸管の炎症により腸管の一部が過剰に収縮(痙攣)し、その部分で内容物の通過が妨げられる「痙攣性イレウス」があります。痙攣性イレウスの頻度はかなり稀であり、主に麻痺性イレウスが大部分です。

大腸がんによる腸閉塞は、がんが進行し腸の通り道を塞ぐことで発生します。先程の分類では、機械的イレウスの中の単純性イレウスになります。閉塞の程度や部位によって異なりますが、次のような代表的な症状が現れます。腹痛
閉塞した腸の上流(口に近いほう)で内容物が溜まり、腸が無理に動くときに「波のある腹痛」がおこります。時間とともに徐々に痛みが強くなり、激痛となることもあり、腸の動きに合わせてキューッと締め付けられるような痛みが特徴です。
腹部膨満感・嘔吐
ガスや便が通過できずに腸管内に溜まるため、お腹が張って苦しくなり、衣服がきつく感じることや、呼吸がしにくくなることがあります。また、腸の内容物が逆流することで、吐き気や嘔吐が生じます。大腸がんによる閉塞の場合、胃と小腸全体に腸管液が溜まっているので胃液や胆汁、小腸液、便のような臭いのするものを吐くこともあります。大腸がんによる腸閉塞の中で一番早く自覚しやすい症状は、この腹部膨満感ではないかと思います。
便秘
大腸がんが進行して腸管内が狭くなると通過できる便が徐々に細くなり、進行すると泥状便や液体便のみだけしか排出されなくなります。排便してもすっきりした感じもなくなり、持続する腹部膨満感からの食欲不振や全身倦怠感を伴っていきます。また、完全に閉塞している場合は排便だけではなく排ガスも全くなくなるため、これらの症状が複合的に現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
[杉本先生のワンポイントアドバイス]
進行した大腸がんができると、徐々に腸管が狭窄します。そのため腸閉塞になる前から、排便状況の変化(細い便しか出ない、便秘、水みたいな便しか出ないなど)が出てきます。個人的感覚では、1年程度の経過で狭窄に伴う症状が徐々に悪化してくる印象です。
いつも便秘気味で薬を使っている人でも、薬が以前より効かなくなっている、一度の排便量が少なくなるなど、普段と違う排便状況になるようなら、大腸がんの可能性が出てくるので、検査を考えるようにしましょう。

大腸がんによる腸閉塞にかかわらず、次に説明する症状が一つでも現れた場合は、入院や緊急手術が必要になるなど、放置すると命に関わる事態を招く可能性があるため、迷わず救急車を呼ぶか、速やかに緊急外来を受診する必要があります。
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症状 |
原因 |
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・突然の激しい腹痛が持続する場合 |
腸管穿孔(ちょうかんせんこう)*3や絞扼性(こうやくせい)イレウスの可能性があり、放置すると重篤な腹膜炎を引き起こすことから命の危険性が出てきます。そのため、緊急手術を含めた処置が必要となる可能性がでてきます。 |
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腹痛と以下の症状がある |
脱水症や体内の電解質バランスの崩れを伴う胃腸障害が疑われます。点滴加療とそれ以上の処置が必要となる可能性があります。 |
また症状が比較的軽度であっても、いつもと違う数日続く便秘や腹部膨満感、吐き気がある場合は、かかりつけ医や消化器内科を受診し、必要に応じて精密検査を受けることをお勧めします。
●腸管穿孔(ちょうかんせんこう)*3 :腸の壁に穴が開き、内容物(便や消化液など)が腹腔内に漏れ出し、重篤な腹膜炎や感染症を引き起こす危険な状態をいいます。
‖ 大腸がんによる腸閉塞の診断
通常、緊急性が高い腸閉塞の場合はまず問診・身体診察、血液検査、腹部超音波検査、腹部X線検査、CT検査を行い、腸閉塞の有無と現在の状態および原因を特定します。その上で大腸がんによる腸閉塞であると疑われる場合は、まず腸閉塞を解除するための処置を行いつつ、最終的には大腸内視鏡検査で確定診断を行います。

まずは問診で腹痛、吐き気、嘔吐、便秘、腹部膨満感などの症状の有無、発症時期や持続時間、排便状況、過去の病歴(がんの既往や開腹手術の有無)など、詳しく聞き取りをし、身体診察でお腹の張りなどを視診し、腸の動きを示す腸蠕動音(ちょうぜんどうおん)を聴診し、お腹のガスの溜まり具合などを打診で確認し、圧痛やしこりの有無を触診でみていきます。血便や直腸まで便が出てきているかの確認をするために肛門に指を入れて確認する直聴診も行う場合があります。

血液検査では、白血球数やCRP(C反応性タンパク質)を測定し「炎症の有無や程度」を確認、嘔吐などによる脱水や電解質異常を調べるために「電解質のバランス」を確認します。また全身状態の評価や、今後の治療方針を検討する上で重要となる「腎機能・肝機能」の状態を調べます。またCK(クレアチンキナーゼ)という筋肉に含まれる成分が血液中に高くなっていると、腸管が壊死している可能性を考える材料の一つになるので、確認することが多いです。

腸閉塞の診断において重要な検査のひとつです。「腹部X線検査」「CT検査」「MRI検査」「注腸造影検査(バリウムやガストログラフィンを用いた造影検査)」があります。
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腹部X線検査 |
お腹に溜まったガスや液体の像を確認し、腸閉塞の有無、部位、閉塞の程度を測定します。 |
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CT検査 |
腸閉塞の診断において最も有用な検査の一つであり、腸閉塞の場所、原因(がんによる狭窄、癒着など)、閉塞の程度、腸管の拡張具合、さらに腸管に造影剤を入れて撮影することで、腸管の壊死や穿孔(せんこう)*4の有無、がんのリンパ節転移や遠隔転移の有無まで調べることが可能です。 |
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MRI検査 |
CT検査と同様に詳細な情報を検査することができますが、特に直腸がんの診断や、骨盤内の他臓器への浸潤評価*5に優れています。また被ばくがないというメリットがあります。 一方で検査中10分以上は動かずに撮影しないといけないので、痛みがひどく、安静にできないときは検査ができません。 |
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注腸造影検査 (バリウム・ガストログラフィン造影検査) |
肛門から造影剤(バリウムやガストログラフィン)と空気を注入し、大腸の形や粘膜の状態をX線で撮影する検査で、閉塞部位やがんによる狭窄の有無、その形態を直接確認することができます。しかし完全閉塞*6に近い状態の場合、バリウムがうまく排泄できず、固まってしまって腸閉塞の原因になることもあるため、腸管狭窄が疑われる場合は、ガストログラフィンという水に溶けやすく、流れやすい造影剤を用います。 |
●穿孔*4 :器官や組織に穴が開く状態を指します。
●浸潤評価*5 :腫瘍や疾患が、基礎組織や周辺組織へどの程度侵入しているかを確認、判定することをいいます。
●完全閉塞*6 :血管や腸管などの通路が完全に塞がれ、流れや通過が全て遮断されている状態をいいます。

画像検査で大腸がんが疑われた場合は大腸内視鏡検査により、がんの存在を直接確認し、組織の一部を採取して病理組織診断を行うことで、がんの確定診断をします。また、狭窄部位の観察や必要に応じて*ステント溜置術などの治療も同時に行うことができます。
理想的には、検査前に薬と大量の水(2L程度飲みます)で大腸を洗浄してきれいにしてからの検査が望ましいですが、すでに大腸がんによる狭窄が疑われているときは、最低限の大腸洗浄にとどめて、がん本体の観察および閉塞解除の処置を行います。検査前に腸管穿孔(ちょうかんせんこう)の可能性が高い場合は行いません。
●ステント溜置術*7 :血管や体内の管が狭くなった部分に小さな筒(ステント)を入れて、内側から広げて通りをよくする治療のことをいいます。
‖ 大腸がんによる腸閉塞の治療法
大腸がんによる腸閉塞の治療法は、腸閉塞の程度、大腸がんの進行度、患者さんの全身状態などによって多岐に渡りますが、ここでは主な治療法として「保存的治療」「外科手術」「内視鏡的治療:ステント留置術」「薬物療法・緩和ケア」について説明していきます。

保存的治療とは、手術を行わずに、腸閉塞を解除し、腸が自然な動きに戻るように回復を促すことを目的とした治療法で、腸管の血流障害がない「単純性イレウス」の場合に選択される治療法です。
保存的治療の基本は「絶食」となります。口からの食事を完全に中止し、最低限の水分のみにして、腸を休ませることで腸管内の内容物の増加を防ぎ、閉塞部位への圧力を軽減します。水分や栄養は点滴により静脈から補給され脱水を防ぎ、全身状態の悪化を食い止めます。
次に鼻から胃、さらに閉塞部位に近い小腸・大腸まで「イレウス管」と呼ばれる細いチューブを挿入し、消化管内に溜まった消化液やガスを吸引し排出する処置を行います。腸管の圧力が下がることで、閉塞が自然に解除されることもあります(主に癒着性イレウスの場合。)大腸がんの場合、イレウス管を肛門から入れる場合もあります。狭窄している大腸のその先にチューブの先端を置ければ、溜まった腸管内容物を外に出すことができます。大腸がんでイレウス管を使う場合は、鼻からでも、肛門からでも管が入っている間の煩わしさは大きく、またイレウス管のみでは腸閉塞の症状は取れても、根本的な解決にはなりません。あくまで症状を軽減して体調の改善を待ち、次の処置を行うまでのつなぎの役割になります。

一般的に腸閉塞が保存的治療で改善しない場合や、腸管の血流障害を伴う「絞扼性(こうやくせい)イレウス」のように緊急性が高いと判断された場合に外科手術が選択されます。
大腸がんによる腸閉塞の場合、腸閉塞の原因となっているがんの病変を含む腸管の一部を切除し、残った腸管を再び繋ぎ合わせ(吻合:ふんごう)便の通り道を再建します。大腸がんが治る可能性のある処置ですが、負担も大きくなるため、腸閉塞の時に行えるかどうかは、状況により判断されます。
がんが広範囲に及んでいる場合や、患者さんの全身状態が良くない場合など、すぐに腸管を吻合(ふんごう)することができない場合(吻合しても、うまくくっつかない可能性が高いと判断した場合)に、便を体外に排出するための開口部をお腹に作る人工肛門(ストーマ)造設術があります。人工肛門が一時的か永続的になるかは状況次第になりますが、まず腸閉塞を改善させるという目的で行われます。

内視鏡的治療の一つである「ステント留置術」は、近年大腸がんによる腸閉塞の治療選択肢として注目されており、外科手術に比べて身体への負担が少なく、特に緊急時や手術が困難な場合に有効な治療法とされています。ステントとは金属製の網目状の筒のことを言い、がんによって狭くなった腸管にこのステントを留置することで腸の通り道を広げ、内容物が通過できるようにします。
この治療の主な目的は「緊急時の腸閉塞の解除」と「進行がんなどで根治手術が困難な場合の緩和的治療」の時に選択されます。
緊急手術を回避し、その後の大腸がんの根治手術に向けた準備期間を確保する目的や緩和的治療では腸の閉塞を解除することで口から食事を摂れるようになり、生活の質(QOL)を維持・向上させることができます。
外科手術での人工肛門造設と同じ効果が得られます。体の外側に人工肛門がつかないので、見た目は健常な方と変わらない状態にすることが可能です。
欠点は、処置するときに大腸内視鏡を使うことに伴う腸管の負担などから、腸閉塞が悪化し腸穿孔を起こす可能性があることや、ステントが狭窄部からずれてしまう逸脱があります。また緩和目的で行うとき、拡げたステントの中にまたがんが大きくなっていく再狭窄があります。平均して1年前後で再狭窄してくることが多いですが、その間に全身状態が悪くなっていき、疼痛緩和(とうつうかんわ)中心に移行していくこともよくあります。
[杉本先生のワンポイントアドバイス:人工肛門とステントの違い]
ステントの利点は先ほど記載した通りですが、緩和的に長期に使用するとなると、再狭窄や逸脱(いつだつ:ステントが競作している部分から外れて移動してしまう)するリスクが高くなります。また生理的な排便が可能ですが、排泄介護が必要になると周りの労力はむしろ増える可能性があります。
一方、人工肛門は、たとえ永続的になったとしても、決まった年数で使用できなくなるということは少なく、何回も手術するということも稀です。また、排泄介護が必要になった時に、人工肛門のほうが労力は少なくなります。緩和で使用する場合は、長期的な視点・介護負担も考えて検討しましょう。

腸閉塞の治療において、薬物療法や緩和ケアも重要な役割を担っており、外科的・内視鏡的治療と併用されることもあれば、進行がんによる腸閉塞で根治が難しい場合の症状緩和として行われることもあります。
薬物療法では、腸閉塞による激しい腹痛、吐き気や嘔吐など、様々な症状を和らげるために薬剤が用いられます。緩和ケアでは、大腸がんによる腸閉塞に苦しむ患者さんの身体的・精神的な苦痛を、薬物療法による症状緩和に加え、栄養管理、精神的なサポート、*疼痛(とうつう)コントロール、呼吸困難の緩和など多角的なアプローチが行われ生活の質(QOL)を可能な限り高く維持することを目指します。
●疼痛(とうつう)*8 :ただ「痛い」「冷たい」といった感覚だけでなく、「嫌だな」「辛いな」という感情も一緒に伴うことをいいます。
‖ 大腸がんによる腸閉塞の予防とリスク軽減
大腸がんによる腸閉塞は、強い腹部膨満感や激しい痛みなどの苦痛をもたらし、生活の質を著しく低下させる可能性がありますが、日々の少しの心がけが、あなたの健康を守る大きな力となり、発症を高めるリスクを避け、早期発見・早期対応に繋がります。ここでは具体的な腸閉塞の予防策とリスク軽減のためのポイントについて詳しく説明していきます。

現在、大腸がんの発症率が下がる食事について明確なデータがあるものは存在しませんが、食生活の見直しで、大腸がんの発症を高めるリスクを避けることにより、結果として腸閉塞の発生率を下げることに繋がります。
・赤肉や加工肉の過剰摂取を控え、魚や鶏肉、大豆製品などの植物性タンパク質をバランスよく摂ること。
・不溶性食物繊維(野菜の茎や根菜類、キノコ類、穀類など)は、便のかさを増やし、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を活発にし、便秘の解消に繋がります。
・水溶性食物繊維(海藻類、果物、こんにゃくなど)は、便をやわらかくし排出しやすくする効果があります。
・飲酒も適量(ビール500ml、日本酒1合、ワイングラス2杯程度)以上だと大腸がんが増えるリスクになります。日本人は欧米人よりもアルコール代謝能が低いため、適量とはいえ、毎日飲むのも人によってはリスクを高めている場合があります
※すでに腸管が狭窄している疑いがある場合や、腸閉塞の既往がある場合は、不溶性食物繊維の過剰摂取が逆に閉塞を悪化させる可能性もあるため、医師や管理栄養士と相談しながら摂取量を調節することがとても重要です。
[杉本先生のワンポイントアドバイス]
前述以外で今報告されているのは、乳製品とカルシウム摂取です。欧米では、大腸がんになるリスクを軽減するデータが報告されました。しかし、日本人で行った結果(がん予防研究班の報告)では、大腸がんが少なかったと報告されていますが、確実にリスクが下がると証明できるほどの差ではありませんでした。とはいえ、将来的には大腸がん予防になる食材といわれる可能性はありますので、意識的に摂取してもよさそうです。

ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの定期的な運動は、全身の血行が促進され、腸の蠕動運動を活発にし、排便をスムーズに促す効果があり腸の健康維持に繋がります。無理なく続けられる有酸素運動を週に数回、合計150分以上行うことが推奨されています。

腸閉塞の症状が現れた時には、すでに大腸がんがかなり進行している場合です。
大事なことは市などで行われる大腸がん検診を定期的に受けることで、大腸がんを早期発見し、腸閉塞の発生を未然に防ぐことです。
自身の将来の健康を守るためにも、積極的に大腸がん健診を受診しましょう。
‖ まとめ
大腸がんに伴う腸閉塞は、日常生活に大きな負担を与えるだけでなく、命に関わる危険性もある緊急性の高い病気の状態です。この記事では、腸閉塞の種類から見逃してはいけない症状、そして緊急時の対応、さらには診断から保存的治療、外科手術、内視鏡的治療、薬物療法といった多様な治療法について解説してきました。
大腸がんによる腸閉塞が起きる前に、その根幹の大腸がんにならないようにする「予防」と大腸がん自体を「早期発見」することが何よりも重要であり、日頃から食生活の改善、適度な運動、そして定期的な大腸がん検診を行うことが鍵となります。大腸がんが見つかった場合でも、腸閉塞が起こるほどの進行前に治療できれば、根治できる可能性が高まります。
残念ながら根治は難しい状態の大腸がんであっても、日ごろの生活をなるべく続けるための工夫はいろいろあります。家族・友人だけではなく、病院スタッフや介護・行政サポートなど周りを頼りつつ、自分らしく過ごせるようにしてみませんか。大腸がん患者の皆様が腸閉塞という病態を理解し、今後の生活や治療に対する見通しを立てる一助となりましたら幸いです。
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【参考文献】
・世界保険機構(WHO)の身体活動に関するガイドライン
(WHO Guidelines
on Physical Activity and Sedentary Behaviour)より
・世界がん研究基金とアメリカがん研究協会の継続的更新プロジェクト
(Continuous Update Project: CUP)の報告書より
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