医師 A.K-Okamoto (MD)
専門分野は消化器内科で主に胆膵をメインとしながら、救命センターでの集中治療や3次救命での従事経験も豊富な救急専門医としても活躍。どこまでも分かり易く真の優しさが伝わる医療記事の執筆も評判 - 女性
重傷者
Seriously wounded person
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病気が辿る経過 - 重傷者

病気が辿る経過 - 重傷者

急性の病気(肺炎などの感染症、脳梗塞など)や事故などのケガにより重症となった人は一般病棟では対応しきれず、薬や血圧、呼吸の管理が細かくできる集中治療室に移動となり、そこで様々な治療を受けることになります。医療従事者も病気やケガなどからの回復を目指して懸命に治療を行います。ただし、残念ながら、全力の治療をおこなったからといってすべての患者さんが助かるとは限りません。このように適切な治療を全力で行ったにもかかわらず、助かる見込みがなくなった状況を「救急・集中治療における終末期」といいます。

元々は元気だった人が突然病気やケガを負い、この集中治療室に入院となるのですが、ここに入院になるということはいつ何が起こってもおかしくない重症であることを意味します。

そのため入院後すぐに血圧等が下がり、治療の限界を迎える場合もあれば、ある一定の期間治療を行ってもなかなかよくならずに徐々に悪くなり最期を迎える方もいたりとその経過は入院となった原因やその時の状態によって様々です。

終末期の特徴 - 重傷者

終末期の特徴 - 重傷者

集中治療室では入院する原因となった病気やケガの治療を行いますが、その原因により血圧や呼吸など、生きていくのに絶対必要なものが悪くなってしまっています。そのため集中治療室での治療は、それら(血圧や呼吸など)を維持するための治療を絶え間なく行っています。これらは普段身体が意識せずに調整しているものです。しかしながら、けがや病気などでその調整機能ができなくなってしまっているため、医療従事者が治療を行うことで手助けします。例えば、呼吸が悪くなれば機械の人工呼吸器をつないで呼吸を助け、血圧が下がれば点滴で身体に水を入れたり、血圧をあげる薬を入れて血圧を維持したりします。ただし、これはあくまで症状などに対応する治療であり、原因(病気やケガ)を直さないと根本的な解決にはなりません。そのため原因の治療も同時に行っていくのですが、やはり医療にも限界はあります。原因となる病気などが悪くなってくれば、薬や機械での調整にも限界があるため、血圧や呼吸が保てなくなってしまいます。この、「薬や機械を限界まで使用しても、呼吸や血圧など生きていくのに必要なものを維持できなくなった状態」が「集中治療室での終末期」に当たります。

集中治療室では医療者が治療を限界まで行うことで何とか生命を維持していたため、おそらく医師からこの話をされた時点でいつ最期を迎えてもおかしくない状態になっていると思います。そのためこの話をされてからは、状態にもよりますが最期を迎えるまで遅くても数日以内、悪ければ話をされている最中でも亡くなってしまう可能性があることが大半となるでしょう。

諸症状 - 重傷者

諸症状 - 重傷者

集中治療室に入院する重症者には、肺炎や心臓病、脳卒中などの病気や事故等によるケガなど、様々な理由で入院している方がいます。そのため、原因によって症状も様々となります。例えば、肺炎が原因であれば熱が出たり、身体がだるい、息が苦しいといった症状が出たりします。ケガであれば、ケガの痛みや出血等があるでしょう。ただ原因がどうであれ、集中治療室に入っている重症者では、呼吸や血圧など生命を維持するのに必要なものが悪くなっている場合が大半です。また、意識も保てないほど身体の状態が悪くなっていることも多いでしょう。そのほか、腎臓など様々な臓器の働きが悪くなることもあります。

痛みや苦しさが出やすい所 - 重傷者

痛みや苦しさが出やすい所 - 重傷者

集中治療室に入院する人は様々な原因により入院するため、原因により痛みや苦しさが出る場所も違ってきます。ただ、共通して生命維持に必要な部分が悪くなっているため、呼吸が悪くなることで息苦しさが出ていたり、血圧が低くなったり、意識がもうろうとしたりします(これらは薬を使用したりすることにより、取り除くようにしていきます。また、薬で眠らせたりもしますので、それにより意識がわからなくなり、苦しさもあいまいになったりします)。

死期が近い兆候 - 重傷者

死期が近い兆候 - 重傷者

集中治療室では重症の患者さんの治療が行われています。その大半はいつ何が起こってもおかしくないような状態の患者さんとなります。少なくとも集中治療室に入院している間は油断すべきではないと言えるでしょう。

また、集中治療室にいる患者さんの中でも、なかなか治療の効果が出にくい、治療を行っても血圧や呼吸が徐々に悪くなってきている状態の場合は死期が近くなってきている可能性があると言えます。できる限りの治療を行っているといっても、薬や機械には限界があります。薬であればこれ以上の用量を使用しても効果がなく副作用だけになるという量がありますし、機械、例えば人工呼吸器であれば、これ以上のサポートを行えば逆に肺を傷つけてしまうという限界があります。なので、そのサポートや薬の量を増やしているにも関わらず、良くならない、もしくは悪くなってきているということは、死期に近づいて行っていると言えるでしょう。

ケアのコツ(要所) - 重傷者

ケアのコツ(要所) - 重傷者

集中治療室での終末期を迎えているときは、すでに医療従事者が治療とともに床ずれができないように、皮膚を清潔に保つ等のできる限りのケアを行っているかと思います。また、治療のために人工呼吸器や透析等の機械を付けているため、ご家族さんが患者さんに直接ケアをしようとしても限界があり、難しいこともあるかと思います。ただ、希望すれば身体を拭くなど、ご家族でもできる範囲でのケアをすることができる場合もありますので、医療従事者と相談してみてください。また、直接のケアが難しい場合は声かけが良い方法です。人の感覚の中でも最後まで残っているのは聴覚と言われています。患者さん本人が何か反応を返すことが難しい状態であっても、声は最期まで聞こえていると言われているのです。なので、最期できるのであれば耳元でご家族が話をしてあげてください。

鎮痛, 鎮静 - 重傷者

鎮痛, 鎮静 - 重傷者

集中治療室で治療されていた患者さんは、その大半が人工呼吸器や人工透析、場合によっては人工の心臓や肺等の機械につながれています。そして、人工呼吸器などでの治療で機械につながれるため、身体を動かすことができなくなること、口から管が出ていることなどの苦痛があります。痛みやしんどさ、息苦しさなどの元々の症状も重く、眠らせる薬を使って眠らせることでそれらの苦痛を分からなくするようにしていることが多いのが現状です。また、痛みを取ったり、機械の違和感を取るために強めの痛み止めを使っていることが多いかと思います。

最期に話をしたいと思った場合、眠る薬を切ったら意識が戻るのではと思うかもしれませんが、終末期では身体の状態もかなり悪く、薬を使わずとも意識がないことが多いかと思います。薬を切ることで意識が戻る可能性も0とは言えませんが、意識が戻った場合はそれに伴い苦痛もわかるようになってしまうため、そのまま最期まで薬を使い続けることになるのが大半です。ただ、薬を使い眠っていても、状態によっては音や声は聞こえていることがありますし、人の感覚でも聴覚は最後まで残っているとも言われています。反応が返ってくることがなくとも、声かけは患者さん本人に届いている可能性がありますので、状況が許すのであれば最期まで近くでお話しをしてあげてください。

重傷者
病気経過終末期 Disease course and terminal stage.