肺がんは肺にできる悪性腫瘍です。最初は無症状ですが、進行すると咳、血痰、胸の痛み・背中の痛み、息切れや息苦しさなどの呼吸苦の症状が出現します。肺の中のどこにできるか(気管支に近いか、胸膜に近いかなど)によっても症状の種類や出やすさは異なります。
また、がんは進行すると他の臓器にも転移します。肺がんで起こりやすいのは、骨転移、脳転移、がん性胸膜炎、がん性心膜炎などです。転移する箇所に応じて非常に多彩な症状を来します。
肺がんは肺にできる悪性腫瘍です。最初は無症状ですが、進行すると咳、血痰、胸の痛み・背中の痛み、息切れや息苦しさなどの呼吸苦の症状が出現します。肺の中のどこにできるか(気管支に近いか、胸膜に近いかなど)によっても症状の種類や出やすさは異なります。
また、がんは進行すると他の臓器にも転移します。肺がんで起こりやすいのは、骨転移、脳転移、がん性胸膜炎、がん性心膜炎などです。転移する箇所に応じて非常に多彩な症状を来します。
肺がんの治療では主に手術や化学療法、放射線療法を行いますが、病気の勢いがそれらの治療の効果を上回ってしまい、余命が残りわずかであると判断された場合、終末期と呼ばれます。終末期には全身状態は急激に悪くなり、最初にがんが発生した臓器(原発巣)や転移によって別の臓器で進行したがん(転移巣)に起因する様々な症状が出現・増悪します。それらの症状を少しでも軽くするために、あらわれた症状に対して処置をする対症療法を行います。例えば鎮痛剤を用いて疼痛コントロールを図ったり、貯まった胸水を抜いて呼吸苦を軽減させたりします。
また一般的に、がんは体内の栄養を消費して増殖するため、低栄養となります。さらには、がんの炎症の作用により食欲も低下し、相乗的に体重は減少していきます。このように病気によっておこる見て取れる変化を悪液質といいます。点滴や経口栄養剤を併用して、がんの進行度に沿った適切な栄養療法を行うことも必要と言われています。
肺がんは始めのうちは無症状ですが、進行すると様々な症状が出現します。がんが大きくなると気管支に広がり、咳や血痰が出ます。また胸膜には痛みの感覚(痛覚)があるため、がんがその部位に広がると痛みが生じ、胸痛や背部痛を生じます。がん性胸膜炎や低栄養などが原因で胸水が貯まると、呼吸苦の原因となります。
さらに全身の症状として、悪液質(※1)による食欲低下や体重減少が起きます。また前述のような転移先の臓器に応じた様々な症状が出現します。例えば骨転移が起きると転移した箇所の疼痛の原因となったり、病的骨折を来したりします。脊椎に転移すれば麻痺などの神経症状を来すこともあります。脳転移は、脳のどの場所に転移するかにより非常に多彩な神経症状が起こり得ます。代表的なものとしては意識障害、麻痺、運動障害、失語、構音障害、視野障害などがあげられます。がん性胸膜炎は肺を包んでいる胸膜にがんが広がったり、転移することにより起き、胸の痛みや胸に水がたまったり、息切れや息苦しさなどの呼吸苦を引き起こします。がん性心膜炎では心嚢水と呼ばれる水が心臓と心臓を取り囲む袋の間に正常以上にたまってしまう心タンポナーデという状態になり、心臓の動きが制限され、血圧が低下し全身に血液を送れなくなると、意識消失や心停止の原因となります。
以上のように肺がんの症状は非常に多岐に渡り、症状の辛さからうつ病や適応障害といった精神症状を来す場合もあります。
(※1) がん増殖による低栄養とがんの炎症作用
肺がんは胸部臓器のため、胸部の諸症状が特徴的です。前述の通り、咳や血痰といった肺胞(肺実質)や気管支の症状、胸膜などにがんが広がることによって起こる胸痛・背部痛などが起こります。また胸水が貯まると肺が水に溺れた状態となり、呼吸苦が出現します。胸水の量が多いと、横になって眠ることも辛くなってしまい、上半身を起こした姿勢で過ごす時間が増えてきます。
更に前述の通り、がんは全身に転移して非常に多彩な症状を来し、全身状態は徐々に悪くなってきます。
前述したような症状が多数出現し、倦怠感も強くなってきて自分で動くことも辛くなってきたら、死期が近い兆候と言えるでしょう。徐々に鎮痛剤の用量が増える一方で、疼痛コントロールが難しくなってきます。また呼吸苦も強くなり、常に酸素投与が必要となります。胸水はドレーンという管を挿入して抜くこともできますが、一度抜いてもまたすぐに貯まってきてしまいます。全身状態が悪くなるにつれて、食事も思うように摂れなくなってきます。体重もどんどん減少していき、活気も低下してきます。
がんの終末期一般に言えることですが、できる限り苦痛を取り除き、残りの余命を患者さんが心穏やかに過ごせるようにしてあげることが必要です。これを終末期(ターミナル)ケアといい、大きくは、身体的ケア、精神的ケア、社会的ケアの3種類に分けられます。
身体的なケアについては、対症療法や全身管理は主に医療者が行いますが、ご家族も患者さんの様子をよく観察していただき、変わったことや気になることがあったらすぐに医療者に相談することが必要です。具体的には鎮痛剤の効き具合や苦しさの程度、新たに出現した症状などをよく観察できると良いでしょう。
精神的ケアはご家族が最も主体的に関わることができるケアです。死に直面する患者さんは大きなストレスを抱えています。患者さんの気持ちに向き合い、話をして寄り添ってあげることができるのもご家族の大きな役目です。患者さんがご家族や好きな人と過ごしたり、好きなものを食べたり、趣味などのやりたいことをして過ごしたり、最期まで自分らしく生きられるようにしてあげることが大切です。
社会的ケアは公的な介護・福祉制度や治療費の支援などのことです。ケアマネージャーやソーシャルワーカーといったスタッフとよく連携して、必要なサービスを受けられるようによく相談するようにしましょう。
また大切なこととして、患者さんだけでなくご家族自身のケアも忘れてはいけません。患者さん同様、ご家族も身体的、精神的に大きなストレスを抱えています。患者さんを支えるために様々な役割を引き受け、疲弊してしまいがちです。何か困ったことがあれば、小さなことでも医療者や周囲の信頼できる人に相談するようにしてください。
がんが進行すると疼痛が強くなっていくため、鎮痛剤の投与を行います。効果をみて段階的に鎮痛剤の量や種類を変えていき、麻薬を使用することもあります。特にモルヒネは呼吸苦の緩和にも効果があると言われており、肺がんではよく使用される麻薬の一つです。
麻薬には持続的な痛みに対して定時的に内服する「ベース」と、突出した痛みに対してその都度内服する「レスキュー」があります。痛みの強さや頻度、レスキューの回数などを総合して、麻薬の用量を決定し疼痛コントロールを行っていくため、患者さんの様子を詳細に医療者と共有するようにしてください。また、麻薬は便秘や吐き気、食欲低下などの副作用もあります。副作用に対してはその都度対症療法や予防的な投薬を行うので、具体的な症状を医療者へ伝えることが大切です。
それでも疼痛や呼吸苦のコントロールが困難となった場合には、鎮静薬を用いて患者さんを眠らせることがあります。しかし鎮静薬を使用するということは、患者さんは最期まで眠り続け、コミュニケーションをとることができなくなることを意味します。最終的にはご本人の意思が尊重されるべきですが、鎮静を行うタイミングについては、ご本人、ご家族、医療者でよく話し合う必要があります。