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08/05 (月) 10:39更新

告知に迷ったら...

If you are confused about the announcement...
医師 N.Makishi (MD)
神経内科専門医。認知症や神経難病にも明るく、多くの診療を行ってきた。本人の意思の尊重の啓発や指導にも精力的に尽力。


今まさに告知に迷われているご家族は、すでに病名や余命について主治医から説明を受けた状態にあることと思います。

さまざまな事情により、ご家族が本人に代わり、病名や余命を説明されたとき、そのことをご本人に伝えるか伝えないか、とても重い決断を迫られているのではないでしょうか。

そんなときは、自分自身にこう質問をしてみてください。

「そのいのちは、誰のいのち?」

多くの関わりの中に、ご本人のいのちはあります。

ご家族、ご友人、ご近所さん、知人... たくさんの人との関わりの中で、ご本人は生きてきました。そして、今もまだ生きています。最後のその時まで「生」は続いていきます。

本人に告知をしたら...

「いのちの終わりが見えることで、本人は悲しみに囚われ打ちひしがれてしまうかもしれない...」

「でも、いのちの終わりが見えたことで、本当に大切なものに向き合うことができて、いくつもの願いを叶えることができるかもしれない...」

ご家族のどちらの想像も正しいがゆえに、結局はどちらを選んでも、その時々で「これでよかったのだろうか...」との後悔が、必ず浮かぶことになろうかと思います。

その後悔をより少なくするためには、「ご本人の想いや言葉にどれだけ寄り添えるか」で決まるといっても過言ではありません。

すべてが叶えられなくても、寄り添い、本人の望むことに思いを馳せることは、共に人生を歩んできた家族だからこそできることなのです。

告知に正解はありません。どうか、ご家族とご本人で色々なことについて話し合って、一緒に悩み、寄り添ってみてください。そうすれば、おのずと結論は出てくるものだと思います。

現実的な話になりますが、現在の医療では基本的にご本人の同意が得られない治療は行いません。

治療や処置を受ける際に、病名および得られるメリットと起こりうるデメリットが、多くの場合、書面も交えて説明されます。

もし、告知をするかしないかの判断に迷っておられるのなら、ご家族自身がご本人とのやり取りの中で得たものと、主治医をはじめとする医療スタッフからの情報をもとに、ご判断をされることをお進めします。

スマートフォンなどの情報端末が発達した今、病名で検索をかければ、多くの情報にアクセスすることができます。しかし、これらの情報は時には有用ですが、時には悪意を含んだものも含まれていることがあります。

どうか判断の参考にする情報は、ご本人との会話や、ご本人が経てきた人生観から得られるもの、ご家族自身のお考え、主治医をはじめとする医療スタッフなどからの情報など、ご本人への想いや配慮が込められているそれらの情報を、なによりも大切にしていただければと思います。

もう一度、お聞きします。

「そのいのちは、誰のいのちですか?」

今ご家族の目の前にいる、大切な人は、何を語りかけてくれますか。

今一度、ご本人の本当の心の声を聴いてください。

大切だからこそ、目の前にいるご本人と、勇気をもって話をしましょう。

医師 N.Makishi (MD) = 文