医師 A.K-Okamoto (MD)
専門分野は消化器内科で主に胆膵をメインとしながら、救命センターでの集中治療や3次救命での従事経験も豊富な救急専門医としても活躍。どこまでも分かり易く真の優しさが伝わる医療記事の執筆も評判 - 女性
心臓病
Heart disease
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病気が辿る経過 - 心臓病

病気が辿る経過 - 心臓病

心臓病は心臓の働きに異常が起こる病気全般を指します。よく聞く心筋梗塞※1や弁膜症※2、不整脈※3などがこれに当たります。心臓病と一言に言っても様々な病気があるので、ゆっくりと心臓の動きが悪くなったり、突然悪くなったりと様々な経過が起こり得ます。例えば心筋梗塞などでは突然心臓に栄養・酸素がいきわたらなくなるので、突然心臓の動きが悪くなる、もしくは急に心臓が止まって死に至ることもあります。このように突然心臓の動きが悪くなることもあれば、一方ではゆっくりと心臓に負担がかかり、徐々に心臓の働きが悪くなる場合もあります。

心臓は身体や肺、脳に血液を送るポンプの機能を持っています。その働きが低下すると身体や肺、脳等に血液を十分に送ることができず、血液が全身のあちこちで渋滞し、なかなか全身を巡りにくくなってしまいます。この状態を心不全といいます。心不全となった場合は、必要な血液の量を身体に送ることができなくなるため、身体のいたるところで血液に乗せて全身に運んでいる栄養や酸素が不足し、栄養不足や酸欠に陥ります。そのため、少しの動作で息切れを起こしたり、身体がだるくなってしまったりします。

1.心筋梗塞:
心臓を栄養する血管が詰まる病気
2.弁膜症:
心臓の逆流防止弁に異常がでる病気
3.弁膜症:
脈がゆっくり打ったり速く打ったりと不規則な状態になる病気

終末期の特徴 - 心臓病

終末期の特徴 - 心臓病

心不全では身体を血液が十分に廻らず、血管の中で血液が渋滞しているような状態となるため、血管の外に水分が染み出てしまいます。そのため、皮膚の下に水分が溜まり、むくみが出てきたり、胸の中(肺の周り)に水分が溜まり、息がしにくくなったりします。症状がひどくなると、肺が水につかってしまい呼吸が十分にできなくなってしまいます。そのため、歩いたり動くのに必要な酸素が十分に身体にいきわたらなくなるため、酸素を吸って少しでも身体に酸素を送る必要が出てきます。それでも酸素が十分にいきわたらない場合は、人工呼吸器で呼吸を助けたりする必要が出てくることもあります。

諸症状 - 心臓病

諸症状 - 心臓病

心臓病では、胸の痛みや胸の前からグーっと押されるような圧迫感や息苦しさなどが認められます。心臓の動きが悪くなり、心不全になった場合は、脳や肺、身体に血液を十分に送り出すことができなくなるため、全身の血管で血液が溜まってしまいます。そのため、全身の血管に溜まった血液から水分が染み出て皮膚の下に溜まりむくみを引き起こしたり、肺の血管にたまった血液から水分が出て、胸に水が溜まってしまったりと様々な症状を引き起こします。心不全では全身に酸素が十分にいきわたらないので、全身の細胞が酸欠の状態になります。まずは少しの運動でも必要な酸素の量が足りなくなるため息苦しさが出てきます。

さらに病状が悪化し、胸に水が溜まって肺が水に浸かってしまうと、徐々に呼吸ができる肺の部分が少なくなり、十分な呼吸ができなくなります。最初は横になって寝ころんでいるときに呼吸が苦しくなってきます(これは肺の形が関係しています。肺の形は背中側に大きくなるため、あおむけなどに寝ころぶと重力で水が移動し背中側に水が溜まります。そのため、肺の後ろ半分が水に浸かってしまうため、座ったり立ったりしたときよりも呼吸できる場所が少なくなってしまいます)。さらに病状が悪化してくると、座らないと息がしにくくなり、最終的には座った状態で何もしなくても息苦しくなってきます。

痛みや苦しさが出やすい所 - 心臓病

痛みや苦しさが出やすい所 - 心臓病

心臓病では急性発症の病気(急に発症する病気)、例えば心筋梗塞などでは胸や背中、みぞおちなどの痛みが出てくることが多いですが、慢性 (徐々に症状が出てくる) の経過で心不全となった場合は、痛みよりも息苦しさなどの苦しさのほうがよくみとめられます。

心臓の機能が悪くなり、胸に水がたまり始めると少しの運動に必要な酸素を十分に送れず、動悸がして胸苦しさが出てきたり、酸欠により呼吸が苦しくなったりします。はじめは少しの運動で息苦しさが出ますが、病気が徐々に悪くなってくると、「寝ころんだ時に息苦しい」、「何もしなくても息苦しい」という形でどんどん息苦しさが酷くなってきます。

その他、全身もむくんでくるため、身体のだるさ等の苦しさも出てきます。

死期が近い兆候 - 心臓病

死期が近い兆候 - 心臓病

心臓病(心不全)では病気の進行に伴い全身のむくみ、息苦しさが出てきます。

初めは足のむくみから始まり(重力で水分が下に溜まるため地面に近いところから始まっていきます)、徐々に全身にむくみが広がっていきます。また、息苦しさについては、はじめは軽い運動、歩行で息切れが出始め、徐々に歩けなくなってきます。さらに病状が悪くなってくると横になってしばらくすると息がしづらくなったり、座っていないと眠れないほどの息苦しさが出てきたりと、徐々に進行していきます。最終的には何もしなくても息苦しさが出てくるため、酸素を吸ったり、人工呼吸機(息が楽になるようにマスクタイプのもの、口からチューブを入れての人工呼吸機など)を使わないと息ができなくなったりしてしまいます。

息苦しさについては人工呼吸器を使わないまま、薬で苦しさを取って様子を見ることもありますが、息苦しさで動けないまで症状が進んでしまうと心不全もかなり進んでいる証拠となるため、死期が徐々に近づいていると言えます。

ケアのコツ(要所) - 心臓病

ケアのコツ(要所) - 心臓病

心臓病(心不全)末期では心臓の血液を送り出す機能が弱っているため、心臓にあまり負担をかけないようにしなければなりません。血圧が高いとその圧に負けないように心臓が血液を送り出さなければならなくなるため、血圧のコントロールを行い、血圧を下げます。そのため、食事で塩分を制限することも必要です。また、血液の量が多くても心臓に負担がかかってしまうため、水分の制限も必要となってきます。このように、塩分や水分の制限について回りの人も協力することが必要となってきます。

また、心不全が進んでくると、少しの動作で息苦しさが出てきてしまうため、徐々に身の回りのことをすることができなくなってきます。患者さん本人の身の回りのこと(着替えや食事、身体を拭くなど)も周りの介助、介護が必要となってきます。

その他、心不全の場合は風邪などで急に心不全が重症になること(慢性心不全急性増悪)があるため、風邪をひかないなどの体調管理を行うことが重要となります。もし体調不良などが出た場合や、それに伴い息苦しさが突然ひどくなった場合は、すぐに病院受診が必要となります。周囲の人も注意して患者さんを見て、何かおかしいと感じた場合は病院受診を躊躇しないことも重要です。

鎮痛, 鎮静 - 心臓病

鎮痛, 鎮静 - 心臓病

心臓病では急性の病気(心筋梗塞など)の場合、胸痛を認めることが多いですが、慢性心不全では痛みよりも息苦しさ、胸苦しさがメインとなってきます。息苦しさが続くということは、痛みが続く以上に苦しいため、薬で心臓の負担を取るなどの治療を行って症状を少しでも良くしていきます。しかしながら、心不全が進行すると、最終的には薬でも症状を抑えきれず、苦しみを取り切ることができなくなってしまいます。また、症状が進んだ場合、人工呼吸器(マスクタイプを含む)での対応を行うこともありますが、こちらも常にマスクで顔を圧迫された状態で強制的に肺に空気を送るため、かなりのストレスや苦しさを感じてしまうことがあります。

この状態となったときには眠ること、眠らせること(鎮静)で患者さん本人が少しでも苦痛を感じないようにと、ご家族をはじめ希望される方もいます。ただし、その場合は眠った状態、もしくはボーっとした状態のままとなってしまい、十分なコミュニケーションが取れなくなることも多々あります。そのため、この治療(鎮静)に関してはかなり慎重に判断する必要があります。

この治療を行うかは患者さん本人の希望が最も重要であり、ご家族の希望のみで安易に行ってはいけません。心不全末期では呼吸もかなり苦しいため、患者さん本人が冷静に判断できなくなっていたり、せん妄という患者さん本人がわけのわからない言動をとる(本人はその間の記憶がありません)などの状態になってしまうことがあります。このような状態になると患者さんの希望を確認することが難しくなってしまいます。そのため、患者さんが冷静に判断できる間にあらかじめ希望を聞いて十分に話し合っておくことが重要なのです。

心臓病
病気経過終末期 Disease course and terminal stage.