子宮頸がんは診断時の進行期によって治療方針が異なります。子宮頸部にのみ腫瘍がある場合には、局所治療が適応となります。手術療法(子宮全摘出術)もしくは放射線療法/放射線同時化学療法が行われます。腫瘍が子宮頸部を超えて他の臓器にも広がっている場合には、抗がん剤治療を行うことが多いです。このため診断時のステージによって子宮が残っているかどうか、子宮の腫瘍に対する局所治療が行われているかどうかが異なり、これらの状況によって終末期に起こる症状は異なります。
子宮全摘手術を受けた方は、手術の後遺症によって下半身のリンパ浮腫、排尿・排便障害を来すことがよくあります。お腹の中の傷に癒着がおこり腸閉塞を起こす方もいます。
放射線治療を受けたことがある方は、晩期障害がおこることがあります。子宮の後方にある直腸に放射線が当たってしまうことによって、直腸炎による下血や、直腸と腟の間に管状の穴(瘻孔:ろうこう)ができ腟から便が出てしまうことがあります。子宮の前方には膀胱があり、膀胱への照射によって膀胱炎、膀胱と腟の間に瘻孔ができて腟から尿が出ることがあります。腸管への照射によって起こる腸炎による下痢、便秘、腸閉塞や骨盤骨への照射によって骨折を来すこともあります。
子宮頸がんは、子宮や卵巣以外の臓器へ転移がある場合には、完治を見込むことが難しい状態となります。子宮頸がんは、さまざまなタイプの腫瘍があり、病気の進行するスピードはひとそれぞれ違います。転移性子宮頸がんにおいては1年~3年くらいで亡くなってしまう方が多くおられます。
転移性子宮頸がんに対する治療では放射線治療もしくは抗がん剤治療を行うことが多いです。今まで放射線を当てたことがない部位の再発で、腫瘍の範囲が限られている場合には放射線治療を行います。子宮が残っている方において腫瘍からの出血で困っている場合や手術後の腟断端(腟の切り口を縫合している部位)周囲にがんが再発し出血している場合には、止血目的に放射線治療を検討します。
がんが全身に広がっている場合には抗がん剤治療を選ぶことが多いです。年齢が若い方や、高齢ではあるものの体力がある方、重大な内科の合併症がない方は抗がん剤治療を受けることができます。しかし現状では、子宮頸がんに対して劇的な効果をもつ抗がん剤は存在しません。そのため抗がん剤治療を行う目的は病気の進行を抑え、少しでも長く生きることを目指すものであり、完全に治すことは難しいです。
放射線治療や抗がん剤治療中に、吐き気や倦怠感が生じることが高頻度でみられます。また以前受けた治療によって合併症を抱えている方もいらっしゃいます。これらの治療による副作用が強く、身体に相当な負担がかかる場合には無理をして続ける必要はありません。本人の体力やご希望、副作用に合わせて、主治医とよく相談したうえで、無理のない治療法を選びましょう。
食事がうまくとれない、痛い部位がある、お腹が張って苦しい、出血が止まらず困るなどの症状が起こります。このような症状に対しては、対処法がありつらさを和らげることが可能です。このように、病気を治すことを目的とせず、出現する様々な苦痛の軽減を目的として行う治療を緩和ケアといいます。放射線や抗がん剤治療と同時に早期から緩和ケアを並行して行うことが非常に大切です。それぞれの症状については気兼ねなく主治医に相談するようにしましょう。