最期を過ごす場所の選択肢
「 暮らす場所 」
~自宅、施設、病院、それぞれの特徴~
誰もが望む穏やかなゴールの達成には、いくつかの大切なポイントがあります。そのなかでも、とても大切な要素のひとつとして「暮らしの環境」が挙げられます。
最期のその時まで「暮らす場所」は、ご本人やご家族にとっても、心身ともに、さまざまな影響をもたらす大きな要素です。
厚生労働省が発表した「平成26年度版厚生労働省白書~健康・予防元年~」では、最後を迎えたい場所として、約49%の方が「自宅」を希望されているのに対し、実態は約80%の方が病院で亡くなられている状況にあります。
しかし、医療機関での看取りが悪いとは一概には言えないのも事実です。また、自宅での看取りが理想とも限りません。
ご本人の本当に望むものや、避けたいもの、またそのご家族の希望も、現代の多様な価値観を反映し、ご意向についてもまた多様なものとなっています。
暮らす場所を選択する際に大切なことは、それぞれの場所によって異なる特徴をよく理解したうえで、希望や意向に沿った場所を選定することが重要です。
また、一度決めた選択が、その時々の置かれた状況や心情によっても、求めるものが変化しますので、状況に合わせて柔軟に変更を検討することも大切です。
病院
病院であれば医療が整っていますし、モニター管理をすることで呼吸や脈拍の停止がすぐにわかります。もちろん医師や看護師をはじめとする医療者に24時間体制で見てもらうことができます。
一方、病院は治療する場所であり、何も医療処置を必要としない場合には居続けることは難しいのも現実です。一般病棟とは違い、心身の苦痛の緩和を専門とする緩和ケア病棟などは看取りに向いている医療機関と言えるでしょう。
介護施設
日本にはさまざまな介護施設が存在します。最近では看取りを積極的に行う特別養護老人ホームや有料老人ホームも増えてきました。仕事があったりパートナーがご高齢の場合には、体にも心にも大きな負担になってしまいます。
その結果、自宅での介護が難しくなる場合がありますので、介護スタッフが常駐する施設で見てもらいながら過ごすことで、会いたいときに会いに行けるというメリットがあります。また自宅で1人にすることもないので安心です。
その分、公的な施設入居は満床のことも多く、民間施設の場合にはそれなりに費用がかかってくるのが実態です。また、看護師が常駐している施設でも、必要最低限の処置は叶いますが、しっかりとした医療処置を受けるには限界があります。
自宅
半数近くの方が望まれる自宅は、住み慣れた環境がもたらす「安心感」が何よりも大きな要素です。共に暮らしてきた家具や、たくさんの思い出、家族の会話や、聞きなれた生活音、そんなごくありふれた日常の中に身を置くことは、心身の疲労をやわらげ、穏やかな気持ちで暮らすことのできる方が多いのも事実かと思います。
他方、ご家族の負担はまだまだ大きいのが実態で、医療者がいつでもすぐ傍にいない環境であることも事実です。また、介護保険制度を利用したり訪問診療を利用したりと様々な支援者との調整や、環境の整備も必要となってきます。
ただ、最近では、医療と介護の連携も進み、特に都市部では訪問医師やケアマネージャーが中心となり、自宅に居ながらにして、質の高い医療や介護を受けることが可能になってきています。
ご自宅を望まれた時には、ご家族の意思はもちろんのこと、信頼できる医療や介護の地域資源が自宅の周りに存在するのかどうかも、良く調べ、検討する必要があります。
最後に
一度決めた選択でも、後から変更することも何ら問題はありません。
今現在のご本人とご家族の意向と、周辺の病院や施設、自宅周辺の地域資源ともよく照らし合わせ、それぞれの長所と短所を考えながら、この先の「暮らす場所」を選定していただければと思います。
ご家族が相談できる場所
・病院の医療相談室(医療ソーシャルワーカー)
・役所の高齢支援課や福祉介護課
・地域包括支援センター
・居宅介護支援事業所