医師 A.K-Okamoto (MD)
専門分野は消化器内科で主に胆膵をメインとしながら、救命センターでの集中治療や3次救命での従事経験も豊富な救急専門医としても活躍。どこまでも分かり易く真の優しさが伝わる医療記事の執筆も評判 - 女性
食道がん
Esophageal cancer
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病気が辿る経過 - 食道がん

病気が辿る経過 - 食道がん

食道がんは食道を裏打ちしている粘膜からできるガンです。初めは症状が現れにくいのですが、ガンが大きくなっていくと徐々に食道をふさいでいくため、食物が通らなくなってきます。そのため、物を飲み込んだ時の違和感や詰まった感じなどの症状が出現、進行するとガンで食道をふさいできてしまうため、細かい食べ物、液体と徐々に食物が通らなくなり、最終的には何も通らなくなってしまいます。その場合は内視鏡で金属製の筒を入れて食物の通り道を作る処置なども必要になってきます。

また、食道の大部分が胸部の後ろ側、肺や血管の近くにあるため、ガンが回りの臓器まで及ぶと胸痛や咳、かすれ声など様々な症状を起こします。

ガンの場合、できもの自体がもろくなっているため、普通の粘膜に比べると出血しやすい状態となっています。そのため、ガンのできものから出血し、吐血などが起こる可能性もあります。吐血が起こった場合は状況に応じて内視鏡での止血処置等を行いますが、ガンはできもの自体がもろいため、血を止めようとしても止血処置の影響で処置を行った周辺の組織が崩れてどんどん出血したり、一旦止まっても出血を繰り返すなどが起こることがあります。

終末期の特徴 - 食道がん

終末期の特徴 - 食道がん

初期の食道がんは胸、のどの違和感(特に物を飲み込んだ時)等を認めることはありますが、自覚症状を認めないことも多く気づかれにくい病気です。この段階で内視鏡等でガンを見つけていれば、内視鏡治療や抗がん剤と放射線、手術等での治療を行えますが、ガンが進行し体力がなく手術ができない場合などは、抗がん剤と放射線治療の併用、もしくは単独での治療を行います。ただし、これらの治療でもガンの進行を抑えられない場合、体調が悪く治療が続けられない場合などは、ガンの治療ではなく、ガンによってもたらされたそれぞれの症状に対する治療を行います。

食道がんが進行して末期になると、身体もやせ、胸痛や身体のだるさ等を認めてきます。また、食事が通らなくなることで食べた食物を吐いてしまったり、食道を食べ物が通らないために食事をとれなくなったりします。最終的にはガンにより食道がつまり水も飲めなくなるため、内視鏡で金属の筒を入れて通り道を作ったりしますが、さらにガンが大きくなってくると、筒自体もガンでおおわれて詰まったりするので、追加の処置が必要になることもあります。

諸症状 - 食道がん

諸症状 - 食道がん

食道がんが進行してくると、食道がつまりのどに引っ掛かったような感じがします。さらにガンが大きくなると、食事も大きなものから順に通らなくなり、最終的には水などの液体も通らなくなってしまいます。食べたものは食道に溜まってしまうので、飲み込んだ時そのままの状態で吐いてしまったり、それを繰り返すと食べたものが誤って肺へ続く空気の通り道に入ってしまい、肺炎を引き起こすこともあります。ガン自体に栄養が取られるため体重減少を起こしますが、栄養もなかなか取れないため、体重減少に拍車をかけてしまいます。

また、食道がんは胸部の後ろに位置する臓器であり、周囲には気管や肺、血管などがあります。その周囲の組織にガンが及んでくると、痛みや咳、かすれ声など様々な症状を引き起こします。ガンそのものも出血しやすく、ガンからの出血により吐血を起こすこともあります。

そのほか、食道という臓器は胃や腸など他の消化管に比べて粘膜の層が少ないため転移しやすく、肺や骨など他の臓器に転移してしまうとその部分の痛みなど、様々な症状が出てきてしまいます。

痛みや苦しさが出やすい所 - 食道がん

痛みや苦しさが出やすい所 - 食道がん

食道は胸の後ろ側に位置する臓器のため、ガン自体の痛みは胸、背中に出やすくなります。

また、食道がんは他の臓器に転移することも多く、肺や骨等に転移した場合はその部位が痛くなることもあります。

食道がんでは食道自体がガンによりふさがってしまうため、物理的に食べ物が胃に流れず、食道に溜まって吐いてしまう等の苦しさが出てきてしまうことがあります。これらについては、内視鏡での処置を行い、食べ物や飲み物の通り道を作って対応していきます。しかしながら内視鏡で作った通り道もまた成長したガンにふさがれることがあり、症状がひどくなる度に内視鏡での処置を行ったり、状態によってはそれらの処置すらできないため水も飲めずに点滴等での対応のみとなってしまうこともあります。

死期が近い兆候 - 食道がん

死期が近い兆候 - 食道がん

ガンが進行すると、疲れやすさを認め、身体のだるさが徐々にひどくなります。ガン自体に栄養が取られるにもかかわらず、食道がんではなかなか食道がふさがれたり、ガンの症状として食欲がなくなってきたりと、必要な量の食事があまりとれなくなり体がどんどんやせてきます。また、食道は周囲に肺や気管(空気の通り道)等の臓器があるため、胸の圧迫感や痛みが出てきたり、咳やのどの違和感等が出てきます。食道がんが大きくなることにより、ガン自体から出血もしやすくなり、吐血を認めることもあります。

その他、食道がんでは胃腸など他の消化管に比べて層が1つ少なく(消化管では粘膜の層が何重にも重なって壁ができています)、他の臓器などに転移しやすいため、ガンの進行に伴い肺や骨など他の臓器に転移し咳や骨の痛み等を認めることがあります。

これらはガンの進行により出てくる症状で、強くなってくる傾向にあります。また、さらにガンが進行してくると体力が低下し疲れやすさやだるさを認め、動けなくなってきます。最終的には意識も朦朧とし、コミュニケーションもとりにくくなってきます。

ケアのコツ(要所) - 食道がん

ケアのコツ(要所) - 食道がん

食道がん末期ではガンにより食道が詰まってしまい、徐々に食物が通らなくなってきます。そのため、飲み込みにくさ等の自覚症状が現れることが多く、食べ物の形等を調整することが必要となってきます。はじめは固いもの、固形物が食べにくくなるため、徐々に刻んで食べやすくしたもの、柔らかいもの、ペースト状のものと変更していき、それでも食べにくい場合は水分など細くなった場所でも通りやすいものを、という形で調整していきます。また、食事がとりにくい、固形物を食べると吐いてしまうなどの症状がある場合は食道が詰まって食物がガンの場所より奥に流れなくなっている可能性がありますので、主治医に相談しましょう。

また、食道がん末期では体がやせてきたり、食事がとれずに栄養も足りなくなったりするため、徐々に動けなくなってくることが多々あります。そのため、身体を動かす介助が必要になる、起き上がれなくなれば体の向きを変える等のケアが必要になってきます。家族のみで介護を行うには負担が大きく、介護サービス等を利用し家族の負担を減らすことも必要となってきます。患者さんに最後まで寄り添えるように、環境を整えておくことは重要です。

鎮痛, 鎮静 - 食道がん

鎮痛, 鎮静 - 食道がん

食道がんではガン自体の痛みにより、胸痛や胸の圧迫感等を認めることがあります。その他、転移を認めた場合はその部分の痛みも認めます。

ガンの痛みは進行すれば必ず出てくるものであり、我慢する必要はないものです。痛み止めの副作用を理由で痛みを我慢する人もたまにいますが、それよりも痛みを取って生活に支障がないようにすることが重要です。

痛みに対しては、はじめは通常の痛み止め、それでも痛みが抑えきれない場合は強めのもの、痛み止め麻薬というように痛み止めの種類を変更したり、増やしながら対応していきます。一方で、痛み止め自体にもさまざまな副作用(吐き気、下痢、便秘、だるさなど)があります。痛み止めを使う理由は、生活に支障が出るような痛みを取ることなので、効果と副作用を天秤にかけながら薬を調整していきます。副作用により生活に支障が出る、体調が悪くなってきている、頓服の回数が増えてきたなどがあれば主治医と相談し痛み止めを調整してもらいましょう。

初めは痛み止めで対応していきますが、それでも痛みを抑えきれずに苦しみが続いてしまうことがあります。その場合は薬で眠らせることで苦痛をわからなくすることを希望される方もいます。ただし、この場合はコミュニケーションが取れなくなりますので、慎重な判断が求められます。これは基本的には患者さん本人の希望により決定するものですので、見ていられないから、かわいそうだからとご家族の希望のみで安易に決めてはなりません。ガンでは最終的に意識がもうろうとしてコミュニケーションがとりにくくなる場合もあるため、このような場合にどうしたいか、本人とあらかじめ話し合っておくことが重要です。

食道がん
病気経過終末期 Disease course and terminal stage.