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08/05 (月) 11:29更新

延命治療を行わず穏やかな最期を迎える為の要点

Essentials for a peaceful end of life without life-prolonging treatment.
医師 N.Makishi (MD)
神経内科専門医。認知症や神経難病にも明るく、多くの診療を行ってきた。本人の意思の尊重の啓発や指導にも精力的に尽力。

延命治療を行わないとご本人が決めたとき、ご家族は悲しみ、迷い、切なさなど様々な思いを抱いたことでしょう。その思いを、ご本人が望む「穏やかな最期」につなげるために、これからの道のりを少し見てみましょう。

延命治療を行わなくても、医療にはつながり続けます。ただし、今まで通っていた病院ではなく、クリニックや訪問診療に切り替わることもあります。これは見捨てられたのではなく、治療の内容が変わってくるのです。

今までは「今より良くなるため」「今から劇的に悪くならないように」積極的な治療がメインに行われてきました。ただ、最期の時が見えてきたときは、「苦痛を最小限にする」緩和的な治療がメインになっていきます。

それと前後して、体の機能も低下していきます。

トイレでの排泄が間に合わなくなり、歩くことができなくなり、食事が取れなくなり、水を飲めなくなる......昨日できていたことが、今日は難しくなる。そのようなことが積み重なっていきます。少しずつ積み重なっていくそれらが指し示す「最期」を受け入れることはとても辛いことだと思います。だからこそ、今そこにある現実は、ご家族だけで抱えてはいけないのです。

訪問診療や訪問看護を可能な限り利用して、年齢や条件が該当するのであれば介護保険を使って、沢山の専門職に関わってもらいましょう。公的サービスに繋がるために、訪問診療の医師や地域包括支援センターなどに話をして、使えるサービスを調べてもらいましょう。

少しずつ「できなくなること」が増えていって、やがて最期の時となります。

次第に食べ物を受け付けられなくなり、そして喉を通らなくなってきます。そんな時は無理に食べさせなくて良いのです。口に含んで味だけ楽しんでも良いのです。ご本人が満足するのなら匂いを嗅ぐだけでも良いのです。

次第に意識が薄れ始め、水分も飲めなくなります。このときには夢現の状態であり、苦痛はあまり感じられないと言われています。口の中が乾くようでしたら湿らせるなどのケアを行いながら、穏やかな最期の時を迎えていきます。

最期の時に向かう中でも、日常は続いています。

あなたとあなたの大切な人の幸せは、これまでどおり日常の中にあると思います。

増えていく「できなくなったこと」を数えるのではなく、これまで積み上げてきた沢山の

思い出を、日常の中で増やしていってください。

医療や介護はそんなご本人やご家族をいつも応援し支えるためにあるのです。

医師 N.Makishi (MD) = 文