医師 A.K-Okamoto (MD)
専門分野は消化器内科で主に胆膵をメインとしながら、救命センターでの集中治療や3次救命での従事経験も豊富な救急専門医としても活躍。どこまでも分かり易く真の優しさが伝わる医療記事の執筆も評判 - 女性
肺炎
Pneumonia
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病気が辿る経過 - 肺炎

病気が辿る経過 - 肺炎

肺炎とはいろいろな原因で肺に炎症を起こす病気です。肺炎の原因は多岐にわたり、細菌やウイルスの感染による肺炎以外にも薬の副作用や自分の免疫で肺を傷つけてしまうような特殊な肺炎もあります。しかし、大多数は細菌やウイルス感染による肺炎です。

細菌・ウイルスによる肺炎になると、発熱、息苦しさ等の症状が出てきます。肺が炎症によりむくみ、肺で外から取り込んだ酸素と二酸化炭素の交換がしにくくなるため、体内にある酸素の量が減ってしまいます。そのため、少し動くと息切れ、呼吸困難を起こしてしまいます。病状が悪くなってくると、身体の中の酸素量を保つために酸素を吸う必要や、さらにひどい場合は人工呼吸器での呼吸サポートを行う必要が出てきます。

感染による肺炎であれば抗生剤を使用して細菌を殺し治療を行っていきます。しかしながら細菌も抗生剤を使われることにより、徐々に抗生剤が効かない細菌だけが残ってしまうため、なかなか治療もしづらくなってきます。そのため、肺炎が長期化してしまった場合や、繰り返し肺炎を起こしてしまう場合には、徐々に肺炎が治療しにくくなります。また、高齢者や免疫力が低くなっている人、基礎疾患がある人等は肺炎を繰り返すこともあり、それによって体力も徐々に失われ、肺炎が重症化してしまうことがあります。

終末期の特徴 - 肺炎

終末期の特徴 - 肺炎

肺炎は特殊な肺炎(上記の間質性肺炎など)以外では細菌感染やウイルス感染によるものが多く、基本的には抗生剤などの薬を使用して治療を行います。感染による肺炎は重症のものを除き、基本的には急性期の病気であり、抗生剤を使用して治療を行うことで一旦回復することも多い病気です。ただし、高齢になると肺炎を繰り返すことも多くなってきます。高齢になってくると徐々に飲み込む力が衰え(嚥下機能障害)、飲み込むときに食べ物や唾液が誤って肺に向かう空気の通り道(気管)に入り込んでしまいます。その時に細菌も肺に入り込んで感染を起こし、肺炎となってしまいます(これを誤嚥性肺炎といいます)。高齢になると飲み込む力自体が衰えるので、この肺炎を繰り返し、徐々に体力も失われて弱ってしまいます。一回の肺炎自体が重症となり死に至ることもありますが、すぐに死に至るというよりは肺炎が治ったり、再発したりと繰り返していき、徐々に体力が落ち、死に向かっていくことも多くあります。

諸症状 - 肺炎

諸症状 - 肺炎

肺炎の症状としては、発熱や痰、咳、胸痛等がはじめの症状として挙げられます。痰が多くなれば空気の通り道を痰でふさぐこともあり、息がし辛くなります。また、肺の炎症により、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできず、身体に十分な酸素が取り込めないため息苦しさ、呼吸困難感も出てきます。さらには、酸素が十分に脳にいきわたらないと脳の働きも悪くなってしまいます。そのため、それらが続くことで意識がもうろうとしてしまうこともあります。そのほか、息苦しさ、呼吸困難は最も苦しいものであり、息苦しさが続くことで患者さん本人が認知症のように、自分がどういう状況か、どこにいるのかなどがわからずに叫んだり、暴れてしまったりというような状態(せん妄)になることもあります。

痛みや苦しさが出やすい所 - 肺炎

痛みや苦しさが出やすい所 - 肺炎

肺炎では熱の他、息苦しさを多く認めます。息苦しさというのは特に死を連想させ、死に対する恐怖や不安など、精神的な苦しみも伴います。そのため、人生において最も苦しい症状の一つとも言われています。また、この苦しみによるストレスもかなり高く、それにより患者さん自身が自分自身の状況などがわからない状態になってしまい、叫んだり暴れたりする状態(せん妄状態)になったり、心臓に負担をかけてしまい他の病気を発症したりすることもあります。

さらに、肺炎により胸の痛みや、胸が押されるような圧迫感が出てくることもあります。

死期が近い兆候 - 肺炎

死期が近い兆候 - 肺炎

肺炎、特に高齢者の肺炎では一回の肺炎が重症化して死に至ることもありますが、一回の肺炎では死までには至らずに、繰り返し肺炎を発症することで徐々に体力が弱り、ある時に肺炎が重症化し死に至る、ということも多々あります。また、細菌による肺炎以外の特殊な肺炎でも、良くなったり悪くなったりということを繰り返すため、どの時点が終末期になるのかわかりにくいこともあります。

しかしながら、抗生剤や薬もなかなか効きにくい状態になる、呼吸がかなり不安定になり人工呼吸器をつけなければ呼吸ができなくなる、血圧も不安定になる、などの状態となれば重症化し死に近づいている、死に至る可能性があると考えられます。

ケアのコツ(要所) - 肺炎

ケアのコツ(要所) - 肺炎

高齢者の肺炎では、肺炎を繰り返すことで徐々に体力が弱り、肺炎が重症化し死に至ることが多々あります。そのため、肺炎が一度治ったのであればその予防も大切となります。

高齢者の肺炎では飲み込む力が弱ることで肺に細菌が入り込んで起こる肺炎も多いため、食事や飲み物を飲み込みやすい形状にするなどのサポートや、痰が多ければ吸ってあげる、なども重要となります。

また、細菌等に感染しての肺炎であれば、発症からどの程度の時間で治療が開始できたかということはかなり重要となります。そのため、日ごろから患者さんの様子をしっかりと見ておき、何か変わったこと、おかしなことがあればすぐに病院を受診することはかなり重要となります。

その他、肺炎を繰り返す恒例の患者さんでは飲み込む力が弱っていることが多いため、点滴での治療や食べ物が食べにくい状態となるためお腹の皮膚から直接胃に栄養剤を流し込む通路としてチューブを通す(胃瘻)ことを提案されることもあるかと思います。ただし、これは口から食事をとることがなくなるため、食事を楽しむということはなくなってしまいますし、身体にわざわざ傷をつけて人工物を埋め込み、強制的に栄養を入れるということになります。そのため高齢の方であれば、どのあたりまでの治療、ケアを希望するのか、本人、家族と十二分に話し合っておくことは重要です。

鎮痛, 鎮静 - 肺炎

鎮痛, 鎮静 - 肺炎

肺炎の終末期では胸の痛みを認めます。しかしながらそれ以上に息がしづらく、ひどい息苦しさを感じます。息が十分にできない状態というのは人生でも最も苦しい症状の一つであり、薬で症状を和らげたり、酸素を吸ったり人工呼吸器を使用して呼吸をサポートしたりします。ただし、人工呼吸器を使用するとなると、病状が良くならなければ死ぬまで外すことができません。マスクタイプの人工呼吸器もありますが、症状が悪くなればマスクではうまく十分なサポートができず、口から管を入れてのサポートとなることも多々あります。実際に口から管が出た状態のまま、治療を受け続けることになりますが、口が閉じられない、無理やり管を入れられることで苦しそうと思ったとしても取り外すことができないのです。また、人工呼吸器をつけた場合は管を取り付けること自体が苦しいと感じることも多いため、ある程度の量の痛み止めや眠り薬(鎮静薬)を使用することになります。

その他、最終的には苦しみを取り切ることができず、薬で眠らせることで苦しみをわからないようにしてほしいと希望される方もいます。ただし、眠らせてしまった場合は起こすと同じ苦しみが待っているため、眠らせたままになってしまい、コミュニケーションをとることは困難となるため、慎重な判断が必要となります。この決断は患者さん本人の希望が最も重要であるため、かわいそう、見ていられないとご家族の希望のみで安易に行ってはなりません。

しかしながら、呼吸が苦しくなりかなりストレスが高くなればせん妄状態(自分の状況などがわからずに叫ぶ、暴れるなどの症状が出る状態)などが出てきたり、脳に酸素が不足すれば意識がもうろうとしてしまいます。そのため、あらかじめ患者さんがどのような希望を持っているか(鎮静、人工呼吸器を希望するのかなど)、患者さん本人の意識がはっきりしている間に十分に話し合っておくことが重要です。

肺炎
病気経過終末期 Disease course and terminal stage.