ALSの症状の初期段階では、疲れやすさや力の入りにくさ、こわばりが感じられることがあります。症状は必ずしも常にあるわけではなく、症状がない時もあるのですが、少しずつ疲れやすさや力の入りにくさ、こわばりを感じることが多くなります。筋肉の一部分がぴくぴく動くこともあります。
全身の筋肉が萎縮するので、体重が大幅に減ることがあります。
この時点で病院を受診した場合、がんが疑われてその検査をしてもがんが見つからないため、原因不明とされることが多いです。
病院でがんや内分泌疾患などの検査をしても原因の特定に至らない場合に、脳神経内科を紹介されてそこでの診察や検査でALSと診断されることが多いです。最初に症状を自覚してから1年から2年程度という方が多いです。
診断がついて飲み薬や点滴での治療が始まる方が多いですが、ALSの薬を用いた治療は直すための治療ではなく、進行を遅らせるための治療です。
次第に症状は進行し、全身の筋肉はさらに萎縮していき、歩いたりすることが困難となります。また筋肉が萎縮する過程で、関節を動かせる範囲が狭くなったり、筋肉のこわばりによって痛みが生じたりすることがあります。
手や足の筋肉だけでなく、喉の筋肉や胸やお腹の筋肉も同様に委縮します。
喉の筋肉が衰えるために、物を飲み込む機能が次第に障害されていきます(嚥下障害)。それに加えて咳をする反射も次第に表れなくなります。
また胸やお腹の筋肉が衰えることで声を出したり呼吸したりすること(呼吸不全)が次第に難しくなります。
嚥下障害があれば生命の維持に必要な量の食事を上手に取ることができなくなるだけでなく、本来胃に入るはずの食物や飲料、唾液が気管に入り、それでもむせて咳をすることができないため肺に入って、そこで炎症を起こす肺炎(誤嚥性肺炎)をかなりの確率で起こします。
呼吸を担っている筋肉が衰えれば、呼吸することができなくなります。
そのためALSの患者さんには、診断の段階で人工呼吸器の装着と胃ろうを作るかの決断を迫られることになります。
ALSはよくすることができない疾患の一つです。
人工呼吸器を装着しなければ、徐々に息をすることができなくなり最期を迎えます。この呼吸ができなくなる過程で、意識は次第に薄れていきます。
胃ろうを作らなければ栄養を取ることができなくなり最期を迎えます。
この場合、一般的に発症から3年から5年で最期の時となります。
人工呼吸器と胃ろうを作る場合、呼吸と栄養が提供されるため、最期の時を年単位で遅らせることができます。誤嚥性肺炎は死因となりうるため、気管に続く喉を手術で閉鎖することもあります(喉頭閉鎖術)。
尚、胃ろうだけを作るということは患者さんとそのご家族の希望で可能ですが、人工呼吸器だけということはなかなか難しいです。
人工呼吸器をつけるときも、最初は苦しくなる時間だけと一日の中でも着けたり外したりの生活から始まります。しかし、病気の進行に伴い、次第に人工呼吸器をつける時間が長くなっていき、最終的には終日人工呼吸器を着けることとなります。
人工呼吸器にもポータブルタイプがあるので、適切に管理すれば家族とちょっとしたお出かけなども可能となります。しかし、人工呼吸器を使用すると基本的に声は出せなくなります。気管に続く喉をふさぐ手術をした場合も同様に声を出せなくなります。
そして、ALSにおいては一度終日人工呼吸器を使うようになった場合、基本的にその人工呼吸器を外したり止めたりすることはできません。法律が医療に追い付いていない例として問題になるシーンですが、医療も法律の範囲内でしか行えないため、外せないと考えておいてください。
声の出せくなったALSの患者さんはどのようにしてコミュニケーションをとるのかというと、文字盤や視線を追うタイプのコンピューターを利用します。しかし、それさえも全身の筋力低下とともに困難になっていきます。
コミュニケーションを取ることができなくなっても、ALSの患者さんの意識ははっきりしています。音も聞こえます。目で物を見ることもできます。痛みも温かさも感じます。ただ動くことも、話すこともできなくなりますので、その状態で寿命を待つこととなります。
ALSと診断され場合、最後の時はかなり迫っているので、短い時間での決断が迫られることが多いかと思います。そのためにも、どんな疑問も残さないように主治医の先生とよく話し合ってください。