医師 N.Makishi (MD)
神経内科専門医。認知症や神経難病にも明るく、多くの診療を行ってきた。本人の意思の尊重の啓発や指導にも精力的に尽力。 - 女性
パーキンソン病
Parkinson's disease
もくじ一覧

諸症状 - パーキンソン病

諸症状 - パーキンソン病

パーキンソン病およびパーキンソン病関連疾患は以下の様々な症状を組み合わせながら進行していく病気です。

パーキンソン病は日本に15万人ほどの患者さんがいらっしゃいますが、パーキンソン病関連疾患には多系統萎縮症、進行性格上性麻痺、大脳皮質基底核変性症があります。いずれも日本に患者数が10000人強しかいない珍しい疾患です。

これらの病気に共通する症状として、運動症状と非運動症状があります。

運動症状・指や首、口の震え(静止時振戦(※1)):
自分の意思とは関係なく、指が震えます。ある程度までなら自分の意思で止めることも可能です。指に震えが生じた場合、その症状は片方からみられて、数カ月から年の単位で、もう片方にも見られるようになることが多いです。
手足の関節や首の動かしにくさ、こわばり(筋強剛):
手足が動かしにくくなり、次に述べる無動とあいまって歩きにくさとして自覚される方が多いです。首に症状が出た場合、頭が垂れてしまうことがあります。筋肉のこわばりに対して痛みが生じることがあります。
手動きが遅い、動きにくい(無動):
表情が乏しくなったり、寝返りが打てなくなったり、声が小さくなったり、文字が書いているうちにどんどん小さくなっていく症状です。
転びやすさ(姿勢反射障害):
押されたりするとそのまま倒れてしまうなどの症状が見られます。
すくみ足:

押くときの最初の一歩がなかなか出ない症状です。ただし、目印があったりすると動かせるようになったりします。


非運動症状:
自律神経症状:
血圧が上がったり下がったり、頑固な便秘が見られたり、尿が出づらくなります。汗が出づらかったり、逆に出すぎたりすることもあります。
匂いが分からなくなる(嗅覚障害)
気分障害:
うつがみられることも多いです。
匂不眠
睡眠異常:

夢を見て暴れたり、大きな声で寝言を言ったりします。


(※1)自分の意志とは関係なく生じてしまう「ふるえ」のこと

病気が辿る経過 - パーキンソン病

病気が辿る経過 - パーキンソン病

パーキンソン病およびパーキンソン病関連疾患は以下のように進んでいきます。

運動症状が出る10年ほど前から便秘やうつ、嗅覚障害がみられるようになります。ただし、こられの症状だけでは診断できないため、基本的には経過観察となります。

そのうちに、いずれかの手足(四肢)にふるえや動かしにくさ、こわばり、動きの遅さや動かしにくさがみられます。運動症状はだんだん広がっていき、転びやすくなってきます(姿勢反射障害)が出現してきます。転びやすくなってしまうこと(姿勢反射障害)により、次第に歩くことができなくなり、車いす生活となります。

並行して物を飲み込むことの困難さ(嚥下障害)が出現するため、食事が次第に取れなくなります。

誤嚥性肺炎あるいは寝たきりになることで心肺機能が衰えたり、褥瘡(床ずれ)ができてそこから感染したりすることで最期を迎えることが多いです。

パーキンソン病は動きを改善するための薬が比較的多くあり、お薬での治療を始めて数年間は効き目を感じることができます。こわばりなどによる痛みに対しては、飲み薬や張り薬での痛み止めが使われますが、こちらの効果を感じる人はあまりいないようです。サポーターやネックカラーなどで物理的にサポートをすることで効果を感じる方もいます。

しかし、次第に薬の効果が感じられなくなります。

パーキンソン病は発症してから15年程度で寝たきりとなる方が多くなります。

パーキンソン病関連疾患について - パーキンソン病

パーキンソン病関連疾患について - パーキンソン病

レビー小体型認知症や認知症
レビー小体型認知症や認知症を伴うパーキンソン病は似たような経過をたどりますが、かなり進行が早く5年程度であることが多いです。またレビー小体型認知症は一部の薬剤に対して過剰に反応してしまうため、精神的な面をサポートする薬剤が使いづらいことがあります。レビー小体型認知症は幻が見えることがありますが、本人が怖がっていない場合は、無理に幻覚の治療はしないことがほとんどです。
多系統萎縮症
多系統萎縮症はパーキンソンの運動症状と非運動症状に加えて、小脳が障害されることによるふらつきや言葉の話しづらさがみられます。パーキンソン病と異なり、有効な薬剤はほとんどなく、対症療法を行います。また自律神経障害の排尿障害が強く出るため、早くから尿を出すための管を入れます。 4年から10年で亡くなりますが、喉の筋肉がいきなり麻痺して突然呼吸ができなくなり最期を迎えることもあります(そのため早い段階で首に切れ込みを入れて(気管切開)、喉の筋肉の麻痺に備えることも可能です)。
進行性格上性麻痺
進行性格上性麻痺はパーキンソン病の運動症状と非運動症状に加えて、認知症と目の動かしにくさ(眼球運動障害)が見られます。 こちらもパーキンソン病と異なり、有効な薬剤はほとんどなく、対症療法を行います。5年程度で最期の時を迎える方が多いですが、認知症と眼球運動障害、姿勢反射障害が合わさって、転倒が原因でそれより早く死亡することも珍しくありません。
大脳皮質基底核変性症
大脳皮質基底核変性症はパーキンソン病の運動症状と非運動症状に加えて、認知症がみられます。認知症は物忘れよりも、洋服を着るなどの特定の動作が障害されることが多いです(「不器用」になったように見えます)。またぴくつきや言葉の出づらさも見られます。 こちらもパーキンソン病と異なり、有効な薬剤はほとんどなく、対症療法を行います。5年から10年程度で最期の時を迎える方が多いです。
パーキンソン病
病気経過終末期 Disease course and terminal stage.