看取る場所 ~それぞれの特徴~
~それぞれの特徴~
病院
人生最後の場所を選ぶ際にポイントとなるのが、「どれだけ安楽に過ごせるのか」です。
最後の最後まで痛みに堪え、不安に襲われながら過ごすことほど苦痛なものはありません。
病院は常に医療職がそばにいます。
看護師や医師もすぐに来てもらえ、モニターを装着していれば離れた場所でも常に観ていてもらえます。
病院と言ってもさまざまな専門診療科があります。
その中でも、最後を迎える方にとって過ごしやすい場所を提供している下記の病棟に注目してみましょう。
・緩和ケア病棟
・介護医療院
緩和ケア病棟
緩和ケア病棟は体の苦痛や心の苦痛など、さまざまな苦痛を和らげてくれる場所と認識して良いでしょう。
もちろん本人だけでなく、その家族の精神的な苦痛もケアの対象となっています。
常に緩和ケアの経験が豊富な医師や看護師がそばにいる安心感は大きいでしょう。
また近年では医療用麻薬に対する意識が変わり、積極的に痛みを取り除く場合には医療用麻薬を使っていきます。
麻薬と聞くと怖いイメージがありますが、違法なものではなくきちんと医師が管理を行い使用するので安心してください。
痛みを取り除くことで、気持ちも体も楽になります。
少し余裕が出てくることによって、優しい時間を過ごすことができるでしょう。
介護医療院
もともとは介護病棟などと呼ばれていた病棟です。
病院の中にありながら、介護保険を利用する特殊な病棟です。
病院と同様に、医師や看護師、介護職員が24時間在中しています。
積極的な延命を望まれれば、高カロリー輸液(カロリーの多い点滴)や人工呼吸器などの装着も可能です。
その反面、看取りを希望すれば穏やかに最後を迎えられるよう、サポートをしてもらうことができます。
幅広いケアに対応でき、柔軟に対応してもらえるため選択肢として入れてみてはいかがでしょうか。
※法的には介護保健施設に分類されますが、病院内にあることや医療的管理下にあるためこの度は病院の分類内へ記載しています。
施設(高齢者施設)
最後の場所を考えるとき、病院ほどの積極的な医療は希望しないが自宅で見るのは不安だという方には高齢者施設があります。
ご家族には仕事や家事、お孫さんがいる場合や障害を抱えたお子さんがいる場合には育児・介護なども必要になります。
そのような中、ご家族の看取りを希望される場合、穏やかに過ごせる場所が高齢者施設ではないでしょうか。
看取りを行う高齢者施設としては下記のような場所があります。
・特別養護老人ホーム(特養)
・認知症グル―プホーム
・有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
・その他
特別養護老人ホーム(特養)
特養老人ホーム(特養)は公的な高齢者施設として認知されています。
自宅での介護が難しい方が入所し、介護を受けながら生活します。
介護職員が24時間常駐しているため、どのような介護でも対応することができ安心です。
最近では看取り介護が広がり、積極的に看取りを進める施設も増えてきています。
従来型では数部屋しか個室がありませんでした。
しかしユニット型であれば全て個室になっているため、プライベート空間が保たれてゆっくりした時間を過ごすことができるでしょう。
特養は医師が1名以上配置されるため、特段の理由がない限り受診も必要ありません。
しかし要介護度3以上であることや希望者が多いことから、待機人数が増えてしまい希望したときには入れない可能性も高いので、早めに入所の申し込みをしておくことをおすすめします。
認知症グル―プホーム
認知症グループホームは、認知症の方が安心して穏やかに生活できるように環境が整っている施設になります。
認知症の方は大人数になると混乱しやすく、個別の対応ができないこともあるため少人数で生活することを想定されて作られています。
1ユニット9名までとなっているため、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅よりもきめ細かい個別的なケアが可能です。
入所するためには認知症の診断と要支援2または要介護1以上の方が対象です。
特別養護老人ホームと同様に、最近は終の棲家として看取りを実施しているところも多く、訪問看護ステーションや在宅診療医と連携されているところもあります。
グループホームでも日中夜間ともに介護職員が常駐しています。
また基本的にはホームで共同生活をしているような環境ですので、食事や掃除なども利用者が職員とともに行います。
看取りの時期になっても、生活感がある匂いや音、人の気配などが感じられる施設というのが特徴です。
有料老人ホーム
有料老人ホームには「介護型」「住宅型」「健康型」の3種類があります。
住宅型や健康型
住宅型や健康型は、基本的には介護は外部のサービスを利用するか、介護が必要な方は退去することになります。
看取りの場所として選ぶのであれば、介護型の有料老人ホームへ入居することをおすすめします。
介護型
介護型であれば施設の職員が介護サービスを提供してくれるので、最後まで同じ職員とかかわりを持ちながら暮らすことも可能です。
入所するときには看取りをしてもらえるかどうかの確認をしておきましょう。
なお、住宅型でも、定期巡回型訪問介護看護や訪問看護を併設して介護型と同じような形で運営しているところもあります。
それぞれ料金や行える介護サービスが違いますので、家族の負担にならない程度の有料老人ホームを選びましょう。
また最後のときには、医師が往診してもらえるのかなどの確認も必要です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者住宅は、高齢者のアパートのような考え方です。
そこにアパートの職員が介護のサービスを提供しに来訪してくれるイメージとなります。
まだ自分で生活ができる方やなるべく自分のことは自分でしてほしいと思っている家族には向いています。
日中には医療・福祉系の資格を持っている社会福祉法人、医療法人などの職員が常駐しています。
最低限のサービスとしては安否確認と生活相談のサービスが提供されます。
その他の介護サービスは施設によって違いがあるため注意しましょう。
夜間に不在となる場合には緊急通報システムによって対応することが決められています。
看取りを積極的に行えるかというとシステム上、難しい面があるのかと思います。
一度入所前に、当該施設へ問い合わせてみましょう。
その他
上記で紹介した以外にもさまざまな介護施設が多々あります。
介護老人保健施設は在宅と病院の中間施設としてリハビリを行う場所で看取りが目的ではありません。
低所得者で家族や親族などの手助けが難しい方が対象の軽費老人ホーム(ケアハウス)も看取りができないわけではありません。しかし夜間の体制や緊急時の対応など、ハード面での課題が残ります。
特養などが併設されていれば、応援を頼んだりすることもできますが、単体での運営をしているところは難しいかもしれません。
全くできないわけではありませんし、施設での看取りがすべてでもありません。
しっかりと前もって施設側と対応を話し合っておくことが大切です。
自宅
最近では介護保険制度の充実や、利用できるサービスも増えてきて、在宅での看取りも増加傾向にあります。
2012年に行われた「高齢者の健康に関する意識調査」では介護を受けたい場所、最後を迎えたい場所ともに「自宅」と答えた方が最も多い結果でした。
しかし現実的には病院や施設で最後を迎えるケースが今でも多いのが実状です。
自宅は住み慣れた場所で家族もそばにいるため、安らかな時間を過ごすことができるでしょう。
自宅で看取るためには、訪問診療の医師やケアマネジャー、訪問看護などとしっかりと連携をとることが大切です。
自宅でも医師の指示があれば、医療用麻薬での疼痛管理や腹膜穿刺(腹水を抜く処置)、中心静脈栄養(高カロリー輸液)なども実施することができます。
家族の負担は増えますが、その分、最後まで走り切ったときには「これでよかった」と思うことができるでしょう。
家族の介護負担については、ケアマネジャーとしっかりと話をしたうえで、どの程度介護サービスを使うことができるのか、料金はどの程度なのかなど踏まえて考えることをおすすめします。