大腸がん術後の生活を快適にするためのヒント集
この記事では、術後の身体的な変化への対処法、食事や運動といった日々の暮らしの中で気を付けること、精神的なサポートの受け方などを具体的にお伝えしています。病気と向き合いながらも、「自分らしく、豊かな人生」を歩んでいけるきっかけになりましたら幸いです。
-もくじ-
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① 術後に気をつけたい併発する病気(合併症)とその対処法
- 縫合不全
- 腸閉塞(ちょうへいそく)/イレウス
- 創感染(そうかんせん)
- 排尿障害
- 排便障害
② 術後の食事と栄養管理
- 術後すぐの食事の基本ルール
- 腸に優しいレシピとNG食材
③ 術後に可能な運動・定期検査
- 術後に可能な運動
- 再発が起こりやすいタイミングと兆候
- 術後に受けるべき定期検査の種類
④ 術後の人工肛門(ストーマ)との向き合い方
- 人工肛門(ストーマ)の基本知識とケア方法
- 心理的負担の軽減と相談先
⑤ まとめ
⑥ 編集を終えて
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‖ 術後に気をつけたい併発する病気(合併症)とその対処法
手術後の体は、ゆっくりと回復に向かいますが、術後の生活の中で、併発する病気(以後は合併症)については漠然とした不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、大腸がんの手術後に起こる可能性がある合併症について説明します。それぞれの合併症の特徴や、合併症を起こした時に現れる体調の変化を知ることにより、早期発見にお役立ていただけたら幸いです。

縫合不全とは、手術で腸と腸をつなぎ合わせた部分(吻合部:ふんごうぶ)がうまくくっつかず、そのつなぎ目から腸液や便がお腹の中に漏れ出てしまう状態のことを言います。大腸がん術後の合併症の中でも、最も注意が必要な重篤な合併症と言われています。
漏れ出た便や腸液が原因で、お腹全体に細菌が広がり「腹膜炎(ふくまくえん)」という命に関わる状態を引き起こす可能性があります。
縫合不全の症状
術後早朝(3日目~10日目頃)に起こることが多いと言われています。
・急な高熱(38度以上)
└解熱剤を飲んでも下がらない、悪寒や震えを伴う。
・我慢できない、お腹に強く響く強い腹痛
・脈が速くなる(頻脈)
└安静にしていても心臓がドキドキする。
・吐き気、嘔吐
└食べ物や胃液を繰り返し吐いてしまう。ひどい場合は、便のような臭いのするものを吐くこともあります。
・お腹の張り(腹部膨満感)
└ガスが溜まる感じ
・(お腹に管が入っていれば)管から便のような色の液体が出てくる
※特に「高熱」と「激しい腹痛」は腹膜炎を疑うべき最も重要なサインです。
退院後に最も大切なこと
退院後、「何かおかしい」「いつもと違う」と感じたり、経過をみていると症状が増してくることがあるときには、続けて我慢したり様子を見たりせずに、時間や曜日を問わず、すぐに手術を受けた病院に連絡し、指示を仰いでください。特に急な高熱が出たり、激しい腹痛が出てきた場合は、要注意です。
イレウス

大腸がん手術後、比較的多く見られる合併症の一つで、食べたものや消化液、ガスなどが腸の中をスムーズに通れなくなり、詰まってしまう状態のことを言います。腸閉塞には2つのタイプがあり、「機能的イレウス(麻痺性イレウス)」と「機械的イレウス(癒着性レイレウス)」があります。
機能的イレウス(麻痺性イレウス)
腸が手術のダメージや麻痺の影響で、動き自体が一時的に麻痺してしまう状態をいい、術後早朝(数日以内)に起こることが多く、腸の動きが回復すれば自然に治ることがほとんどです。
機械的イレウス(癒着性イレウス)
手術した部分やその周りの腸が「癒着(ゆちゃく)*1」することによって物理的に塞がれてしまう状態をいい、「腸閉塞」として注意が必要なタイプになります。術後(数週間~数か月後)、あるいは何年も経ってから突然起こることもあります。
癒着*1 :手術でお腹を切ると、体が傷を治そうとする過程で、本来は離れているはずの腸同士や、腸とお腹の壁(腹膜)などがくっついてしまうことがあり、このくっついた部分がテープのように腸を締め付けたり、ねじれさせたりして食べ物の通り道を狭くしてしまうのが癒着性の腸閉塞になります。
腸閉塞の症状
・排便・排ガスの停止
└おならや便が全くでなくなる。
・お腹の張り(腹部膨満感)
└ガスが溜まり、お腹がパンパンに張って苦しい。
・激しい腹痛
└差し込むような、波のある強い痛み。お腹が張って痛い。
・吐き気、嘔吐
└食べ物や胃液を繰り返し吐いてしまう。ひどい場合は、便のような臭いのするものを吐くこともあります。
一度癒着が起きてしまうと、完全に癒着をなくすことは困難になります。しかし、腸閉塞を起こしにくくするために日常生活でできる注意点についてお伝えします。

・食事の工夫
消化を助け、腸への負担を減らすために、ゆっくりよく噛んで食べること が最も重要となります。また、一度に大量に食べると腸に負担がかかるため、食べ過ぎない、消化の悪い食べ物は避けることが大切です。
・適度な運動
腸の蠕動(ぜんどう)をサポートするために適度な運動は生活に取り入れるとよいでしょう。軽めの散歩やウォーキングでも有効です。
・便通を整える
腸の動きは自律神経を整えることで調整がつきやすくなります。規則的な生活を心がけましょう。就眠、起床のリズムを一定にし、一定のタイミングで3食を摂取することが有効です。
・体を冷やさない
体温が低下すると自律神経が乱れます。
・水分を取る
心臓の機能に問題ない方は一日1~1.5L以上を目安にこまめな水分を取るようにしましょう。冷たい水が苦手な方は常温の水でも白湯でもかまいません。こまめに水分を摂ることが、便を柔らかくし、腸閉塞の予防に繋がります。
[ワンポイントアドバイス]
私が担当した大腸がんの手術後の患者さんで、毎週明け月曜にお腹の調子を崩し、お腹が張る患者さんがいらっしゃいました。お腹のX線検査やCT検査を行うと、腸閉塞の一歩手前の状態となっており、入院して食事をお休みすると改善することを繰り返していました。よくお話を伺うと、週末は気が緩み食事内容が乱れがちだったことが、大きな原因でした。多めに摂取するキノコ類がどうも原因のように考えられ、加えて歯が悪い方でしたので、歯の治療を御願いしながら、1口を口に運んだら、20~30回は噛んで食べることが大切なことをお話していったところ、入院にまで到る腸閉塞の頻度は減っていきました。些細なことかもしれませんが、食事の献立を見直し、よく噛むことが大切であることを痛感した経験でした。

創感染の症状
手術後数日から、退院してしばらく経った1ヶ月後くらいまでに起こる可能性があります。
・赤み
└傷口の周りが赤くなる。
・腫れ
└傷口やその周りがぷっくりと腫れる。
・熱感(ねっかん)
└傷口の周りを触ると、他の部分より熱っぽく感じる。
・痛み
└一度治まっていた痛みが再び強くなる。ズキズキした痛みが出てくる。
・膿(うみ)が出る
└傷口の隙間から、黄色や緑がかったドロッとした液体(膿)が出てくる。
・発熱
└傷口の炎症が原因で、37.5度以上の熱が出ることがある。
※これらの症状は、体が細菌と戦っている証拠(炎症反応)です。
予防と退院後の注意点
・傷口を清潔に保つ
シャワー浴の許可が出たら、医師や看護師の指示に従って傷口を優しく洗い、清潔に保ちましょう。汚れを落とそうとゴシゴシ擦る必要はありません。洗った後はタオルなどを用いてしっかり水気を拭き取るようにしましょう。
・傷口を不必要に触らない
気になっても、手で直接触ったり、掻いたりしないようにしましょう。
・栄養をしっかり摂る
傷が治るためにはタンパク質やビタミンなどの栄養が必要です。バランスの良い食事を心がけ、体力を回復させましょう。
・血糖コントロール
糖尿病をお持ちの方は、血糖値が高いと感染症のリスクが高まるため、血糖コントロールを良好に保つことが重要です。
排尿障害

排尿障害の症状
術後数週間から数ヶ月かけて徐々に改善していくことが多いですが、一部の機能が戻らないこともあります。
・尿が出にくい(排尿障害)
└お腹に力を入れないと尿が出ない。尿の勢いが弱い。排尿に時間がかかる。
・残尿感
└排尿後も、まだ膀胱に尿が残っている感じがありすっきりしない。
・頻尿
└尿が十分に溜まっていなくても、何度もトイレに行きたくなる。
・尿意を感じにくい
└膀胱に尿がたまっている感じがわかりにくくなったり、全く感じなくなる。
・尿漏れ
└咳やくしゃみ、重い荷物を持ったときなど、お腹に力が入った瞬間に尿がもれる。急な尿意でトイレに間に合わない。
対処法
・薬物療法
膀胱の収縮を助ける薬や、尿道の緊張を緩める薬などを使います。
・自己導尿
残尿が多い場合、1日数回膀胱から直接尿を出す方法です。入院中に看護師から指導を受けて習得し、退院後は自分で行います。「自分で尿を出す」という確実な方法があることで、安心に繋がる効果があるのではないでしょうか。
[ワンポイントアドバイス]
尿が全くでないときは、緊急性の高い状態ですので、我慢せずに医療機関を受診しましょう。排尿時に痛みがある、血が混じる、症状が急に悪化したときや日常生活に大きな支障が出ているときは早めに医療機関を受診しましょう。

排便障害の症状
術後3ヶ月~半年くらいが最も辛く、その後1年~2年ほどかけて徐々に自分の「新しい排便パターン」が定まってきます。焦らず、上手く付き合っていく工夫が大切です。
・便の回数が増える
└便を溜めておく直腸がなくなるため、便が溜まるとすぐに便意を感じます。1日5回~10回以上トイレに行くことも珍しくありません。何回にも分けて少しずつしか便が出ない状態です。
・下痢、軟便
・便失禁、ガス失禁
└肛門を締める筋肉(括約筋)の機能低下や、便意を感じる神経の鈍化により、意図せずガスや便(特に水様便)が漏れてしまうことがあります。
・便意、出しにくさ
└便が出にくい、強く息まないと出ないときや、数日便が出なかった後に急に何度もトイレに行くといったパターンを繰り返すことがあります。
・残便感
└排便後も便が残っている感じがしてすっきりしない。
対処法
・食事療法
消化の良いものを中心にとるようにします。刺激物(香辛料、アルコール、カフェイン、脂っこい食事)は腸を刺激しやすく、下痢に繋がりやすいため控えるようにしましょう。水分摂取は一度に大量に飲まず、こまめに摂取するよう心がけましょう。
・薬物療法
便の回数が多すぎて生活に支障が出る場合には下痢止め、便の水分を吸収して形を整えるために便を固める薬を使うこともあります。便秘や排出困難な場合には、便を柔らかくする薬を使うこともあります。
・生活上の工夫
規則正しい生活を心がけましょう。朝食後など、便意が起こりやすいタイミングでトイレに行く習慣をつけたり、下着やパッドの利用をしたり、骨盤低筋体操などで、肛門周りの筋肉を鍛えることで、便失禁の改善が期待できます。
[ワンポイントアドバイス]
便のトラブルは恥ずかしいという気持ちから、なかなか他人に打ち明けにくく、数年後にふとした瞬間に患者さんからお話を伺って、「これまで我慢されておられたんだな・・・」と感じることも多いです。思ったより便のトラブルに悩まれている術後の患者さんは大勢居られます。気になること、不安なことがございましたらお気軽に主治医にご相談されてくださることが解決への道です。
‖ 術後の食事と栄養管理
術後の腸はとてもデリケートで敏感な状態となっています。ご本人も、ご家族や介助する方も、術後の食事はどのような事に気を付けて、何を食べればいいのだろう、と悩まれる方もいるのではないでしょうか。ここでは術後の食事の進め方について説明しています。術後の体と向き合いながら、毎日の食事を不安なく「美味しい」と感じる瞬間を取り戻していけるヒントとなれましたら幸いです。

1.少量ずつ、回数を分けて(少量頻回)
胃腸への負担を減らすため、1回の食事量をこれまでの半分くらいに減らし、1日4~5回に分けて食べるのがおすすめです。
2.とにかく、よく噛んで食べること
食べ物を細かく嚙み砕くことで、唾液と良く混ざり、胃液での消化を大きく助けてくれます。腸閉塞の予防にも直結します。一口入れたら30回以上を目安に、よく噛んで食べるようにしましょう。

3.消化の良いものを選ぶ
おかゆやよく煮込んだうどん、脂身の少ない白身魚や鶏ささみ、豆腐、卵、じゃがいもなど、柔らかく消化しやすいものから始めましょう。食物繊維は体に良いものですが、術後すぐは腸の負担になることがあるため、少しずつ試していくようにしましょう。このほか、刺激の強いもの(過度の香辛料、アルコール、カフェインなど)や、脂肪が多いもの(揚げ物や脂身の多い肉、中華料理など)は下痢の原因になりやすいため、控え目にしましょう。
[ワンポイントアドバイス]
大病を患った後、ご自宅に帰られ、ほっと気が緩むことでしょう。術前と同じ献立を継続していると、思いも寄らない便通の変化に直結してしまうことはあります。とくに刺激の強いものや脂肪が多いものを好まれる方は、便意を急に感じ、下痢・軟便になることがあります。こうした症状がでた場合は、直近1-2日内に食べた食事の献立を思い出してみてください。その中に原因となった食材や調味料・調理法などが含まれていることがしばしばあります。思い至った場合は、その献立の量を減らし目にしてみてください。例えばカレーライスのカレーのルーを大盛りにするのをやめる、カツのトッピングを少し減らし家族と分け合う、ラーメンの汁まで飲まない、など身近で簡単なことから、我慢しすぎない程度に工夫してみることをお勧めしています。

「煮る」「蒸す」「茹でる」といった、油を使わず水分を多く含む料理が腸にはやさしく、基本的な調理法となります。

■腸に優しいレシピ例
・白身魚の煮つけ
・鶏ひき肉と豆腐のあんかけ
・野菜を煮込んだポタージュスープ
・茶碗蒸し
・かぼちゃの煮物 など
■術後しばらくは避けたい食材(NG食材)
・消化の悪い食物繊維
└ごぼう、たけのこ、きのこ類、海藻類
・脂質の多いもの
└揚げ物、バラ肉、生クリーム、中華料理
・刺激の強いもの
└香辛料(唐辛子など)、ニンニク、ニラ、炭酸飲料
・ガスを発生させやすいもの
└豆類、さつまいも、栗
※「絶対に食べてはだめ」というわけではありません。体調が安定してきたら、少量から試してみて、ご自身の体と相談しながら食材を選びましょう。
‖ 術後に可能な運動・定期検査
体を動かすことは、体力を取り戻すためだけでなく、気分をリフレッシュさせるための大切な時間にもなります。ここでは、術後に可能な運動やリハビリ方法、安心して日々を過ごすための定期検査についてお伝えします。
術後に可能な運動


最も手軽で安全な運動がウォーキングです。体力が落ちている術後は、まず家の周りを5分、10分と歩くことから始めてみましょう。ウォーキングは、体力回復だけでなく、腸の動きを促し、腸閉塞の予防にも繋がります。
2.腹圧のかかる運動は、しばらくお休みしましょう
重いものを持ったり、腹筋運動など、お腹にぐっと力が入る運動は術後3ヶ月程度は避けた方がいいと言われています。傷の治りに影響したり、お腹の臓器が飛び出す「腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア*2」の原因になることがあります。腹圧のかかる運動を再開する際は、必ず主治医に相談をして指示を受けてからにしましょう。
腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア*2 :お腹の手術の傷跡が弱くなり、その部分から腸などが皮膚の下に飛び出してしまう状態のことです。
再発が起こりやすいタイミングと兆候

兆候
血便や便通の変化、腹痛、原因不明の体重減少、長引く咳や息切れなどの症状が現れることがあります。しかし、何の自覚症状もないまま再発が見つかることも少なくありません。だからこそ、定期的な検査が大切になってきます。患者さん一人ひとりの状況によって通院頻度や定期的な検査の間隔は異なります。必ず担当の医師の指導に従って、継続して通院するようにしてください。
術後に受けるべき定期検査の種類


・問診、診察
医師と直接顔を合わせ、体調の変化や気になることを話す大切な時間です。「こんな些細なこと」と思わずに、便通の変化や小さな痛みなど、メモしておいたことを伝えましょう。
・血液検査(腫瘍マーカーなど)
採血で、再発の目安となる「腫瘍マーカー(CEAなど)」の数値や、体の栄養状態などを確認します。この数値は体調などでも変動するため、あくまで全体の状態を把握するための一つの指標と捉えましょう。

・CT検査
体の断面図を撮影し、肺や肝臓など、他の臓器への転移がないかを広く確認します。定期的な検査の要となるものです。
・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
残っている大腸に、再発や新しいポリープができていないかを直接観察します。
これらの検査を、医師が状態に合わせて組み合わせて行います。
‖ 術後の人工肛門(ストーマ)との向き合い方
手術によってお腹に作られた「便の新しい出口」を人工肛門(ストーマ)と言います。ここでは、人工肛門の基礎知識から使用方法などについてお伝えします。
人工肛門(ストーマ)の基本知識とケア方法


ストーマ装具(パウチ)
便を受け止めるための袋で、皮膚に貼り付ける部分(面板:めんいた)と、袋の部分(パウチ)が一体になったものや、別々になっているものなど、様々な種類があります。

・防臭性
└パウチは特殊なフィルムでできている為、きちんと装着していれば臭いが外に漏れることはありません。
・交換頻度
・便の処理
└パウチに便が1/3~半分くらい溜まったら、トイレに座って中身を捨てます。
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1 |
専用の剥離剤(リムーバー)を使用すると皮膚への負担を少なく剥がせます。 |
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2 |
シャワーでストーマの周りを優しく洗い流します。石鹸を使用することもできますが、よく洗い流してください。 |
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3 |
柔らかい布やティッシュで、こすらずに優しく水分を拭き取ります。 |
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4 |
ストーマの大きさに合わせて面板の穴を切り、しわが寄らないように皮膚にしっかり密着させて貼り付けます。 |
※これらのケア方法は、入浴中に専門の看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)が丁寧に指導してくれます。装具の選択から皮膚トラブルの対処法まで、あらゆる相談に乗ってくれますので、不安があれば受診し、指導を受けることをお勧めします。
毎日使うストーマパウチを自分らしいものに

オストメイトの方の心が少しでも明るく、またひとりひとりが好きなデザインのストーマを身に着けられる未来を目指して「デザインストーマパウチ」の開発も行われています。
心理的負担の軽減と相談先

人工肛門(ストーマ)を持つことによる外見の変化や、臭い・漏れへの不安など、心理的な負担を感じてしまうのは当然のことです。一人で抱え込まず、専門家や同じ経験を持つ仲間に相談することが大切です。ここでは、具体的な相談先について記載しています。
・皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)
病院にいるストーマケアの専門家です。WOCナースは、創傷、ストーマ、失禁ケアに関する高い専門知識と技術を持ち、患者さんのQOL(生活の質)向上のため寄り添ってくれます。最も頼りになる相談相手です。
・がん相談支援センター
各がん診療連携拠点病院に設置されており、がん患者、家族等の無料相談窓口となっています。
・患者会(公益社団法人
日本オストミー協会)
オストメイトやその家族が一人で悩まず、仲間と支え合いながら安心して社会生活を送れるよう、多角的な支援・啓発・制度改善活動を行っている全国規模の患者会です。
-全国に支部があり、オストメイト本人や家族、関係者が参加することができます。
-年会費制で、会員向けに会報やイベント案内などの情報提供があります。
-公式ウェブサイトや各支部で入会案内・相談窓口を設けています。
※オストメイトとは、ストーマを造設した人を意味する言葉です。「ストーマ患者」と呼ぶのではなく「オストメイト」という呼称が使われるのは、病気を抱えながらも社会で生活する一人の人間としての尊厳を尊重する意味合いが込められています。
‖ まとめ
大腸がん手術後の生活についてお伝えしてきましたが、合併症への不安、食事や排尿、排便の悩み、そして人口肛門(ストーマ)との向き合い方など、術後の日々は戸惑いの連続かもしれません。合併症から体が出しているサインへの対処法、術後の食事内容について、無理のない運動、そしてストーマとの上手な付き合い方を知ることで、ご自身の力で日々の生活を管理し、穏やかな日常を取り戻す一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか?
‖ 編集を終えて
「手術」というとても体に負担のかかる治療をした後に、通常の日常生活に戻っていくことは、ほっとする反面、とても不安を伴うことだと思います。いままで当たり前にしていた食事にしても、体に負担のかからない食事はどのようなものがあるのか、または今の体に負担をかけてしまう食材はどのようなものがあるのか、いざその状況になるとどのような所に気をつけたらいいのかわからないことが多いのではないでしょうか。手術後に起こる可能性のある合併症についても、知識があれば日常生活を送る中で、小さな自分の体の変化に気づき、早期発見し対処していくことが可能となります。そして、病院は医師のみならず看護師さん、薬剤師さん、栄養士さんを含めた、多職種が連携したチームで、患者さんの普段の生活まで支える体制を取っています。不安なことがでてくることがあれば、主治医の先生にお気軽に相談してください。きっと、お答えしてくれるでしょうし、医師が分からない場合は、的確な部署、職種のチームメンバーを案内してくれます。
病気と向き合い共に過ごしながらも、自分らしく、心豊かに生活を送るためのお役にたてましたら幸いです。

