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11/17 (月) 10:14更新

非小細胞肺がんとは~種類と治療法~

Non-Small Cell Lung Cancer: Types and Treatments
医師 鬼澤重光
医師 医学博士 日本呼吸器学会呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医 大学病院、総合病院などで勤務  現在は都内の個人開業医として訪問診療も行う

非小細胞肺がんは、肺がんの中で最も多いタイプであり、がんの種類や進行度によって治療方針や生活の在り方が異なります。本記事では、非小細胞肺がんの概要から診断・検査の流れ、腺がん扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん大細胞がんといった主要な種類の特徴、そして治療後や再発時の過ごし方までをわかりやすく解説します。


-もくじ-
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① 非小細胞肺がんとは
② 非小細胞肺がんの診断と検査の流れ
③ 非小細胞肺がんの種類
  - 腺がん
  - 扁平上皮がん
  - 大細胞がん
④ 非小細胞肺がんの病気の経過と再発対策
⑤ まとめ
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‖ 非小細胞肺がんとは
非小細胞肺がんは、肺がん全体の約80%を占めるもっとも一般的ながんです。別に紹介する小細胞肺がんと比べると進行速度がゆるやかですが、定期的な体調管理は大切です。がんの種類によって治療法や予後が異なりますが、早期に発見されれば根治を目指せる可能性もあります。一方で進行している場合でも、薬物療法や緩和ケアによって、症状を和らげながら自分らしい生活を保つことができます。

‖ 非小細胞肺がんの診断と検査の流れ

胸部X線やCT検査の結果、肺がんが疑われたとき、がん組織の大きさや発生部位が確認されます。肺がんの診断には、喀痰細胞診*1、気管支鏡検査*2経皮的肺生検*3などが行われます。がん細胞の種類を特定するために、細胞そのものや組織の一部を採取し、病理検査で詳しく調べ、非小細胞肺がんかどうかが診断されます。また、がんの遠隔転移の有無やその部位(進行度といいます)を評価するためにPET検査*4MRI検査*5も活用され、臨床病期(ステージ)が明らかになり、治療方針が決定されます。
がん細胞の種類によっては、がんの発生や増殖に係る遺伝子に異常があるかどうかや、免疫チェックポイントという、がん免疫を抑えるたんぱく質が含まれているかを、採取した細胞から調べる場合もあります。
さまざまご不安になることが多い時期であろうと思いますが、ぜひ前向きに検査をお受けになることをおすすめしたいと思います。

 喀痰細胞診*1:喀痰(痰)を採取し、喀痰にふくまれる細胞を評価する検査
 気管支鏡検査*2:肺や気管支の内部を内視鏡で直接観察し、必要に応じて組織の採取などを行う検査
 経皮的肺生検*3:胸や背中など身体の外から、肺の腫瘍まで針を直接刺して、組織の採取を行う検査
 PET検査*4:微量の放射性物質を含む薬を体に注射し、その薬が集まる様子を特殊なカメラで撮影する検査
 MRI検査*5:強い磁力と電波を使って、体の内部を詳しく画像化する検査


‖ 非小細胞肺がんの種類

非小細胞肺がんには、大きく分けて「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」の3つの種類があります。それぞれに発生部位や進行の仕方、治療方法の選び方に違いがあるため、タイプを知ることは今後の生活を考えるうえでも大切なポイントです。ここでは、それぞれのがんの特徴について、わかりやすく説明します。

 腺がん

特徴
・非小細胞肺がんの中で最も多いタイプ
・女性や非喫煙者にも多く見られる
・肺の外側や末梢部分に発生しやすい
・初期には症状が出にくく、進行後に発見されることが多い

最近では、がん細胞の遺伝子変異に対する「分子標的治療薬*1」や「免疫チェックポイント阻害薬*2」が進歩しており、特定の変異を持つ腺がんに対しては、副作用の少ない薬で治療でき、長期安定する可能性があります。

[監修者のひとこと]
私が担当した患者さんでも、EGFR遺伝子変異と呼ばれる遺伝子異常を認めた腺がんの方は、副作用の少ない分子標的治療薬の飲みぐすりを選択することが出来、またそれが非常に有効であったため、おだやかに長期安定した時間を過ごされた方がいらっしゃいました。腺がんと診断された際には、「治療でどこまで症状が抑えられるのか」「治療と生活のバランスはどうするか」といった視点で医師とよく相談し、生活の質(QOL)を大切にした選択をしていくことが求められます。

分子標的治療薬*1がん細胞の「異常な分子(タンパク質や遺伝子)」を標的として、その働きを直接阻害する治療法

免疫チェックポイント阻害薬*2生体のTリンパ球などが持つ「がん免疫」を、がん細胞そのものが自ら抑えることがあり(ブレーキ機構)、これを起こす基となるたんぱく質を直接阻害する治療法

扁平上皮がん

特徴
・喫煙との関連が強い
・肺の中心部(気管支など)に発生しやすい
・咳や血痰などが比較的早期から現れる
・気道をふさぎ、息苦しさや感染症の原因になることがある

治療は手術・放射線・抗がん剤を組み合わせて行うことが多く、症状の進行によっては緩和医療も選択肢に入ってきます。扁平上皮がんは再発リスクもあるため、治療中だけでなく、治療後も体調管理と定期的な通院による経過観察が大切です。

大細胞がん

特徴
・大細胞がんは、非小細胞肺がんの中では比較的まれなタイプ
・がん細胞の形が大きく、特徴的である
・進行が早い傾向がある

大細胞がんは、腺がんや扁平上皮がんに比べて早期に転移する可能性もあります。そのため、発見時にはすでに広がっているケースもあり、手術が難しい場合には化学療法(抗がん剤)や放射線療法が中心となります。

‖ 非小細胞肺がんの病気の経過と再発対策

非小細胞肺がんの経過は、早期であれば手術や放射線によって完治を目指せることもありますが、進行している場合や再発時には、症状をコントロールしながら過ごす期間が続くことになります。治療が一段落しても、再発に備えた定期検査や体調の自己管理が重要です。また、肺炎のもとになりますのでかぜをひかないように注意しましょう。
さまざまなワクチンの接種も、主治医とよくご相談ください。
再発時にも「自分らしい生活を守る」ことは可能です。ご家族や看護される方は治療やケアの選択肢を理解し、ご本人の気持ちに寄り添うことが大切です。

‖ まとめ

非小細胞肺がんは、がんの種類や進行度、治療への反応によって経過が異なります。
また、医療の進歩によって、がんとの向き合い方は「戦う」だけではなく、「よりよく生きる」ことを目指す方向へと広がっています。薬による副作用が少ない選択肢や、緩和ケアの質の向上など、ご本人の希望を支える方法も多様になっています。
本記事を通じて、非小細胞肺がんの理解が深まり、ご本人やご家族が何を大切にすべきかのヒントを得ていただけましたら幸いです。

本記事の監修医である鬼澤先生は「しげみつファミリークリニック」を開院されています。患者さん一人ひとりに寄り添った診療を行う、しげみつファミリークリニックの詳細は、以下の公式サイトをご覧ください。

▼「しげみつファミリークリニック」公式サイト
https://sf-cl.jp/index.html


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【参考文献】
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html
日本肺癌学会
https://www.haigan.gr.jp/general/
教えて肺がんのこと
https://oshiete-gan.jp/lung/about/type/sclc.html?utm_source=chatgpt.com

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医師 鬼澤重光 = 文