家族で看取る「穏やかな最期」 Peaceful end-of-life care" with family members
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10/14 (水) 08:53更新

大腸がんが肝臓に転移したときに知っておきたい症状と治療法

Symptoms and Treatments to Know When Colorectal Cancer Metastasizes to the Liver
医師 
喜田凛
卒後20年目の医師、初期・後期臨床研修後、各地で研鑽を積んだ後、現在は某地方病院消化器内科部長を務めている。消化器疾患・消化管内視鏡分野の診断・治療を担当し、日々患者さんの病に一緒に立ち向かっています。
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集学的治療と個別化医療の重要性

The Importance of Multidisciplinary Treatment
 and Personalized Medicine

大腸がんの肝転移の治療では、集学的治療と個別化医療の考え方が重要です。集学的治療とは、外科手術、薬物療法、局所療法など、異なる複数の治療法を組み合わせ、それぞれの利点を最大限に生かし、がんへの最大の治療効果と再発の抑制を目指す方法です。目的は治療効果の向上と、再発抑制の両立にあります。

以前は、転移の数が多い、あるいは場所が悪いといった理由で手術が難しいと判断された症例でも、先に薬物療法(抗がん剤治療など)を行うことで、がんが小さくなり、安全に手術(切除)が可能になるケース(コンバージョン手術と呼ばれます)もあります。当初切除不能とみなされた場合でも、治療の選択肢を諦めずに主治医と治療方針を相談していくことが重要です。

一方、がんの性質や治療反応性は患者さんごとに異なります。全身状態(年齢、体力、合併症の有無)、がんの進行度、がんの遺伝子変異や特性は個人差が大きいため、個別の情報に基づいて最適な治療法を選択・計画していく個別化医療が不可欠です。近年は生検で採取したがん組織を使って、一度に多数の遺伝子変異を調べる『がん遺伝子パネル検査』が普及し、その結果をもとに分子標的薬などを選択することが一般的になりつつあります。

最終的には、主治医・担当医や複数の専門医が連携し、患者さんとそのご家族の意向も尊重しながら、最も効果的で負担の少ない治療戦略を立てることが重要です。こうした連携的かつ、個別化された治療が、良好な治療成績と生活の質(QOL)の維持に直結します。

 

治療後の経過観察とサポート

治療が無事に終わり、見えるがんの塊がなくなったとしても、体内に残る微小ながん細胞が元となって、再発する可能性は残されます。治療後の定期的な経過観察は、再発の早期発見と早期治療に繋げるためにとても重要です。この章では治療後の経過観察、日常生活の中でのケアとサポートなどについて説明します。
 

治療後の経過観察

Post-treatment follow-up

肝臓に転移している場合、治療後の再発は、5年以内の再発が最も多いとされ、治療後の経過観察は、数ヶ月に一度、その後は半年から1年に一度と、徐々に間隔を広げながら数年間にわたり継続されます。経過観察の項目は主に「腫瘍マーカー検査」「画像検査」「内視鏡検査」を行います。

また、経過観察と共に再発予防には「健康的な生活習慣の維持」も非常に大切です。生活習慣の改善は再発リスクを下げ、治療後の全身状態を保つうえで重要で、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、過度な飲酒を避けることなどは全身の健康状態を良好に保ちます。医師や管理栄養士、理学療法士などの専門家と相談しながら、自分に合った生活習慣を確立することが重要と言えます。

 

身体的ケアと精神的サポート

Physical care and emotional support

がんの治療後は、病気への不安、再発への恐怖、治療による身体的な変化や副作用、そして社会生活への復帰における課題など、様々な負担がかかり、精神的な側面にも大きく影響を及ぼします。ここでは、身体的なケアと精神的サポートについてどのようなものがあるのか説明します。

 

 身体的ケア

  • 治療後の後遺症や体力低下に対してリハビリテーションがあり、専門家の指導のもと、体力の回復や日常生活動作の改善を目指し、治療による痛みや倦怠感、消化器症状などに対しては緩和ケアチームが症状の緩和に努め、生活の質(QOL)の向上をサポートしてくれます。

 

 精神的サポート

  • 病院には、がん相談支援センターや精神科医、心理士、ソーシャルワーカーなどが在籍しており、患者さんやご家族の悩みや不安を受け止める体制が整っています。必要に応じてカウンセリングを受けたり、精神的な負担を軽減するためのサポートを受けることができます。診断直後は、誰でも大きなショックと不安で頭が一杯になります。医師の前では緊張して聞きたいことが聞けなかったり、逆に家族には心配をかけたくないと悩みを言えなかったりすることもあるでしょう。決して一人で抱え込まず、病院のがん相談支援センターの看護師やソーシャルワーカーに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが整理できることがあります。また、同じ病気を経験した人の話を聞ける『患者会』なども、心の支えになるかもしれません。

 

まとめ

大腸がんが肝臓に転移していると診断された時、大きな不安を感じるのは当然のことです。しかし、この記事を通して多様な治療法と充実したサポート体制があることに触れました。現在の医療では、大腸がんの肝転移に対しては外科手術を初めとして、薬物療法、局所療法、さらにはこれらを組み合わせた集学的治療まで、患者さん一人ひとりの体の状態に最適な治療法を主治医の先生を初めとしたチームで検討され、一番よい方法で治療が選択されています。

治療後も定期的な経過観察と身体に優しい健康的な生活習慣を心がけ、ときには病院や周りの人のサポート(身体的・精神的なサポート)を上手に頼りながら、がんと向き合い、あなたらしい生活を続けていくことは十分に可能です。

この記事が今、あなたが抱えて居る不安を少しでも和らげ、主治医と共に前向きな治療選択をするための一助となったなら心から幸いです。

 

【参考文献】

・世界保険機構(WHO)の身体活動に関するガイドライン
「WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour」

・世界がん研究基金とアメリカがん研究協会の継続的更新プロジェクト「(Continuous Update Project: CUP)の報告書」

・「大腸がん研究会 (編) 大腸癌治療ガイドライン医師用2024年版」東京:金原出版株式会:2024.

 

喜田凛= 文