せん妄について[前編]
最期の時期を迎える患者さんの意識が悪くなって混乱や興奮する状態が見受けられることがあります。そばで支えるご家族も、大切な人が「急に話が通じなくなった」「夜中に興奮して眠れていない」「見えないものが見えると言い出す」といった変化を目の当たりにし、戸惑いや不安、どう接してよいか分からない苦しさを感じていらっしゃるかもしれません。
この記事では、終末期に起こる可能性のある「せん妄とは何か」「どんな症状が現れるのか」「なぜ起こるのか」といった基本から、実際にどのようにケアすると苦しみを和らげることができるのかをわかりやすく解説します。
辛い状況の中でも「自分にもできることがある」と前向きな気持ちになれる、大切な方と最期の時間を少しでも穏やかに過ごすためのきっかけになれましたら幸いです。
‐もくじ‐
せん妄とは
今までしっかり意思疎通ができていた人が、急におかしなことを言ったり、夜騒いだりすると、「もしかして認知症?」と感じてしまった事はありませんか?
でも、それは「せん妄(せんもう)」という症状かもしれません。
ここでは、終末期に起こる可能性のある「一般的なせん妄」と、もう元には戻ることが難しい「終末期せん妄」の違いについて詳しく説明します。
せん妄 (一般的なせん妄)
delirium
意識がはっきりしなくなり、会話ができなくなったり、会話の内容が混乱したりします。
高齢であることや、手術や病気で体が弱っている状態や特定の薬などが原因で起こります。
特に、⦅命の終わりに近づいている時期⦆には、このせん妄がとてもおこりやすいです。
以下のような症状が現れやすいです。
話が通じなくなる
話したことを覚えていない
変なことを言い出す(例:「虫がいる!」と見えないものを言う)
昼と夜が逆になる(昼に寝て、夜に大声を出す)
落ち着きがなくなり時に暴力的になる、または反対に、ぼーっとして反応しなくなる
なお、この「一般的なせん妄」は、原因となっている問題(例えば感染症や脱水など)を取り除くなどの治療をすれば、回復する可能性があります。
終末期せん妄
terminal delirium
亡くなるまでの数か月間は「一般的なせん妄」を起こしやすく、またがんで亡くなる2週間以内のほとんどの人が、治ることのない不可逆的な「終末期せん妄」の意識状態へ変化していきます。
「せん妄」と「終末期せん妄」の違い
違い | せん妄 | 終末期せん妄 |
起こる | 高齢 | 命の終わりが近づいた体の変化 |
治る | 原因がなくなれば回復する | 回復が難しい |
起こる | 原因が重なればいつでも | 亡くなる2週間以内~亡くなるまで |
どうして命の終わりの時期にせん妄が起きるのか?
長く闘病を続けて、体にも心にも大きな負担がかかっています。
以下の要因が多ければ多いほど、せん妄は出やすくなります。
食事や水分をからだが上手に処理できなくなってきた
病気が進行し、脳に影響がでている
痛みや息苦しさで、休めていない
薬の副作用(痛み止めや睡眠薬など)
死に対する不安
せん妄の症状
まずは、ケアする側がせん妄のサインを早く見つけてあげることが大切です。
たとえば、このような変化に気づいたら、せん妄の可能性があります。
すべての症状には個人差があり、出る人も出ない人もいます。
よくある症状とその特徴
Common symptoms and their characteristics
言い間違いや忘れっぽさがある
寝起きでぼーっとしたようになり、会話のなかでもちょっとした間違いがあったりうまく物を扱えなかったりします。このような症状は「注意障害(ちゅういしょうがい)」といいます。
「みんなはいつ帰ってくる?」などとたずねる
病院にいるのに、自宅にいるようにふるまうなど時間や場所の感覚がわからなくなることがあります。このような症状は「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」といいます。
見えない人と話している
そこにいない人と話すようなそぶりを見せることがあります。
このような「幻覚(げんかく)」や「幻聴(げんちょう)」もせん妄の特徴です。否定せず聞いてあげましょう。
「急に怒ったり、落ち着かなくなる」
些細なことで怒ったり、落ち着かなくなる「不穏(ふおん)」症状が見られることがあります。お薬をつかって休んでもらうことが、本人の休息につながります。
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せん妄の原因

