終末期に起こる「せん妄」とうまく向き合う方法[後編]
-もくじ-
せん妄の治療と対処法
くすりとやさしさで、心を守る
せん妄は本人にとっても家族にとってもつらい症状です。終末期せん妄は回復することがないとはいえ、つらい症状を和らげることは可能です。一般的なせん妄であれば、ケアやくすりで回復したり回復が早くなったりします。
「くすりを使う方法」と「くすりを使わない方法」の2つの方法について説明します。
根本原因の除去と薬を使う方法
Addressing the underlying cause and using medication
せん妄を引き起こす要因
その人の持つなりやすさ
高齢、脳血管疾患の既往、認知症より悪化させる要因
病気そのもの、入院など環境変化、心理ストレス、強い痛み、不眠、昼夜逆転直接の原因
薬物(強い痛み止めや眠剤)、脳の病気、身体の病気(脱水・感染・電解質異常)
せん妄のときに使うくすり
因子を減らすことを目的に使われる薬
・痛み止め
・眠剤
・病気の悪化を抑えるための薬せん妄の症状緩和のためによく使われる薬
・ハロペリドール(気持ちを落ち着かせる薬)
・ミダゾラム(眠りを促す薬)
くすりは、くすりを使わない方法と同時に行っていくことが基本ですが、必要な時には使うことで本人の症状が楽になります。特に、終末期せん妄では、症状の改善が十分にできない場合はお薬でゆっくり休んでもらう手段をとることもできます(鎮静:ちんせい)。

~医師からのお役立ちコメント~
息苦しさのせいでせん妄になってしまった患者さんがいました。呼吸を楽にする薬だけでは十分に夜に眠ることができずにいたため、時間の感覚が無くなり混乱されていました。まずは夜だけ眠れるようにミダゾラムのお薬を使ったところ、本人は夜によく眠れたと話され、それを聞いたご家族もほっとされたような表情でした。
数日たって、日中も苦しいのでもう休ませて欲しいと本人から希望があり、ご家族もそれに同意されたため、夜だけ使っていたミダゾラムを昼間も続けて使いはじめました。ご家族は、ゆっくり寝ている本人のそばで談笑しながら数日間を過ごされ、穏やかにお別れまでの時間を過ごされました。
環境調整と
薬を使わない方法のアプローチ
non-pharmacological approaches
安心できる空間が、こころの安定をつくる
せん妄は、まわりの環境の変化によって起こることもあります。
知らない病室で、知らない人に囲まれているかのように感じて不安になってしまいます。
せん妄を和らげる「環境の整え方」
時計やカレンダーを見えるところに置く
カーテンをあけて、昼と夜の光の差を感じられるようにする
いつも観ているTVやラジオを流す
家族の写真や、なじみのある小物を置く
ちょっとした工夫で、「ここは安心していい場所だ」と感じてもらえるでしょう。
せん妄を和らげる工夫とケア方法
Ways to Reduce Delirium and Provide Supportive Care
「ここはどこ?」「今はいつ?」に応えてあげる
せん妄になると、「ここがどこなのか」「何時なのか」がわからなくなることがあります。これを「見当識(けんとうしき)の障害」と言います。
毎日同じタイミングに声かけやケアをすることで、体内リズムを整える
「今日は〇月〇日、〇曜日だよ」とはっきり伝える
時計やカレンダーを大きくわかりやすく表示する
せん妄を和らげる「声のかけ方、接し方」
本人は「わけがわからなくて怖い」と感じています。「今ここにいるあなたは安全だよ、安心して大丈夫」と、言葉と振る舞いで伝えてあげることが大切です。
ゆっくりていねいに話す
相手の目を見て、安心させるような口調で話す
「大丈夫だよ」「そばにいるよ」と、安心させてあげる
同じ質問をされても、そのつど優しく答える
つじつまの合わない内容を指摘しない
「安心していいよ」と心で伝えることが、薬よりも大きな力になることもあるでしょう。
【次ページ】
せん妄のときに家族ができること

