大腸がんによる腹膜播種(ふくまくはしゅ)の治療法と選択肢
審査腹腔鏡検査
Diagnostic laparoscopy
画像検査では検出が難しい微小な播種病変や、腹腔内の正確な状況を把握するために行われるのが、全身麻酔下で腹部に小さな切開を加え、そこから内視鏡(腹腔鏡)を挿入し、腹腔内を直接目視で観察する審査腹腔鏡検査です。これは腹膜播種の広がり具合を判断したり、外科的切除が可能かどうかを正確に評価し、その後の治療方針を決定するためにとても大切な診断法になります。
肉眼で内臓や、腹膜の表面のひだ、隙間をくまなく確認することで、画像検査では見逃されがちな数ミリ単位の小さな播種も発見できる可能性が高まります。疑わしい組織があれば、その場で生検を行い、がん細胞の有無を確認することで診断を確定させることができます。
二次的所見
secondary findings
CTスキャンやPET-CTといった画像検査は、腹膜播種の診断において中心的な検査となりますが、すべての腹膜播種病変を確実に検出できるわけではなく、画像検査では見つけにくい場合もあり、医療者は腹膜播種の可能性を疑うために直接がんの塊が見えなくても、間接的に腹膜播種を示唆する「二次的所見」に注目をします。
ここでは「二次的所見」として注目する点についてお伝えしていきます。
最も一般的な二次的所見の一つです。腹腔内に異常な量の体液が溜まっている場合、がん細胞が腹膜から分泌物を出しやすくなっている可能性や、腹膜のリンパ管ががんによって閉塞している可能性が考えられます。CTスキャンなどでわずかな腹水が確認されたときは、慎重な対応が望まれます。
お腹の脂肪の膜(大網)は腹膜播種が発生しやすい部位の一つと言われており、画像検査でこの膜が異常に厚くなっていたり(肥厚(※4))、膜の一部に小さなしこり・塊が見られる場合に播種を疑います。
※4:肥厚
細胞や組織・壁などの部分が本来の厚さ以上に増すことをいいます。
腹膜播種が進行すると、腸管が癒着・圧迫で詰まってしまうことがあります。腸管が詰まり、腸閉塞を起こし、腸管が拡張している場合、腹膜播種を疑います。
腹膜播種の治療法
腹膜播種への治療法は標準的な治療はもちろん、新たな治療法も研究・実践されています。この章では、大腸がんにおける腹膜播種の様々な治療法について、それぞれの効果と課題、そして最新の治療について解説していきます。
標準治療:手術療法と化学療法
Standard treatment: surgical therapy and chemotherapy.
大腸がんによる腹膜播種に対する標準治療は、主に手術療法と化学療法(抗がん剤治療)の組み合わせが中心となります。手術療法では腹膜播種が起きているところを可能な限り切除し、目に見える全てのがん組織を取り除く「減量手術(cytoreductive surgery:CRS)」を目指します。これによりがんの総量を減らし、その後の化学療法の効果を高めることが期待されます。
化学療法(抗がん剤治療)は、手術で取り切れなかったがん細胞や、全身に散らばったがん細胞を攻撃するために行われます。飲み薬や点滴で投与され、がんの増殖を抑え、病状の進行を遅らせることが期待されます。
【課題】
患者さんの全身の状態によっては手術そのものがリスクとなり、手術が適応にならない場合があります。
また、切除ができても、目に見えない微細ながん細胞が残存し、そこから再発してくるリスクは残ります。
化学療法(抗がん剤)により吐き気、脱毛、倦怠感、しびれなど様々な副作用が引き起こされるために、患者さんの生活の質(QOL)に影響する可能性があります。
最新の治療
Latest treatments
大腸がんの腹膜播種に対する治療を考える際、保険診療により科学的根拠の確立した標準治療が基本として提供されます。一方で、すべての新規治療や個別化医療が保険制度に即時に反映されるわけではありません。
そのため、先進医療や臨床研究、自由診療などを、標準治療を基本として組み合わせていくことで、治療の選択肢が広がり、患者さんの生活の質(QOL)維持が得られる可能性が高くなります。
大腸がんの腹膜播種は難治性の病態であるため、標準治療に加えてさらなる治療効果を目指す研究が世界各国で行われており、代表的なものとして「温熱療法」と「遺伝子治療」が挙げられます。ただし、この2つについては、学会報告や論文報告で肯定的なものもありますが、現時点では科学的根拠(エビデンス)に乏しいと判断されており、標準治療として行われるものではないのも実情ですが、多種様々な自由診療でのがん治療と比べると、有益な可能性を秘めています。あくまでも治療法の一つとして、以下はご参考にして頂ければ幸いです。
温熱療法は、「腹腔内温熱化学療法(HIPEC)」といって、腹腔内を一定温度に加温した抗がん剤で洗浄し、残存する微小病変への薬剤浸透と効果増強を狙う治療です。現時点では臨床研究段階であり、特定の条件を満たす限られた施設でのみ実施される治療法です。一方、遺伝子パネル検査に基づく治療は、腫瘍の遺伝子変異を解析して適切な分子標的薬を選択するもので、保険適用となるケースも増えています。
なお、自由診療による治療は全額自己負担となります。そのため、費用や効果、安全性については十分に担当医・主治医と相談し、標準治療との位置づけを確認した上で検討することが重要です。
※「最新の治療」に関する情報は2025年12月1日時点のものです。
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腹腔内温熱化学療法(HIPEC)

