【早期肺がん】手術後の暮らし
【運動】リハビリとしての体力づくり
運動は、肺機能や全身の回復に役立ちます。術後は呼吸が浅くなりやすいため、呼吸リハビリが効果的です。運動はウォーキングやストレッチなど軽めのものから始め、少しずつ負荷を増やしていくことが望ましいでしょう。無理をせず、自分の体調に合わせて取り組むことが大切です。
自宅でできる
呼吸リハビリテーション
Respiratory Rehabilitation at Home
肩の上げ下げ

①椅子に座り、背筋を伸ばしてリラックスする
②鼻から息を吸いながら、胸を張って両肩をゆっくり上げていく
③最大吸気後、口から息をはきながら力を抜いて肩を下ろしていく
※息を吸いきってから、息を吐く
④①の姿勢に戻り、背筋を伸ばしてリラックスする
大腿四頭筋の筋力トレーニング

①椅子の縁を両手で握り、足首のところで両足を交差させる
②下になっている方の足は伸ばし、上の足は膝を曲げる方向に力を入れる
※上になっている足で下側の膝を伸ばすのを押さえるイメージ。
③口をすぼめてゆっくり息を吐きながら6秒間力を入れる。
④足を組み替えて反対側も同様に行い、左右5~10回ずつ行う
※突発的に力を入れず、徐々に力を入れることが大切。体幹筋の筋力トレーニング

①椅子のふちを両手で握り、椅子の縁を上に持ち上げるように力を入れる
②足は床を踏ん張る方向に力を入れる
③背筋を伸ばして立ち上がるようにする
④口をすぼめてゆっくりと息を吐きながら6秒間×5セット行う
※心疾患や高血圧など循環器系の疾患を合併している方は医師に確認してから実施する
呼吸リハビリテーションの目的は、日常生活を少しでも楽に過ごせるようにすることです。また、社会生活にスムーズに戻れるようにすることも目標です。

大石先生のひとこと
以前は、肺がん手術後の運動能力の低下は呼吸機能の問題が原因と考えられていました。しかし最近では、筋肉自体の働きが低下していることも原因のひとつと明らかになっています。手術後の安静や活動量の減少で筋肉量や筋力、持久力が落ち、少し動いただけでも疲れやすく、息切れしやすくなるのです。
術後は主治医から特に制限がなければ、できるだけ早くリハビリを開始することが推奨されています。そのため、病院では術後早期から離床を行い、理学療法士も術前から介入し、手術当日または翌日からリハビリテーションを行っています。早期に運動を始めることで、体力の低下を防ぎ、日常生活への回復もスムーズになります。
【仕事】復職に向けた準備
復職のタイミングは、体力や肺機能の回復具合を見て主治医と相談のうえ決めることが安心です。すぐにフルタイムで働くのではなく、短時間勤務や在宅勤務など柔軟な働き方を取り入れると無理がありません。
仕事をしながら治療をしている人も多くいらっしゃいます。復職前には職場と話し合い、体調に応じた業務内容や勤務形態を整えることが、長く働き続けるためのポイントです。
まとめ
肺がん手術後の生活は、食事や運動、睡眠といった日常の工夫を積み重ねることで、体力だけでなく心の安定も育まれていきます。
肺がん手術後の50代の男性患者さんは、息切れや倦怠感が強く、歩行距離も短く日常生活が制限されており援助を要する状態でした。すぐに理学療法士が介入し、軽い運動から開始し、呼吸リハビリとして口すぼめ呼吸や呼吸筋ストレッチ・筋力トレーニングを毎日取り入れました。
最初は数分歩くだけで息が上がり疲れやすいため、ご本人も「これ以上できない」と感じていらっしゃいました。歩けた距離を数値化して目で確認できるようにし、昨日より少しでも長く歩ければ自分を褒めることにしました。
1カ月ほど経過すると、日常生活での動作が楽になり、階段や買い物の負担も感じにくくなりました。3カ月経過するころには趣味の散歩や庭仕事も再開できるようになり、「手術後にここまで回復できると思わなかった」と笑顔で話されました。
このように、無理のない範囲で少しずつ運動量を増やすことが、術後の体力回復や生活の質の向上につながります。毎日の運動は小さな積み重ねですが、昨日の自分より少しでもできることに目を向けて、運動を続けることで、気持ちも前向きになれることを実感しました。
焦らず自分のペースを大切にしながら、主治医や医療スタッフと相談し、安心できる生活を整えていきましょう。

