大腸がん薬物療法の最新治療薬ガイド
大腸がんになる人は、日本でも近年少しずつ増えています。一方で、医学の進歩により治療の選択肢は大きく広がってきました。なかでも、手術と並ぶ主要な治療法である薬物療法は、進行がんの長期生存や生活の質(QOL)の維持に大きく貢献しています。本記事では、薬物治療の主役となる化学療法(抗がん剤)から、がん細胞を狙い撃つ分子標的薬、そして免疫の力を高める免疫チェックポイント阻害薬まで、最新の薬物療法をわかりやすく解説します。
「もくじ」
大腸がん薬物療法の目的
大腸がんの薬物療法は幅広く、患者さん一人ひとりの状態やがんの進行度に応じて、その役割が異なります。大腸がんの薬物療法には、主に「がんの縮小」「再発予防(術後補助化学療法)」「症状緩和」の3つの目的に分けて治療が行われ、様々な薬剤が用いられます。薬物療法では、単にがんを小さくするだけではなく、患者さんの生活の質(QOL)を保ちながら、治療効果を最大限に引き出すことを目指します。
本記事では、「がんの縮小」「再発予防(術後補助化学療法)」について主に説明をしていますが、「症状を和らげること(症状緩和)」というもう一つの大切な目的についても触れています。
症状を和らげるためには、2つの方法があります。痛みなどを和らげる『支持療法』と、がんを小さくして圧迫などの症状を軽くする『薬物療法』です。支持療法では、痛み止め・吐き気止めなどの症状管理薬を組み合わせて用います。症状緩和を目的とした薬物療法では、生活の質(QOL)を保つことを目的に、抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬が用いられ、がんの進行を抑えつつ副作用を管理しながら患者さんの心身の負担を軽減する役割を持っています。
支持療法と薬物療法は、患者さんの状態や希望に合わせ、医師と連携して適応のバランスを取りながら、治療の両輪として用いられます。
薬物療法の
主要な3つのアプローチ
Three main approaches to pharmacotherapy
大腸がんの薬物療法には主に、以下の3つのアプローチがあります。
化学療法(細胞障害性抗がん剤)
分子標的薬
免疫チェックポイント阻害薬
がんの性質や進行度、患者さんの状態に応じて、これらを単独または組み合わせて用いることで、最適な治療方針が立てられます。
大腸がんにおける化学療法(細胞障害性抗がん剤)
大腸がんの薬物療法の中でも、古くから基盤となってきたのが「化学療法(細胞障害性抗がん剤:従来からの基本的な抗がん剤)」で、細胞の増殖を阻害する作用を持つ薬剤を用いて、活発に分裂・増殖するがん細胞を直接攻撃し、死滅させることを目的としています。がんの縮小や転移の抑制、手術後の再発予防など、多様な治療目的に応じて用いられ、多くの場合、他の治療法と組み合わせて効果を高めます。ここでは、化学療法(細胞障害性抗がん剤)の主な治療計画(レジメン)で使用される薬剤の種類について説明していきます。
主な化学療法(従来からの基本的な抗がん剤)で使用される薬剤
Drugs used in standard chemotherapy
(conventional, foundational anticancer agents)
がん細胞は、増えるスピードが速いという特徴があります。この特徴を利用して攻撃する、治療の土台となるのが化学療法です。化学療法は複数の薬剤を特定の順序とスケジュールで組み合わせる「レジメン」と呼ばれる治療計画に従って行われます。大腸がんの治療では、代表的なレジメンとして「FOLFOX(フォルフォックス)療法」「FOLFIRI(フォルフィリ)療法」「XELOX(ゼロックス)療法」などがあり、がんの進行度や患者さんの全身状態、過去の治療歴などに基づいて選択されます。これらの治療では、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響が及ぶため、様々な副作用が現れる可能性があり、これらの副作用を軽減するための支持療法(※1)が同時に行われ、患者さんの負担を和らげながら治療が行われます。
※1:支持療法
がん治療における身体的・精神的な副作用や合併症を軽減し、患者さんの生活の質(QOL)を維持・向上させるための補助的な治療やケアのことを言います。
【主に使用される薬剤について】
5-FU(フルオロウラシル)
がん細胞のDNAの働きを妨げて、がん細胞の増える力を抑える薬です。ロイコボリン(フォリン酸)
5-FUの効果を増強させる働きがあります。オキサリプラチン(エルプラット)
DNAに直接作用してがん細胞を死滅させます。イリノテカン(カンプト)
がん細胞のDNA複製を妨げます。カペシタビン(ゼローダ)
5-FUと同様の作用を持つ経口薬で、
自宅で内服が可能です。
【次ページ】
主な化学療法(細胞障害性抗がん剤)で使用される薬剤】

