家族で看取る「穏やかな最期」 Peaceful end-of-life care" with family members
家族で看取る「穏やかな最期」
Peaceful end-of-life care" with family members
病気別のケア / 病気別のケアカテゴリ一覧
08/17 (月) 07:51更新

遺伝性大腸がん、あなたも影響を受ける?

Could you be affected by hereditary colorectal cancer?
医師 喜田凛
卒後20年目の医師、初期・後期臨床研修後、各地で研鑽を積んだ後、現在は某地方病院消化器内科部長を務めている。消化器疾患・消化管内視鏡分野の診断・治療を担当し、日々患者さんの病に一緒に立ち向かっています。
4 / 5ページ
1 2 3 4 5

遺伝子検査(血液検査)

genetic test using a blood sample

大腸がんの遺伝子検査では、この血液中の細胞からDNAを取り出し、がんの発生に関わる特定の遺伝子に、生まれつきの変異がないかを調べ、「がんになりやすい遺伝的な体質を持っているかどうか」を明らかにしていきます。


【家族性大腸腺腫症(FAP)とリンチ症候群が疑われた際に調べられる遺伝子】

家族性大腸腺腫症FAP

リンチ症候群

調べる遺伝子

APC遺伝子

ミスマッチ修復遺伝子群

MLH1MSH2MSH6PMS2など)

目的

がんを抑制するAPC遺伝子に、生まれつきの変異がないかを確認します

DNAコピーミスを修復するこれらの遺伝子に、生まれつきの機能不全がないかを確認します

【検査結果の解釈】

結果の種類

説  明

陽性

「原因となる遺伝子変異が見つかった」ということになり、遺伝性大腸がんであることが確定診断されます。今後は、その結果に基づいた定期的な経過観察(サーベイランス)の予定を立てていくことになります。

陰性

「調べた範囲では、原因となる遺伝子変異は見つからなかった」を意味しますが、これで安心とは限りません。

●家族の中に、すでに「原因遺伝子」が見つかっている場合は、その遺伝子を調べて「陰性」だった場合、自分には受け継がれなかったという事を意味しており、非常に信頼性の高い「安心材料」となります。

●家族の中で、ご自身が初めて遺伝子検査を受けた場合は、「今回調べた範囲の遺伝子の中には、異常は見られなかった」ということを意味しており、まだ発見されていない未知の遺伝子が原因の可能性や、今回の検査項目に含まれていない、別の遺伝子が原因の可能性が残ります。

VUS

(判断できないグレーゾーン)

「現時点では、病気の原因かどうか判断できない(グレーゾーン)、という結果となりますが、これは珍しい事ではありません。将来、研究が進むことで「陽性」または「陰性」に分類が変わる可能性があり、VUSと判定された場合は、専門家と相談しながら家族歴などを基に、慎重に今後の方針を決めていくことになります。

 

定期的な経過観察
(サーベイランス)の重要性

The importance of regular monitoring and surveillance

一般的な大腸がんの場合、「40歳になったらがん検診」と考えますが、遺伝性大腸がんではその常識は通用しません。がんになるスピードが速い傾向があり、非常に若い年齢で発症するリスクがあり、さらに大腸以外の臓器にもがんができるリスクが高く、遺伝的リスクは生涯続くため、「何もない状態」を定期的に確認し続けることが一番重要となります。

ここでは、家族性大腸腺腫症(FAP)とリンチ症候群の具体的な経過観察(サーベイランス)の例をご紹介します。経過観察(サーベイランス)の内容はあくまで一般的な目安のため、実際には個々の家族歴や状況に応じて主治医と相談しながら最適な計画をたてていきます。

 

家族性大腸腺腫症(FAP)の場合

ポリープを放置するとがん化する確率が高まるため、がんになる前に発見し、適切なタイミングで治療(予防的大腸切除術)を行うことが目的となります。


【具体的な経過観察(サーベイランス)の内容】

大腸内視鏡検査

10代前半1012歳頃)から毎年1

上部消化管内視鏡検査

(胃カメラ)

20代から13年ごとに検査(胃や十二指腸のポリープを監視するため)

 

リンチ症候群の場合

がん化のスピードが速いこと、そして大腸以外のがんリスクに対応することが目的となります。


【具体的な経過観察(サーベイランス)の内容】

大腸内視鏡検査

20代前半2025歳頃)から12年ごとに検査

(一部遺伝子型により、開始年齢が異なる)

婦人科検診

(子宮体がん・卵巣がん)

30歳頃から毎年1(経腟超音波検査など)

上部消化管内視鏡検査

(胃カメラ)

ピロリ菌の検査・除菌を行い40歳頃から23年ごとに検査

腹部超音波検査や尿検査

(腎盂・尿管がんなど)

3035歳頃から毎年1

 

検査費用

ここでは、「遺伝カウンセリング」「大腸内視鏡検査」「遺伝子検査(血液検査)」それぞれの検査項目にわけて、公的保険適用で受けられる場合と自費負担になる場合の検査費用について、おおよその費用の目安をお伝えします。
金額はあくまで目安で、医療機関や検査内容によって変動しますので、あくまでも参考指標として頂ければと思います。

 1.遺伝カウンセリング費用

保険適用

※基本的に遺伝カウンセリングには保険適用はありません(自費診療)

自費診療

1回約10,000円~20,000円程度

※検査の前後に複数回必要になることがあります。

※医療機関により異なります

2.大腸内視鏡検査費用

状況

費用の目安3割負担の場合)

保険適用

腹痛や血便などの症状がある、便潜血検査で陽性になった、など医師が必要と判断した場合

観察のみ:
5,000円~10,000

ポリープ切除あり:
20,000円~30,000

※切除するポリープの数や大きさで金額は変動します。

自費診療

症状はないが、人間ドックなどで自発的に受ける場合

20,000円~40,000

※医療機関により異なります。

3.遺伝子検査(血液検査)の費用

保険適用

ある特定の医学的な条件
(例:MSI検査(※2)陽性の大腸がん患者など)を満たしたときのみ、リンチ症候群の遺伝子検査が保険適用となります。(症状・病気がない場合は自費診療となります)

費用は3割負担で約60,000円程度

自費診療

単一遺伝子検査の場合(家族で原因遺伝子が判明している場合など)
約50,000円~100,000円

多遺伝子パネル検査(複数の遺伝子を一度に調べる場合)
約100,000円~300,000円

※医療機関により異なります。

※2:MSI検査
手術や内視鏡検査ですでに採取した「がんの組織」を使い検査を行います。この検査をすることにより、がんを攻撃する薬(免疫チェックポイント阻害薬)が効きやすいかがわかり、リンチ症候群の可能性がわかります
 

 

【次ページ】

専門家への相談先

医師 喜田凛=監修