家族で看取る「穏やかな最期」 Peaceful end-of-life care" with family members
家族で看取る「穏やかな最期」
Peaceful end-of-life care" with family members
病気別のケア / 病気別のケアカテゴリ一覧
08/17 (月) 07:51更新

遺伝性大腸がん、あなたも影響を受ける?

Could you be affected by hereditary colorectal cancer?
医師 喜田凛
卒後20年目の医師、初期・後期臨床研修後、各地で研鑽を積んだ後、現在は某地方病院消化器内科部長を務めている。消化器疾患・消化管内視鏡分野の診断・治療を担当し、日々患者さんの病に一緒に立ち向かっています。
2 / 5ページ
1 2 3 4 5

家族集積性大腸がん

familial aggregation of colorectal cancer

家族集積性大腸がんとは、現在の遺伝子検査では原因となる特定の遺伝子変異は見つからないものの、血縁者の中に大腸がんになった人が複数いるケースを指します。

大腸がん全体の約15~20%を占めると考えられています。これは家族歴があるものの、原因遺伝子が特定できていないものを指し、まだ解明されていない複数の遺伝的な要因(がんになりやすい体質)と、家族で共有する食生活や喫煙・飲酒といった生活習慣の両方が組み合わさり発症リスクを高めているがんと言われています。

このタイプのがんは、遺伝子検査でリスクを判断することが難しいため、ご自身の家族歴(誰が、何歳で、どのがんになったか)を正確に把握しておくことが何よりも重要となります。そのうえで、一般的な推奨年齢よりも早めに大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けるなど、積極的な対策を行うことが重要とされています。

 

遺伝性大腸がんのセルフチェックリスト

遺伝性大腸がんのリスクは、専門的な検査を受けなければ確定できませんが、その前にご自身でリスクの高さをある程度推測することは可能です。ここでは、ご自身の血縁者にどのような病歴の方がいるのかを確認するための、具体的なセルフチェックリストをご紹介します。

 

家族歴で確認すべき
5つのポイント

5 Key Points to Check in Family History

遺伝性大腸がんのリスクを考える上で、ご自身の血縁者(親子、兄弟姉妹、祖父母、おじ、おば、いとこ等)の病歴がある「家族歴」の確認が最も重要です。

次の5つのポイントに当てはまるものがないか、セルフチェックリストをご確認してみてください。

【家族歴を確認する5つのセルフチェックリスト】

  • 50歳未満の若さで大腸がんになった血縁者がいる
    一般的な大腸がんは60代以降に増えますが、50代未満での発症は遺伝的要因が関わっている可能性を示す重要なサインです。

  • 親子や兄弟姉妹など、近しい血縁者の中に大腸がんになった人が3人以上いる
    特に第一度近親者(親、子、兄弟姉妹)に患者が多い場合は、リスクが高いと考えられます。

  • 親子、祖父母と孫のように、2世代以上にわたって大腸がんになった血縁者がいる
    世代を超えてがんが発症している場合も、遺伝的な要因が考えられます。

  • 一人の血縁者が、大腸がんと一緒に他の関連がん(特に子宮体がん、卵巣がん、胃がん、小腸がんなど)も発症している
    これは「リンチ症候群」を疑う特徴的なサインの一つです。ご自身や血縁者に複数の異なるがんの経験がある場合も含まれます。

  • 血縁者の中に、大腸ポリープが100個以上見つかった人がいる・ポリープで外科手術(大腸全摘術)を受けた人がいる
    これは「家族性大腸腺腫症(FAP)」を疑う特徴的なサインです。

一つでも当てはまるからといって必ずしも遺伝性の大腸がんというわけではなく、いくつかが当てはまるとより、疑わしくなっていきます。遺伝性大腸がんのリスクを判断するための一つの目安として参考にしてみてください。

 

遺伝子検査から経過観察までの流れ

遺伝性大腸がんが疑われる場合、まず遺伝カウンセリングで専門家と相談し、その上で内視鏡検査や遺伝子検査などを検討していきます。

とても慎重な判断が必要となるため、ここではその具体的な流れと、各ステップで知っておくべき重要なポイントを解説します。

近年、遺伝性大腸がんの検査では、関連する遺伝子を数十から数百個まとめて一度に調べる「多遺伝子パネル検査」が主流になっています。

この検査では、原因がはっきりしない場合でも、一つずつ調べる手間を省いて効率的に原因遺伝子を探せるのが大きなメリットです。これまで診断が難しかった非典型的なケースでも原因が見つかる可能性が高まります。

ただし、日本では保険適用が限定されており、臨床研究や特定の疾患で治療上の目的で利用が広がっている検査です。逆に言えば、患者さんが希望する、だけでは自費診療扱いとなり、高額な費用がかかることもあります。加えて、大腸がんを調べる目的だったのに、乳がんなど全く別の病気の遺伝子リスクが見つかる「二次的所見」が起こり得る可能性があり、将来の健康管理に役立つ一方、予期せぬ情報に直面する可能性もあり、検査前のカウンセリングでは「他の病気のリスクも知りたいですか?」という意思確認が必ず行われます。とても複雑でセンシティブになりうる情報を扱うため、通常の消化器病などの専門医だけでなく、遺伝を専門に扱うエキスパート(臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー)との遺伝カウンセリングで十分に理解を深めることが大切です。

こうした背景を踏まえて、以下では遺伝子検査について具体的な検査の流れを説明していきます。
 

【喜田先生のワンポイントアドバイス】

遺伝子検査は患者さんが希望されても、簡単に適応できる検査ではありません。結果の解釈が複雑であり、極めてセンシティブで知らなくてもいいことまでつまびらかにしてしまう可能性を秘めており、結果の解釈と、その結果を受けた患者さんの心のケアまで要する可能性があります。そのため、遺伝子検査は、遺伝子のエキスパートが在籍している、遺伝疾患の専門性が高い施設で受けるべきであると考えます。合わせて非常に高額な検査でもあるため、厳密な保険の適応の判断が医師側にも求められています。


 

【次ページ】

遺伝カウンセリング

医師 喜田凛=監修
2 / 5 ページ