ステージ別大腸がんの治療
【ポリペクトミー・EMRの流れ】
前処置(腸をきれいにする)
治療の前日や当日の朝から、下剤(腸管洗浄剤)を約1~2リットル服用し、腸の中を空っぽにしますが、適切な前処置は非常に重要です。便が残っていると小さな病変を見落としてしまったり、安全な治療ができず、治療延期などの事態も起こることがあります。各医療機関の前処置の指示を守るようにしましょう。内視鏡の挿入と、病変の観察
医師はモニターで大腸の内部を隅々まで観察しポリープを探します。見つかったポリープは、大きさ、形、表面の模様を詳しく観察し、切除が必要かどうかを判断するとともに、切除する方法を検討します。病変切除
内視鏡の先端から「スネア」と呼ばれる輪っか状の細いワイヤーを出し、病変の根元にかけて締めつけ、ポリペクトミーの場合は電流を流しそのまま焼き切ります。EMRの場合は内視鏡の先端から細い針を出し、病変の下の層(粘膜下層)に生理食塩水やヒアルロン酸などの液体を注入し、人工的にこぶを作った後に根元をスネアで締めつけ、焼き切ります。
大腸の粘膜は痛みを感じないため、適切な治療が行われた時は切除の痛みはほぼ感じません。病変の回収と止血処置
切除した病変は、内視鏡の先端で吸引したり、専用の器具を使って、原則回収し、病理検査で詳しく分析されます。切除した創部(※1)からの出血がないか、創部に血管断端が露出していないかを確認し、必要時に止血処置を追加した後に処置を終了します。
※1:創部
内視鏡治療にともなってできた傷口のことをいいます。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
Endoscopic Submucosal Dissection (ESD)
主に内視鏡的粘膜切除術(EМR)では切除が難しい大きさの病変が対象となる方法が粘膜下層剥離術(ESD)です。EMRと同様に粘膜下層に薬液を注入した後に、ESD用の電気メスを内視鏡先端から出して、病変の周りを少しずつ切開し、粘膜下層を丁寧に電気メスで剥離していきます。病変の大きさが、EMRでの治療が困難なものであったとしても、ESDでは一括でまとめて切除(一括切除)できる可能性が高くなります。
しかしEMRと比べ非常に高度な技術と、術者の経験を要する手技であるため、実施できる医師・医療機関は限られています。また、病変の大きさによりますが治療時間はEMRに比べ長くなりますが、その安全性は高く、多くの場合入院下で安全に行われます。
【内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の流れ】
前処置・内視鏡の挿入
ポリープ切除術(ポリペクトミー)と同様の処置を行います。マーキング(印付け)
全例ではありませんが、時に切除する範囲を明確にするため、電気メスで病変の周りに小さな点を打ち(マーキング)、切除の目印とすることがあります。粘膜下層への液体注入
EMRと同様、病変の下の粘膜下層にヒアルロン酸などの薬液を注入し、粘膜下層と筋層の間にクッションを作り、高周波を用いた切開・剥離操作の準備をします。粘膜切開・粘膜下層剥離
マーキングしたラインに沿って、電気メスで病変の周囲の粘膜を全周にわたり切開し、続いて粘膜下層の剥離を行います。手技中は血管からの出血を処理しながら少しずつ病変を剥がしていきます。切除完了と回収、止血
切除した創部の血管に対して処置を加えたり、創部を閉創といって止血用クリップなどで閉じ、術後の出血の対策を行います。その後はポリペクトミーやEMRよりも大きな切除検体を回収し、病理検査に提出します。
ステージⅠの一部〜III:手術が主体となるがん
ステージIの中でもがんが筋肉の層まで達している場合や、それを超えて壁の外まで広がっているステージII、さらにリンパ節への転移が認められるステージIIIは、「進行大腸がん」に分類されます。
この段階のがんは、早期大腸がんとは異なり、内視鏡で切除しようとすると壁に穴が開いてしまう(穿孔)リスクが非常に高くなります。そのため、治療の基本は、がんのある腸管と転移の可能性がある周囲のリンパ節をまとめて取り除く「外科手術」となります。そして、手術後に切除した組織を病理検査で詳しく調べ、再発リスクが高いと判断された場合には「術後補助化学療法(抗がん剤治療)」の追加を検討します。
【次ページ】
外科手術

