家族で看取る「穏やかな最期」 Peaceful end-of-life care" with family members
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06/30 (火) 09:57更新

大腸がんの進行速度について知っておきたいこと

Things you should know about the progression rate of colorectal cancer
医師 喜田凛
卒後20年目の医師、初期・後期臨床研修後、各地で研鑽を積んだ後、現在は某地方病院消化器内科部長を務めている。消化器疾患・消化管内視鏡分野の診断・治療を担当し、日々患者さんの病に一緒に立ち向かっています。
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治療の効果を高めるためにできること 

病院での治療と合わせて、日々の生活習慣を整えることは、体力や免疫機能を維持し、治療を受けやすい身体づくりにつながります。食事や運動などの健康的な習慣は、再発や予後の改善に関連するという報告もあり、治療の効果を支える「応援団」の役割を果たす可能性があります。ただし、生活習慣の改善だけでがんの進行を直接止められるわけではないため、主治医の治療方針と併せて取り組むことが重要です。

 

食事

meal

~意識したい食事のポイント・具体例~

① 野菜や果物を積極的に摂る

野菜や果物には食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質(ポリフェノールなど)が豊富に含まれています。特に食物繊維は便通を整え、腸内環境を改善するのに役立ちます。また、抗酸化物質は、がん細胞の増殖に関わる活性酸素の働きを抑える効果が期待されています。

具体例:1日に野菜350g以上、果物200g程度が目安とされています。
 

➁ 食物繊維を意識して摂る

便量を増やして腸の働きを活発にし、便秘を予防・改善します。また、腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増やして腸内環境を整える効果があります。

具体例:玄米、麦ごはん、全粒粉パン、豆類(大豆、納豆、豆腐など)、いも類、ごぼう、きのこ類など
 

③ 赤肉(牛肉、豚肉など)や加工肉(ハム、ソーセージなど)の摂取は控えめに

世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、赤肉や加工肉の過剰摂取が大腸がんのリスクを高める可能性があると報告しています。

具体例:週に数回程度にとどめ、赤肉の代わりに鶏肉や魚、大豆製品などをバランス良く取り入れた献立を心がけると良いでしょう。
 

脂肪の摂りすぎに注意し、質を選ぶ

高脂肪食は腸内環境を悪化させる可能性があります。特に動物性脂肪の摂りすぎには注意が必要です。

具体例:揚げ物や脂身の多い肉は控えめに。魚に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸や、オリーブオイルなどの植物性油へ変えていくことがおすすめです。
 

⑤ 発酵食品を摂り入れる

ヨーグルト、納豆、味噌、キムチなどの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が含まれており、腸内環境を整えるのに役立ちます。

具体例:毎日の食事に追加の1品として、少しずつとり入れるのが理想的です。
 

⑥ よく噛んで食べる

消化を助け、満腹感を得やすくすることで食べ過ぎを防ぎます。
 

⑦ アルコールは適量を守る(または控える)

アルコールの過剰摂取は、大腸がんを含む多くのがんのリスクを高めます。

具体例:主治医と相談の上で摂取量を決めましょう。禁酒が望ましい場合もあります。
 

塩分の摂りすぎに注意する

高塩分食は胃がんのリスクを高めることで知られていますが、バランスの取れた食事という観点からも減塩は重要です。

以上で述べてきた食生活は、大腸がん全般において健康維持や治療の支えとなる可能性がありますが、がんの大きさや進行度、治療の内容や副作用の状態によっては、一部の食品や栄養素を控えたほうがよい場合もあります。そのため、食事療法を始める際は、必ず主治医や病院内のがん相談支援センターに相談し、必要に応じて管理栄養士などの専門スタッフと一緒に、自分に合った安全で無理のない方法を見つけることが大切です。
 

《食事療法の注意点》

・自己判断で極端な食事制限をしないこと。

特定の食品だけを食べる、あるいは完全に避けるといった極端な食事療法は、栄養バランスを崩し、体力を低下させる可能性があります。

・治療中の副作用に配慮する

抗がん剤治療中などは、吐き気や食欲不振、味覚の変化などが起こることがあります。無理せず食べられるものを、食べられるときに摂ることが大切です
 

【☝喜田先生のワンポイントアドバイス】

特に野菜や海藻などの食物繊維を多く含む食材は、進行した段階で腸管に狭窄をともなう場合や、術後・治療後の一部の患者さんで推奨されないときもあります。主治医や管理栄養士からの指示に従うようにしてください。

 

運動

motion

大切なこと

運動習慣は、体力維持や治療効果のサポートにつながる可能性があります。ただし、がんの進行状況や治療による副作用、体力の程度によって安全に行える運動は異なります。身体の状態に合った運動を、無理のない範囲で追加することが大切です。

必ず主治医やリハビリの先生(理学療法士)、運動の専門家とよく相談し、自分に合った運動の種類や量を決めることが、最も安全で効果的です。


〈推奨されている具体的な運動例〉

少し息がはずむくらいの有酸素運動

早歩き、自転車こぎ、水泳など

130分、1週間に合計2時間半くらいが目標

しっかり息が上がる有酸素運動

ジョギングなど

1週間に合計1時間15分くらいが目標

筋力トレーニング

腕立て伏せ、スクワット、軽いダンベル体操など

1週間に2回以上できると更に良いです

※日常生活の中でもこまめに体を動かすことも大切です。具体的には、エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩く、家事や庭仕事などで体を動かすなど、日常生活の様々な場面で体を動かす事を意識することで、無理のない範囲で継続して体を動かすことができるのではないでしょうか?
 

【☝喜田先生のワンポイントアドバイス】

食事や運動だけで大腸がんを治そうと考える方もいらっしゃいます。しかし、大腸がんの治療は、まず病院で行う「標準的な治療」が基本です。食事や運動は、その治療の効果をより高め、体調を整えるために、ご自身でできるサポートとして取り入れていただくのがおすすめです。

 

まとめ

本記事では、大腸がんの進行速度が年齢や体質、生活習慣によって大きく異なることを解説しました。進行速度は、がん細胞の性質(分化度など)や遺伝子変異、発生部位、そして発見時のステージなど、多くの要因が複雑に関係して決まります。一般的に、ステージ0のようなごく早期がんは年単位で進行することが多く自覚症状もほとんどありませんが、ステージⅠでも腫瘍の性質によっては進行が比較的早い場合があります。そのため、早期と診断されても速やかに治療方針を決定することが重要です。ステージが進むにつれて進行は速まり、血便や腹痛、体重減少といった症状も現れやすくなります。

病院での適切な治療と並行し、バランスの良い食事や適度な運動といった生活習慣を整えることは、体力を維持し、治療を支える上で大切です。何よりも重要なのは、定期健診による早期発見と、診断後はご自身の状態を正しく理解し、主治医と十分に話し合って納得のいく治療を選択することです。この記事が、皆様の不安を和らげ、前向きに病気と向き合う一助となれば幸いです。

 

【参考文献】

※1:国立がん研究センター日本人における肉類摂取と大腸がんリスク

※2:世界がん研究基金(WCRF)「食事・栄養・身体活動とがん予防に関する勧告」(pdf)

※3: 国際がん研究機関(IARC)「Carcinogenicity of consumption of red meat and processed meat」

※4:農林水産省「加工肉及びレッドミートの発がん性分類評価について」

※5:国立がん研究センター がん情報サービス 「科学的根拠に基づくがん予防」

※6:Meyerhardt JA, Giovannucci EL, Holmes MD, et al. Physical activity and survival after colorectal cancer diagnosis. J Clin Oncol. 2006 Aug 1;24(22):3527-34. doi:10.1200/JCO.2006.06.0855

 

医師 喜田凛=監修