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06/30 (火) 09:57更新

大腸がんの進行速度について知っておきたいこと

Things you should know about the progression rate of colorectal cancer
医師 喜田凛
卒後20年目の医師、初期・後期臨床研修後、各地で研鑽を積んだ後、現在は某地方病院消化器内科部長を務めている。消化器疾患・消化管内視鏡分野の診断・治療を担当し、日々患者さんの病に一緒に立ち向かっています。
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大腸がんの進行速度に影響する主な要因 

がん細胞の「顔つき」

The "face" of cancer cells

分化度

がん細胞にも、比較的おとなしいタイプと、暴れん坊なタイプがいます。(専門用語では「組織型・分化度:ぶんかど」といいます)

おとなしいタイプは、元の正常な細胞に近い顔つきをしていて、ゆっくり増える傾向があります。一方、暴れん坊なタイプは、元の細胞とは似ても似つかない顔つきで、増えるスピードが速く、周りに広がりやすい傾向があります。この「顔つき」の違いが、進行の速さに影響してくると言われています。

高分化型正常な大腸の細胞に近い顔つきをしており、比較的おとなしい性質で、低分化のものと比べるとゆっくり進行する傾向があります。
中分化型高分化型と低分化型の中間の性質を持ちます。
低分化・未分化型正常な細胞とはかけ離れた顔つきをしており、悪性度が高く、増殖が速く、転移しやすい傾向にあります。進行も早いことが多いです。

 

特殊な組織型

印環細胞がん(大腸の壁の内側(粘膜の下)に沿って、しみ込むように広がっていく性質をもつことがあると言われています)や粘液がんの一部など、特殊なタイプのがんは、進行が速い、あるいは周囲に広がりやすい傾向があると言われています。

 

がんに関わる
特別な「遺伝子の変異」

Special "gene mutations" related to cancer

私たちの細胞は、遺伝子に書かれた設計図どおりに働いています。ところが設計図に「がんを進めるスイッチ」が入る変異が起こると、細胞の増殖にブレーキが掛けられなくなります。大腸がんで重要な変異には、KRAS、BRAFなどがあり、治療への反応性を左右することが知られています。

「遺伝子に特別な変化があるとがんが必ず速く進む」という単純な図式ではありません。変異の種類、腫瘍の場所、免疫環境、治療方法が絡み合って経過が決まります。主治医と相談し、必要に応じて遺伝子検査と専門的な治療選択を受けることが重要です。

 

KRAS 遺伝子・BRAF遺伝子

KRAS は細胞増殖シグナルの上流に位置し、変異が入ると常に活性化することでがん細胞が増殖し続け、ある種の薬剤の効果が弱くなることから、KRAS 変異陽性例はやや予後不良であることが知られています。BRAF遺伝子に変異があると、がん細胞の増殖シグナルが過剰になり、進行が速まる可能性も指摘されており、これらの遺伝子変異の有無は、実際の治療薬の選択に関わってきます。

 

マイクロサテライト不安定性(MSI)

遺伝子の“校正機能”であるMMR(DNAミスマッチ修復)が壊れると、遺伝子の変異が溜まり、dMMR/MSI-H という状態になります。この状態の腫瘍は体の免疫に見つかりやすく、外科切除不能なときや、治療後再発したときも、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいとされています。このタイプの遺伝子変異を持つがんは再発が少ない傾向を示しますが、他の高リスクの遺伝子変異が重なると進行が速くなる場合もあり、専門医の評価が欠かせません。

 

がんが発生した場所

where the cancer started

大腸は右側(盲腸〜横行結腸)と左側(下行結腸〜S状結腸)で便の硬さや腸の太さが違います。そのため、がんの症状や見つかり方に傾向があります。

 

右側結腸がん(上行結腸、横行結腸など)

便が液状で通っていく場所であり、腸の内腔も広いため、がんがかなり大きくなるまでに症状が出にくく、発見が遅れがちです。

慢性的に出血が続くことで、貧血や体重減少などの全身症状で気づかれることや、お腹にしこりを触れて受診することもあります。

 

左側結腸がん(下行結腸、S状結腸など)・直腸がん

便が固まりやすいことに加えて、腸の内腔が狭めであるため、早期から血便や便通異常(便秘・下痢・便が細くなるなど)といった症状が出やすい傾向があります。

直腸がんの場合は便が出きらない感じ、排便時の痛みや血便などを訴えるケースが多くなります。

 

患者さんの免疫状態

Patient's immune status

私たちの体には、がん細胞を異物として認識し攻撃する免疫システムが備わっています。大腸がんの場合もがんの中に入り込んだリンパ球が多いほど、再発率や死亡率が低いとされており、免疫力ががんの増殖を抑える力を持つのは確かです。

ですが、その免疫力の強さは単純にはかれるものではありません。腫瘍のもつ免疫力を抑え込む力、そして腫瘍の遺伝子変異の有無によって大腸がんの進行スピードは大きく異なります。大腸がんと免疫力のせめぎ合いで、がんの進行スピードは変わってくるとされます。
 

【☝喜田先生のワンポイントアドバイス】

免疫力に関しては、それを評価する指標・検査値はないことから、単純に「高い」「低い」という言葉では言い表せません。あくまで参考として御覧ください。

 

生活習慣

lifestyle habits

私たちの日々の生活習慣が、がん細胞の進行速度をコントロールするわけではありません。しかし、生活習慣は免疫が機能しやすい環境を整えるという意味で大きな役割をもちます。

※喫煙や大量の飲酒、バランスの悪い食生活、運動不足(有酸素運動や筋力トレーニングの不足)や睡眠不足や、ストレスは体の炎症を引き起こしたり、免疫力を低下させる可能性があり、がんが進行しやすい環境づくりへの影響が指摘されています。

 

発見時のステージ

Stage at discovery

がんと診断された時点で、どの程度進行しているかは、その後の治療経過や予後に大きく影響してきます。早期に発見されれば、進行が速いタイプのがんであっても、適切な治療によって根治を目指せる可能性がでてきます。

 

【次ページ】

ステージ別でみる大腸がんの進行速度と特徴・自覚症状

医師 喜田凛=監修
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