大腸がん肉眼分類の基礎知識
進行がん(腫瘤型:1~5型)の分類と特徴
大腸がんが進行し、腸の壁の深い部分(腸管の筋層)まで達すると、その見た目は「腫瘤型」と呼ばれる特徴的な形となり、目に見えて大きなこぶや潰瘍を形成している状態となり、がんの悪性度や広がりを予測するために、さらに「1型」から「5型」まで細かく分類されます。
この章では、腫瘤型の「1型」から「5型」までを詳しく解説していきます。
【腫瘤型:1~5型】
1型 ー 「大きなこぶ」タイプ
腫瘤型・隆起型とも言われ、このタイプは、がんが腸管の内腔(空間)に向かって大きく成長していくため、ある程度の大きさになると便の通り道が狭くなり、便が細くなる、便秘がちになる、お腹が張るといった症状を引き起こす原因となっていきます。
【治療法】
外科手術による切除が基本となります。
進行がんの他のタイプと比較すると、表面に近い方へ癌が広がっていきやすいタイプのため、周囲の他の組織へ広がる(浸潤する)傾向はやや弱いと言われ、境界が明瞭で切除範囲の計画が立てやすく、腫瘤型の中では比較的予後が良い傾向にあると言われています。
2型 ー 「火山のクレーター」タイプ
潰瘍限局型とも言われ、大きな潰瘍、組織が深くえぐれたような状態を形成しています。
見た目は中心部が深く凹んでおり、その潰瘍の周りは土手が盛り上がったような硬い壁(周堤)によって、はっきりと縁どられており、この「周りの壁がしっかりしている」という点が、次に説明する「3型」との大きな違いとなります。潰瘍の表面はもろく出血しやすいため、血便やゆっくり進行する貧血といった症状で発見されることが多いのが特徴です。進行がんの中では一番多いタイプです。
【治療法】
外科手術による切除が基本となります。
3型 ー 「にじみ広がる潰瘍」タイプ
潰瘍浸潤型とも言われ、「2型」より進行した悪性度の高い潰瘍を形成します。潰瘍の周りを囲む壁(周堤)が不明瞭で、がんが周囲の正常な組織へ染み込むように広がって(浸潤して)いるため、がんの境界線がはっきりせず、リンパ節や他の臓器(特に肝臓など)へ転移を起こすリスクが高いと言われています。
【治療法】
外科手術が必須となり、浸潤の範囲を正確に予測することが難しい為、がんが広がっている可能性のある範囲を含め、より広範囲に腸管と周辺のリンパ節を切除する必要があります。
また、術後の病理検査の結果によって、再発を予防するための「補助化学療法(抗がん剤治療)が行われます。
4型 ー 「硬化」タイプ
びまん浸潤型とも言われ、非常に悪性度の高いタイプとなり、はっきりした潰瘍を作らず、がん細胞が腸の壁全体に広範囲にわたり染み込むように広がり(びまん浸潤)、腸の壁自体が厚く、硬く変化します。進行が早い為、予後が最も悪いと言われており、腸全体が硬く狭くなるため、腹痛や重度の便秘、下痢、腸閉塞(イレウス)(※9)などの症状で発見されることが多い特徴があります。
【治療法】
「外科手術」と「化学療法(抗がん剤治療)」の組み合わせが基本の治療法となります。
5型 ー 分類不能
「1型」から「4型」のいずれの典型的な特徴にも当てはまらない場合に用いられる分類となり、複数のタイプの特徴が混在し、どちらが主であるか判断が難しい場合や、化学療法・放射線治療を行ったことで、がんの元の形が変化してしまい本来の分類が分からなくなってしまった場合などが該当する分類となります。
【治療法】
がんの深達度(深さ)、リンパ節転移の有無、遠隔転移の状況などを総合的に評価し、個々の患者さんの状態に合わせた最適な方法(外科手術や化学療法など)が選択されます。
※9:腸閉塞(イレウス)
食べ物や消化液、ガスなどが、腸の中で詰まってしまい、先へ進めなくなってしまった状態のこと

杉本先生のワンポイントアドバイス
~大腸がんの手術と手術前に行う放射線治療・抗がん剤治療の現在~
大腸癌治療ガイドライン2024年医師版でも、大腸がんの治療の基本は外科切除になります。大腸以外の場所に転移していても、完全切除が同時にできる状況であれば、手術加療が第一選択になります。手術する前に抗がん剤治療を先に行うのは、今のところ推奨されていません。
しかし、直腸がんの場合、今の状態で手術をすると肛門機能が温存できず人工肛門にする必要がある時に、先に放射線治療と抗がん剤を併用し腫瘍を縮小してから、外科手術をするという選択は行われています。成績的にも先に手術した場合と同等な成績であり、肛門機能を温存できる利点があります。細かいところは、病院ごとの方法があるため、実際に受ける状況になった時は、よく相談してみてください。
まとめ
この記事では、大腸がんの「肉眼分類」について、その種類と特徴を解説してきました。
肉眼分類は、「表層型(0型)」と「腫瘤型(1~5型)」の2つの大きなタイプに分かれ、それぞれに見た目の特徴や治療法が異なります。また、診断結果に現れる「0-Ⅱc」や「2型」といった表現は、がんの進行度や治療方針を決める上で非常に重要な意味を持っており、腫瘤や潰瘍の形や隆起の有無といった見た目の違いで、予後や治療の選択肢が大きく変わってきます。
表層型であれば内視鏡治療で完治を目指せることが多く、進行した腫瘤型であっても、その形から最適な手術や治療法を計画することができます。この肉眼分類をもとに、体の状態を把握し、医師と相談しながら、ご自身、ご家族にとって最善の治療法の選択に繋がる一助となれば幸いです。

