大腸がんの転移
定期検査の重要性
The Importance of Regular Inspections
大腸がんの治療を終えた方や、がんが進行していると診断されている方は、転移を早期に発見するために主治医の指示に従い、計画的な定期検査を受けることが不可欠となります。
ここでは一般的に行われる定期検査の項目について説明をしていきます。
定期検査の一般的な項目
腫瘍マーカ―検査 | 他の検査と組み合わせて評価され、血液中の特定のがん関連物質の濃度を測定し、数値が上昇しているとがんの再発や転移の可能性を示します。 |
画像検査 | CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)、超音波検査、PET-CT(陽電子放出断層撮影)などが用いられ、転移しやすい臓器に異常がないかを確認するために定期的に実施されます。 |
内視鏡検査 | 大腸がんの治療後、残った大腸や吻合物(手術でつなぎ合わせた部分)にがんの再発がないかを確認するため、定期的に大腸内視鏡検査が行われます。 |

杉本先生のワンポイントアドバイス
~定期検査はどのくらいの間隔で行うのか。~
再発の多くは3年以内といわれており、おもに術後5年間は重点的に検査を計画します。平均的には腫瘍マーカー検査は3か月に1回 画像検査(主に点滴造影剤を用いて撮影する造影CT検査)は6か月に1回、内視鏡検査は1年ごとを目安にしています。
ステージⅣで病変が残っている場合や抗がん剤治療を続ける場合などは、その人の状態に合わせて検査を計画していきます。体調の変化など感じた時にすぐに病院にいかない程度でも、メモするなどして定期受診の時に医師に報告するようにしていくと、より望ましい検査と治療につながっていきます。
生活習慣の見直し
大腸がんの発生や再発、転移のリスクを低減するためには、日々の生活習慣を見直すことはとても大切です。大腸がんの転移リスクを減らすために、私たちが日常生活でできる具体的な取り組みとして食生活と運動についてお伝えしていきます。
食生活の見直し
Revising Your Diet
私たちの腸は、食べたものから直接影響を受けるため、バランスの取れた食事は腸内環境を整え、免疫力を高めることにも繋がり、大腸がんの発生や再発、転移のリスクの低減にも繋がる可能性があります。以下の具体的な食生活のポイントを参考に、無理なく継続できる範囲で、少しずつ食習慣を改善してみましょう。
1.食物繊維は摂取内容と摂取量を意識する
食物繊維は、「不足も摂り過ぎにも注意」が必要で体調や治療段階に合った量・種類を選び、無理のない範囲でバランス良く摂取することが大切です。
*1厚生労働省の目安は1日あたり18歳~64歳の男性で20~22g以上、女性で18g以上の摂取が理想的と言われています。また、*2日本人では通常の食事で不足しなければ十分とされており、1日10g程度でリスク低下効果は頭打ちになるというデータもあり、食物繊維は摂り過ぎにも注意が必要と言われています。
ごぼうやきのこなどの不溶性食物繊維の摂り過ぎは腹痛や下痢、お腹の張りに繋がる可能性があります。
手術直後や腸の狭窄(狭くなっている部分)がある場合は、食物繊維の摂取が多いと腸閉塞を起こすリスクがあるため、医師の指示に従うようにしましょう。
【参考文献】
*1 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2025年版策定検討会報告書P129-144」より
*2 2006年に発表された欧米の17のコホート研究のデータを再検討し、大腸がんリスクとの関連を解析した研究
2.赤肉・加工肉の摂取を控える
牛肉や豚肉などの赤肉、ハム、ソーセージなどの加工肉の摂取量を減らし、魚や鶏肉、豆腐や納豆などの植物性タンパク質をバランスよく取り入れることを意識しましょう。
3.脂質の摂取量を調整する
揚げ物やジャンクフード、動物性脂肪の多い食事は控えめにし、オリーブオイルや魚油などの不飽和脂肪酸(※10)を適量摂取するよう意識しましょう。
4.アルコールの過剰摂取を避けましょう
5.抗酸化作用のある食品を摂る
緑黄色野菜や果物に含まれるビタミンC、E、カロテノイドなどの抗酸化物質は、がんの発生や進行を抑制する効果が期待されています。様々な色の野菜や果物をバランス良く摂りましょう。
6. 乳製品、カルシウムの摂取
欧米では大腸がんのリスクを下げるデータが報告されています。日本人ではがん予防研究班の報告によると大腸がんのリスクが下がる傾向にありましたが、確実にリスクを下げると言い切れるほどの差は証明できませんでした。しかし将来的にはリスクが下がる成分に追加される可能性があります。
※10:不飽和脂肪酸
脂肪を構成する脂肪酸の一つで、常温で液体のことが多い特徴があり、植物油や魚油に多く含まれており、体内ではエネルギー源や細胞の構成成分として重要な働きをしますが、一部の不飽和脂肪酸は体内で作れず、食事から摂取が必要な必須脂肪酸として知られています。
適度な運動習慣
A habit of moderate exercise
運動は、腸の働きを活発にし、便通を改善することで腸内に有害物質が溜まる時間を短縮します。また、全身の血行を促進し、免疫力が高まることで体内に残存する可能性のある微細ながん細胞に対する抵抗力も向上すると考えられています。
具体的な運動として、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を、週に3回以上、1回あたり30分程度行うのが理想的です。
短い時間から始めて徐々に運動量や時間を増やしていき、日常生活の中で階段を使う、一駅分歩くなど、意識的に体を動かす機会を増やすことからでも十分な効果が期待できます。
継続することが何よりも重要ですので、楽しみながら続けられる運動を見つけることがポイントです。
まとめ
大腸がんが進行すると、血管やリンパ管を通じて肝臓や肺、腹膜などへ転移する可能性があります。初期では症状に気づかないことも多いため、日常の体調の変化に注意しながら、定期的な検査での早期発見が重要となります。また、食生活の改善や適度な運動など生活習慣を見直すことで、再発や転移リスクを減らせる可能性があります。「転移」と聞くととても不安を抱えてしまいますが、現在では治療法は多様にあり、希望を持ちながら日常生活と治療を両立している方も少なくありません。この記事を通し、主治医と共に自分らしい生活を送るための一助となれましたら幸いです。
【参考文献】
・大腸癌研究会.「大腸癌取り扱い規約第9版」2019
・大腸がん治療ガイドライン2023年版
・世界保険機構(WHO)の身体活動に関するガイドライン
(WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour)より
・世界がん研究基金とアメリカがん研究協会の継続的更新プロジェクト
(Continuous Update Project: CUP)の報告書より
・厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2025年版策定検討会報告書P129-144」より
2006年に発表された欧米の17のコホート研究のデータを再検討し、大腸がんリスクとの関連を解析した研究

