大腸がんの転移
大腸がんの「転移」という言葉を聞き、強い不安や戸惑いを感じてしまう方は多いのではないでしょうか。治療がひと区切りしたと思った矢先の再発や「他の臓器にも広がってしまったら」「今後の治療や生活はどうなるのか」といったさまざまな悩みが浮かんでくることと思います。
しかし、自分自身に合った治療法を模索し、一歩ずつ向き合うことで仕事と治療を両立している方、希望を持ち続けながら暮らしている方は少なくありません。
この記事では、「大腸がんの転移」がどのような状態か、転移しやすい臓器と転移した場合に現れる症状などをわかりやすく解説しています。また大腸がんの発生リスクを減らす生活習慣が、転移リスクも減らすことにつながるため、今回は食生活と運動に焦点を当て、日々の生活の中でご自分でも簡単に取り組めるポイントについてお伝えしています。大腸がんの治療と向き合いながら、自分らしい生活を送るための一助となれましたら幸いです。
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大腸がんの転移とは?
大腸がんにおける転移とは、がん細胞が最初に発生した大腸の壁を越え、血液やリンパ液の流れに乗って他の臓器やリンパ節に移動し、そこで新たな腫瘍(転移巣)を形成することを指します。
これはがんの進行度合いを示す指標となり、治療方針を決定する上で非常に重要な情報となります。この章では、どのようにして転移が起こるのか基本的なメカニズムと、進行と転移の関係について解説します。
進行と転移の関係
the relationship between progression and metastasis
大腸がんの「進行」と「転移」は密接に関係しており、がん細胞が大腸の粘膜層にとどまっている間は転移を起こすことはほとんどありません。がんが進行し、大腸の壁のより深い層(粘膜下層、固有筋層、漿膜など)へと浸潤(※1)していくと、その過程で血管やリンパ管に到達し、がんが深部に浸潤するほど転移のリスクが高まります。
血管やリンパ管は、全身に血液やリンパ液を運ぶため、がん細胞にとって「体のどこでも移動できる経路」となり、がん細胞が入り込むと、血液やリンパ液の流れに乗って遠く離れた臓器(肝臓、肺など)や、リンパ節へと運ばれてしまい、これが「転移」に繋がってしまうのです。
※1:浸潤
がん細胞が周囲の正常な組織に広がっていくことをいいます
リンパ節転移と血行性転移
(遠隔臓器への転移)
lymph node metastasis hematogenous metastasis
(metastasis to distant organs)
大腸がんの転移には代表的なものとしてリンパ節転移と血行性転移(遠隔臓器への転移)があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
リンパ節転移は、がん細胞が原発巣から最も近い「リンパ管(※2)」に侵入し、リンパ液の流れに乗って所属リンパ節(※3)に達し、そこで増殖をしていきます。血行性転移(遠隔臓器への転移)は、がん細胞が原発巣から「血管」に侵入し、血液の流れに乗り全身を巡り、大腸から離れた臓器(肝臓、肺、骨、脳など)に到達し、そこで増殖をしていきます。
※2:リンパ管
体内の余分な液体や異物、細菌などを運び、リンパ節でろ過する細い管状の構造をいいます。
※3:所属リンパ節
ある臓器や組織の周囲から流れ出るリンパ液が最初にたどり着くリンパ節のことをいいます。リンパ節はリンパ液をろ過し、免疫反応を起こす場所なので、がん細胞が流れてくるとここで捕まえて、除去しようとする反応が起こります。
ステージ分類と転移が示す進行度
がんと診断された際、多くの方が耳にする「ステージ」という言葉は、がんの進行度合いを示す重要な指標であり、がんの大きさや深さ、そして転移の有無によって分類されます。このステージ分類は、適切な治療法を決定するためだけでなく、今後の予後を予測する上でも非常に重要な意味を持ちます。
特に「転移」の有無はステージ分類に大きく影響し、がんの治療戦略を根本から変えることも少なくありません。ここでは、大腸がんのステージがどのように分類され、それぞれのステージにおいて、がんの転移がどのように関わってくるのかを表にしてわかりやすく解説していきます。
ステージ0 | がんが大腸の粘膜内にとどまる状態(上皮内がん)です。内視鏡切除が可能で、ほぼ根治できます。 |
ステージⅠ | ステージⅠでは、がん細胞が大腸の壁の粘膜下層から固有筋層まで浸潤している状態で、リンパ節や遠隔転移がない状態をいいます。 このステージⅠの中で、粘膜下層へのがんの浸潤距離が1000μm(=1mm)より浅い場合は、他にいくつか条件はありますが、リンパ節転移の可能性がほぼないものとされており、内視鏡切除で治療完了としています。 粘膜下層から1000μm以上の浸潤がある、固有筋層に浸潤しているときは、リンパ節転移の可能性が残るため、外科切除を推奨されています。 |
ステージⅡ | がん細胞が大腸の壁の固有筋層を越えてさらに深く浸潤しているか、または大腸の壁を貫通して周囲の組織に及んでいるものの、 リンパ節転移がない場合にステージⅡと診断されます。遠隔転移はもちろんありません。 |
ステージⅢ | 【リンパ節転移】 大腸がんの浸潤の深さに関係なく、周囲のリンパ節に転移している状態をステージⅢといいます。さらにステージⅢは、大腸の壁への浸潤度と、転移しているリンパ節の個数・場所によってⅢa~Ⅲcの3つに細かく分類されますが、肝臓や肺などの遠隔転移が見られないのが特徴です。 |
ステージⅣ | 【遠隔転移】 がん細胞が最初に発生した大腸から離れた他の臓器(肝臓、肺、腹膜、骨など)に「遠隔転移」している状態を指し、最も進行した状態となります。 さらに遠隔転移している臓器の個数、腹膜転移の状態でⅣa~Ⅳcの3つに細かく分類されます。 |
杉本先生のワンポイントアドバイス
~がんのステージを確定する方法~
がんのステージを確定するには、実際にがんの状態や腹膜の状態を手術中に確認し、がん本体を切除し、さらに周辺のリンパ節を郭清(郭清:リンパ管の流れに沿ってがん細胞が広がる可能性のあるリンパ節をまとめて切除する事)し、病変を顕微鏡で見てがんの浸潤度とリンパ節転移の有無を確認して初めて決定できます。そのため治療する前の段階では、内視鏡でみたがんの形とCTなどの画像検査でリンパ節が大きくなっているか、他の臓器にがんが転移しているかを判断してステージを決めています。
そのため、実際に病変を切除した後に、実は思ったよりがんが深く浸潤していたことや、リンパ節が画像では大きくみえていても、その中にがん細胞がない場合もあります。また、腹膜転移は、実際に手術中に腹膜をみて初めて確認できる場合もあります。
なるべく治療前に正確なステージがわかるように検査をしていますが、まだ完璧にできる方法はなく、最終結果はあくまで組織診断になりますので、治療前後でステージが変わることもありうるのです。
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転移しやすい臓器

