大腸がんの転移
転移しやすい臓器
がん細胞はリンパ液や血液の流れに乗って全身を巡るため、様々な臓器に転移する可能性があります。その中でも特に転移しやすいと言われる臓器があり、それぞれの臓器によって現れる症状や治療法も異なります。ここでは、大腸がんが転移しやすい臓器と、その特徴について説明をしていきます。
主な転移先と特徴
転移先 | 特徴 |
肝臓 | 大腸から吸収された血液は全て門脈(※4)を通り肝臓に流れ込むため、大腸がんは肝臓に最も転移しやすい臓器と言われています。頻度は約10-15%と報告されています。 |
肺 | 肝臓の次に多い転移先で、全身を巡る血液の流れに乗って、がん細胞が肺に運ばれることで転移します。頻度は約2-5%と報告されています。 |
リンパ節 | 大腸の周りにあるリンパ節に転移する「所属リンパ節転移」と、全身の遠隔リンパ節に転移する場合があり、ステージ分類において非常に重要となります。 がん浸潤の深さによって可能性が増え、粘膜下層(1000μm以上)で5-15%、筋層で20-30%、と言われています。また大腸がんの中でも直腸がんはリンパ節転移の頻度が高いこともいわれています。 |
腹膜 | 大腸の壁を突き破り、がん細胞が腹腔内に散らばることで、腹腔(※5)内を覆う腹膜(※6)にがん細胞が増殖する状態で、大腸がん特有の転移の一つです。頻度は約5%と報告されています。 |
※4:門脈
胃や小腸、大腸などの消化器、膵臓や脾臓などから集まった血液を肝臓に運ぶ静脈のことをいいます。
※5:腹腔
腹部の内側を覆っている腹膜によって形成される空間のことをいいます。
※6:腹膜
腹部の臓器や腹壁を包み込むように広がる、非常に薄い半透明の膜のことをいいます。
脳や骨などの稀な転移
Rare metastases to the brain, bones, and other sites
大腸がんの転移先として、稀に脳や骨といった部位に転移することがあり、発生頻度は低いものの、転移した部位によっては重篤な症状を引き起こし、生活の質(QOL)に大きな影響を与える可能性があります。ここでは脳と骨の転移について特徴を説明します。
稀な転移先と特徴
転移先 | 特徴 |
骨 | がん細胞が血液の流れに乗って骨に到達し増殖することで「破骨細胞(※7)」と「骨芽細胞(※8)」という骨を正常に作るために必要な細胞に対して影響を与え、そのバランスを崩します。破骨細胞が活性化すると骨が溶かされ脆くなります。骨芽細胞が活性化すると、新たな骨をつくるものの非常に脆い構造しかできず、痛みの原因になったり、軽い衝撃で骨折する(病的骨折といいます)原因となります。 |
脳 | 血液の流れによる「血行性転移」が主な原因となり、ほとんどの場合、肝臓や肺などの他臓器に転移した後に発生する頻度の低い転移ですが、麻痺や痙攣などの神経症状を急激に引き起こすことが特徴です。 |
※7:破骨細胞
骨の表面にはりついて骨を溶かす働きを持つ細胞のことをいいます。
※8:骨芽細胞
骨をつくるときに働く細胞をいいます。正常な骨代謝とは、この2つの細胞のバランスがとれ、古くなった骨細胞を破骨細胞が壊し、そこを骨芽細胞が新たな骨をつくりより丈夫にするというサイクルをつくっています。

杉本先生のワンポイントアドバイス
~大腸がんで転移があった時の治療は?~
大腸がんがわかり、その時に残念ながら遠隔転移もあった場合の治療はどうなるのでしょうか。現在のガイドラインでは、遠隔転移があっても大腸がん本体と同時に切除できるなら切除をするというのが第一選択になっています。もちろん負担は大きくなるので、それぞれのケースで考えることになりますが、可能であれば同時に切除する方法を考えます。
全身状態的に難しい、がんを切除しきれない状態の場合は、抗がん剤治療をしながら、転移の場所によっては放射線治療(特に骨転移・脳転移の場合)を併用していきます。緩和目的になる可能性もありますが、少しでも本人の状態をよりよくするためには重要な治療法です。こちらもそれぞれのケースで選択が異なるので、よく医療者側とも相談して決めていくようにしましょう。
転移を少しでも早く見つけるポイント
大腸がんの治療を終えた後や、がんが進行している状況で、転移の早期発見はその後の治療選択肢を広げ、良好な予後へと繋がる可能性があります。ただ、初期の段階では目立つ症状がないため、日常生活での小さな体調の変化や定期検診を受けることが非常に重要です。体からのサインを見逃さず、適切なタイミングで医療機関を受診する目安として、具体的なポイントを交えながらお伝えしていきます。
日常生活で注意したい体調の変化
Changes in Your Physical Condition to Watch Out for in Daily Life
大腸がんの転移病変は、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多く、転移巣が大きくなり、特定の臓器に影響を及ぼし始めると、様々な体調の変化として現れてくることがあります。
ここでは、転移先の臓器による特に注意したい体調の変化をお伝えします。
転移先の臓器による特に注意したい体調の変化
転移先の臓器 | 体調の変化 |
肝臓転移 | 初期では症状は出にくい。 ・体がだるい、疲れやすい ・食欲がなくなる、体重が減る ・お腹の右上が重苦しい、痛みを感じる ・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) |
肺転移 | ・咳が続く ・痰が出る(時に血が混じる) ・息切れしやすい ・胸の痛み ※風邪と間違えやすいため注意が必要です。 |
リンパ節転移 | ・下腹部にしこりや腫れを感じる ・周囲臓器への圧迫による排尿障害などの症状がある ・腫れているところを押すと痛みや違和感がある |
腹膜播種 | ・腹部膨満感(お腹の張り)・腹水の貯溜 ・腸閉塞(※9)(排便困難・便秘や嘔吐) ・腹痛 ・食欲不振 ・体重減少 ・全身の倦怠感 |
骨転移 | ・持続的な痛み(特に夜間や安静時に強くなる) ・体の特定の部位の腫れ ・骨がもろくなり、軽い衝撃で骨折しやすくなる ・高カルシウム血症(骨が破壊されることで血中カルシウム濃度が高くなり、倦怠感・意識障害などを引き起こすことがあります。) |
脳転移 | ・頭痛(特に朝に強い) ・吐き気や嘔吐 ・手足の麻痺やしびれ ・ふらつき・けいれん発作 ・言語障害や視覚障害 ・意識障害、性格の変化 |
これらの症状は、がんの転移以外の原因でも起こりうるため、一概に転移とは判定できませんが、いつもと違う、気になる症状が続く場合は自己判断せずに速やかに主治医や医療機関を受診することがとても大切です。
※9:腸閉塞
さまざまな原因によって腸の内容物(便やガスなど)が先に進めなくなり、腸の中にたまってしまう状態のことをいいます。
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定期検査の重要性

