家族で看取る「穏やかな最期」 Peaceful end-of-life care" with family members
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06/26 (金) 09:24更新

肺がんで呼吸が苦しくなる理由 とご家族にもできるケア方法

Why Lung Cancer Causes Shortness of Breath and Care Tips for Family Members
医師 福田 滉仁
呼吸器専門医・がん薬物療法専門医。がん専門病院で肺癌を中心に様々ながんの治療を経験。緩和ケアチームへの所属歴や在宅医療に従事した経験を活かし、診断から治療・お看取りまで患者さんに寄り添ったケアを心がけている。
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呼吸困難への対処法と治療法

では、前章でお話しした呼吸困難の症状が現れ始めたとき、どのように対処していけばいいのでしょうか。

ここでは、医療的なアプローチからご家庭でできる工夫まで、呼吸を少しでも楽にできる対処法をご紹介します。

医療的アプローチ

Medical Approach

呼吸困難への医療的対処法としてまず挙げられるのが、酸素吸入や薬物療法です。

酸素吸入は、血中の酸素濃度が下がった状態に対応する基本的な手段で、自宅療養中でも在宅酸素療法(HOT)として利用できます。これにより息苦しさが軽減され、会話や食事といった日常の動作がしやすくなります。

また、呼吸困難の原因に応じて、薬物療法を行います。たとえば、細菌による肺炎が原因なら抗菌薬、がん性リンパ管症や放射線による肺炎ならステロイド、心不全が関係しているときは利尿剤などです。

ただし、これらの治療には副作用や限界もあるため、医師との綿密な相談が欠かせません。

これらの治療はがんの進行を止める治療ではなく、症状の緩和が目的である対症療法であることを理解したうえで、治療方針を決めることが重要です。対症療法であっても「呼吸が少し楽になるだけで表情が和らぐ」ことも多く、本人の残された時間の質を高める大切な手段となります。

ご家庭でできる工夫と生活支援

Tips for the Home and Daily Living Support

前述したような医療的アプローチを行いながら、ご家庭でもちょっとした工夫を取り入れることで呼吸を楽にすることも可能です。

 姿勢や生活環境を工夫する 

 おすすめの姿勢 

  • 呼吸がつらいときには、姿勢を少し変えるだけでも楽になることがあります。

  • 特に有効なのが「前かがみ姿勢(前傾姿勢)」です。テーブルに枕やクッションを置き、そこに肘や額を乗せることで、横隔膜が下がり、呼吸がしやすくなります。
    また、
    上半身をやや起こした状態で寝る「セミファウラー位」もおすすめです。

  • ベッドの角度を調節できない場合でも、クッションや枕を重ねて背中を支えることで再現可能です。

 おすすめの生活環境  

  • 室温・湿度の管理が基本です。特に夏場の暑さや冬場の乾燥は呼吸を妨げやすいため、エアコンや加湿器を上手に活用しましょう。

  • 空気清浄機の導入も、ホコリや花粉などの刺激物を減らすために役立ちます。

  • 身の回りのものを手の届く範囲に配置することで、無駄な動きを減らし、体力の消耗を防ぐことが可能です。そして、静かな環境を保つことも呼吸を安定させるために重要です。テレビやスマホの音量を抑え、照明もやや落とした穏やかな空間を整えることで、気持ちも落ち着き、呼吸が深くなることがあります。
     

 

 

ワンポイントアドバイス

実は、「風」が呼吸困難を和らげるのに効果的であることが分かっています。携帯型の扇風機などで顔に風を当てると、呼吸困難が改善したという研究報告があります。ご自宅でも、患者さんの顔にやさしく風を当てる、窓を開けて風通しを良くするなど試してみてください。また、付き添っている方が「少し寒い」と感じるくらいの室温が、呼吸困難のある患者さんにとってはちょうど良いことが多いです。室温や空気の流れを整えることが、思いのほか効果があるかもしれません。

 

 痰を出しやすくする習慣やマッサージ法 

痰がからんで呼吸が苦しくなる場合、次のような習慣やマッサージで症状を軽減することが可能です。

 こまめな水分補給 

  • こまめに白湯やぬるま湯を摂ることで、痰をやわらかくし、排出しやすくします。

 軽いマッサージ 

  • 背中の肩甲骨周辺をやさしく円を描くようにさする「背部マッサージ」は、痰の移動を助け、自然な咳を促します。無理に咳を出させるのではなく、リラックスした状態で行うのがポイントです。

 呼吸を整える 

  • 「口すぼめ呼吸」や「腹式呼吸」などを習慣づけることで、自然と痰を出しやすくなり、日々の呼吸が安定します。

ご家族の手によるこうしたケアは、ご本人の安心感にもつながり、穏やかな時間を支える大切な支援となります。

 

まとめ

息が苦しいという症状は、目には見えなくても日々の暮らしを大きく左右するつらいものです。「なぜ苦しいのか」を知り、「どうすれば少しでも楽になれるのか」を理解することで、不安は少し和らぎます。

また、ご本人だけでなく、そばで支えるご家族もまた、見えない苦しさに心をすり減らしていることと思います。呼吸が楽になれば、表情がやわらぎ、会話が増え、できることも少しずつ戻ってくるかもしれません。

「こんな方法もあるんだ」「まだできることがある」と感じていただけたなら、何より嬉しく思います。

この記事を通して、少しでも穏やかで、安心できる時間をつくるお手伝いができれば幸いです。

医師 福田 滉仁=監修
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