肺がんで呼吸が苦しくなる理由 とご家族にもできるケア方法
呼吸困難の症状とその変化を知る方法
「呼吸がつらそうだけど、どの程度なのか本人は言わない…」「ただの疲れなのか、病気の進行なのか…」。そんな不安を抱えながら、大切なご家族を見守っていませんか?
肺がんの進行にともない現れる“呼吸困難”は、本人が感じるつらさと、周囲から見える様子にギャップがあることもあります。そのため、呼吸のつらさを正しく理解し、適切に対応することが大切です。
こちらでは、呼吸困難の症状やその変化、ご家族でも活用できる評価方法をわかりやすく解説します。
呼吸困難の自覚症状と
客観的な兆候
Subjective symptoms and objective signs of shortness of breath
呼吸困難の感じ方には個人差があるため、呼吸困難を来しやすい肺がんでは症状や訴えの変化には特に注意が必要です。

階段をのぼると息が切れる
話していると息が続かない
横になると息が苦しい
これらの症状は、「年齢のせい」や「ちょっと疲れただけ」と思い込み、口に出さないことも多いため、見過ごされてしまうことも少なくありません。

会話中に息継ぎが多くなる
浅く速い呼吸をしている
首や肩に力が入り、全身を使って呼吸している
睡眠中にいびきや無呼吸が目立つ
表情に疲れや苦痛がにじんでいる
これらのサインを見逃さず、早めに医師に相談することで、呼吸の苦しさを和らげる手段やケアを講じることができます。
大切なのは「いつもと違う」を敏感に感じ取るご家族の目線。呼吸の変化は、その人の“今”を映し出す大切なメッセージなのです。

ワンポイントアドバイス
動いたときに感じていた息苦しさが、肺がんの進行に伴い、安静時にも感じられるようになることがあります。息苦しさが強くなっている場合、それは治療方針を見直すきっかけになります。こうした症状の変化は、ご本人だけでなく、ご家族からのお話しで気づかされることも少なくありません。「いつもと違う」と感じたことがあれば、遠慮せずに医師や看護師に伝えてみてください。それが、ご本人のつらさを軽減する手がかりになるかもしれません。
呼吸困難の重症度を測る
スケールと使用方法
Scales for Assessing the Severity of Dyspnea and How to Use Them
呼吸困難のつらさは目に見えにくく、本人の主観に左右されがちです。そのため、正確な評価が難しく、適切な対応が遅れることも少なくありません。
そこで活用されるのが、「呼吸困難の重症度を数値や段階で評価するスケール」です。
ここではご家族にも気軽に使用していただけるMRCスケールについて、ご紹介したいと思います。
MRCスケール
「歩行時の息切れ」を基準に5段階で評価するシンプルな方法で、医療従事者でなくとも簡単に使用できます。
このようなスケールを使うことで、
息切れがどの程度深刻なのかを客観的に把握できる
医療者との情報共有がスムーズになる
必要なケア(酸素吸入、姿勢調整、緩和医療など)を早期に行える

といったメリットがあります。呼吸困難の見極めは、生活の質に直結します。
ご家族がその変化に気づき、寄り添える手段として、こうしたスケールをぜひ活用してみてください。
MRCスケールは、呼吸困難を「日常の労作でどれだけ息切れがあるか」に基づいて、5段階で評価する方法です。
言葉にしづらい「息苦しさ」を、わかりやすく点数化することを目的とされています。
以下がMRCスケールの5段階の内容です。
グレード1
激しい運動時にのみ息切れがある
→日常生活にはほぼ支障がありません。グレード2
平地を早足で歩く、もしくは緩やかな上り坂を歩くと息切れがある
→息切れはありますが、工夫すれば多くの活動は可能です。グレード3
平地を自分のペースで歩いても息切れがして立ち止まる
→買い物などの外出時に支障を感じ始める段階です。グレード4
100メートル以下、数分の歩行でも息切れが起こる
→日常生活の自立が徐々に難しくなる可能性がある段階です。グレード5
息切れがひどく外出ができない、衣服の着替えでも息切れがある
→日常生活の自立が徐々に難しくなる可能性がある段階です。
このスケールのポイントは、患者さん自身に尋ねても構いませんし、日々の様子からご家族が推察しても構わないという点です。
「以前はスーパーまで歩けていたのに、最近は玄関先でも疲れている」など、小さな変化に気づくきっかけになります。
呼吸困難の段階を知ることは、適切な医療介入や緩和ケアの判断材料にも繋がります。

ワンポイントアドバイス
MRCスケールは客観的な評価方法ですが、患者さん目線の評価方法として「NRS:Numerical Rating Scale」があります。
「息苦しくない」を0、「これ以上の息苦しさは考えられない」を10とした11段階で評価します。「7点だったけど横になると9点」「5点だったけど、お薬をのんだら3点くらいになった」など、患者さんご本人の感じたままに点数をつけて評価します。簡便な評価方法なので、日々の状態を把握するのにお勧めです。
【次ページ】
呼吸困難への対処法と治療法

