私の看取り体験談 ~ 看取った家族の物語り ~ Last Shirahama Trip and Sushi
Stories of each family
家族が語る「それぞれの最期」
自宅に帰りたい一心で

自宅に帰りたい一心で

Last Shirahama Trip and Sushi
看取った方
看取り体験者 (女性)
ごんごん さん (女性)
34歳 介護福祉士 滋賀県
看取られた方
認知症グループホーム入居者
Dementia group home resident
享年 82歳
主な疾患 認知症/脳梗塞
闘病期間 0年 0ヶ月
最期を迎えた場所 施設

どんな看取りだったかお聞かせ頂けないでしょうか

大野さん(仮名)は真面目で家族を大切にする方でした。


帰宅願望がとても強く、帰るためなら手段を選びません。どんな声かけ、レクリエーションなどのお誘いもほとんど無意味でした。


興奮して大声を出したり、暴力を振るうこともありました。でもそれは、敵意ではなく「なんでこんなところに俺を閉じ込めておくんだ。


早く家に帰らせてくれ。家族に会わせてくれ。」という助けて欲しいメッセージだったと思います。


「お孫さんの習い事のお迎えがあるので、ここでご飯を食べて待っていて欲しいと言われました。」と声をかけると、納得する日もあるのですが「電話して確認する!」と電話をされ、お仕事で出られないと苛立って玄関まで走って外に飛び出してしまいます。


ご自宅に帰りたい思いは誰もが持っていて当たり前のことなのでいいのですが、大野さんは興奮してたくさん動くと突然失神してしまうのが唯一困る点でした。


元気な分にはいいのですが、倒れて頭を打ったりしたら大怪我です。私は居室担当だったので付き添っていたのですが、体格がよく力も強かったため男性職員が対応を代わっていました。


薬を調節したり関わり方に慣れていったら次第に穏やかになり、みなさんとご飯を食べてレクリエーションを楽しみ入浴もされて泊まることも納得されていました。


入浴は拒否が多かったので、3回に1回入れたらラッキーという感じでしたが毎日下着交換をしていたのでよかったと思います。


レクリエーションは写経が得意で、とても達筆な字で集中して丁寧に書き上げていました。日常生活は自立していましたが、食事に興味のない方でご飯と味噌汁しか飲んでくれませんでした。


体型も身長の割にかなり痩せていたので食べて欲しいのですがなかなかうまくいかず、工夫をした結果、ワンプレートにするかおかずをご飯の上に少し乗せるとその分だけは完食するということがわかり、少しずつ食事量も増えていきました。


外に行きたい欲求はあるし他の方とも仲良くなったので、みなさんで外出もたくさんして、足腰も健康だったので散歩にも行きました。


私より体力があって驚きました。そんな何気ない毎日を送っていたのですがそれはあるとき急に起きました。


夜勤で巡回に行ったときです。大野さんの片方の手足がベッドからはみ出ていました。握っても反応がなく呂律も回らず意識もうつろな状態。そのまま救急車で搬送され、脳梗塞と診断されました。


すぐに面会に行ったのですが残念ながらご家族に会うことができず、そのままGH(グループホーム)を退去してしまったため詳しい話は聞けませんでした。


私が見た限りでは声かけにも反応がなく片麻痺(身体の片側が麻痺する症状)で寝たきりの状態でした。


あんなに活発だった大野さんが来なくなった翌日は、静けさが特に気になりました。後に違う施設に転院になり、予後がよくなく亡くなったとの話を聞きました。


ご本人はどんな方でしたか What kind of person was he

大野さんは真面目で家族を大切にする方でした。


帰宅願望がとても強く、帰るためなら手段を選びません。


どんな声かけ、レクリエーションなどのお誘いもほとんど無意味でした。興奮して大声を出したり、暴力を振るうこともありました。


でもそれは、敵意ではなく「なんでこんなところに俺を閉じ込めておくんだ。早く家に帰らせてくれ。家族に会わせてくれ。」という助けて欲しいメッセージだったと思います。

病気はどんな経過を辿りましたか How did the disease progress

夜勤で巡回に行ったときです。大野さんの片方の手足がベッドからはみ出ていました。


握っても反応がなく呂律も回らず意識もうつろな状態。そのまま救急車で搬送され、脳梗塞と診断されました。


すぐに面会に行ったのですが残念ながらご家族に会うことができず、そのままGHを退去してしまったため詳しい話は聞けませんでした。


私が見た限りでは声かけにも反応がなく片麻痺で寝たきりの状態でした。


あんなに活発だった大野さんが来なくなった翌日は、静けさが特に気になりました。


後に違う施設に転院になり、予後がよくなく亡くなったとの話を聞きました。

やってよかったこと What are you glad you did?

興奮して倒れた際に、怪我がなく対応できたことがよかったです。


帰りたい気持ちはあって普通ですし、家を守りたい、家族を守りたいという気持ちは大切なことなので尊重したいと思い危険のない程度に自由に動いてもらいました。


GHに慣れてきてからは、写経という特技を発見してご本人も嬉しそうにされていました。


「男だから、歳上だから自分がやらなければいけない。」という昔ながらの男気のある方で、女性職員に対してとても紳士でしたし、私に対しては孫を見るように過保護なくらいでした。


そんな気持ちも受け止めて、介護しているようでこちらも学ぶこと、助けてもらうことが多くありいい関係性だったかと思います。

もっとこうすればよかった Things I'm glad I did

失神の危険性がなければもっと自由に好きなように動いていただけたのにと思います。


やはり、外に出たいときに制止されれば理由がどうあれ気分は良くないです。倒れない程度に自由に動けるケアの方法を学習しなければなと思いました。


食事量が取れないことに関して、ワンプレートにするという案でまとまって食事も摂れるようになったのですが、あるとき来た他の部署の職員に「見た目が汚い。食べる気がしない。」と言われてしまいました。


自分たち的には見た目も良く盛り付けていたつもりでしたが、見る人によっては汚く見えて食欲をそそらなかったんだと反省しました。

もっとこうだったらいいのに I wish it was more like this

家に帰りたい気持ちは大切ですし、GHに入居したからといって集団レクリエーションに参加しなければいけないわけではないので、自由に過ごせてもらえたかと思います。


在宅介護をするご家族の気持ちを考えると、GHに馴染んでいただくための対応をもう少し考えられたらなとも思いました。

この先 家族を看取る方へ伝えたい事 What I would like to convey to those who will be caring for their families

帰宅欲求の目的は人それぞれですが、まずはその理由を聴く、汲み取って対応することが大切だと思います。


大野さんは大声を出して、手が付けられないほどに暴れてしまうため、一見、問題行動にも見られましたが「男の俺が家にいないと!家を守らないと!」「娘が心配。孫が心配。」という理由がありました。


その点について細かく説明すると、大野さんも少しずつ納得してくださいました。ご家族にもその気持ちを伝えると嬉しそうにしていました。


在宅介護は難しかったかもしれませんが、ご自宅とGHといういい距離感でお互いに快適な生活ができたのだと思います。


認知症が進行しても、家族を愛する気持ちや家を守りたいという気持ちは変わらないのでその気持ちを忘れないように大切にして、適度に福祉を利用するのはいいことだと思います。持病がなくても脳梗塞など突然起こる病気もあります。


元気なうちにたくさん会ってお話しておきましょう。発作のせいで会話ができなくなったり、ご家族のことを認識できなくなってしまうのは悲しいことです。


元気なうちに後悔のないよう思い出作りをするといいと思います。

旅立ったご本人へのメッセージ A message to the person who has departed

こんな頼りなさそうな若者が担当で不安だったと思いますが、いろいろお話できて嬉しかったです。


ご家族を愛する気持ち、お孫さんに対する優しい気持ちが素敵だと思いました。いつまでも、一家の大黒柱でかっこよかったです。


たくさんの学びをありがとうございました。そして可愛がってくれてありがとうございました。


突然のことで驚きましたが、病院でも顔を見ることができてよかったです。お世話になりました。