私の看取り体験談 ~ 看取った家族の物語り ~ Last Shirahama Trip and Sushi
Stories of each family
家族が語る「それぞれの最期」
我が家に帰りたい気持ち

我が家に帰りたい気持ち

Last Shirahama Trip and Sushi
看取った方
看取り体験者 (女性)
ごんごん さん (女性)
34歳 介護福祉士 大阪府
看取られた方
認知症グループホーム入居者
Dementia group home resident
享年 88歳
主な疾患 認知症/高血圧/脳出血
闘病期間 0年 0ヶ月
最期を迎えた場所 施設

どんな看取りだったかお聞かせ頂けないでしょうか



宇野さん(仮名)は穏やかで真面目で物静かな方でした。認知症の症状としては帰宅欲求がとにかく強く、会話は成立するのですが常に「家に帰らなければいけない」「早く帰りたい」といった感じで帰ることばかり気にされていました。


「夕方になったら娘さんが迎えに来てくれるそうなので、それまでご飯の準備を手伝ってもらえませんか?」と声をかけると手伝ってくださるのですが、終わるとすぐに帰る支度を始めます。何をしてもその繰り返しで、気を紛らわせることはできませんでした。


娘様が理解のある方で、電話をして安心させてくれたりするのですがすぐに忘れてまた帰り支度を始めます。娘様がご自宅へ外泊に連れ出してくださり、ご家族に会ったりドライブに行ったりして気分転換をされて来て「とても穏やかに過ごしていました。」と報告されるのですが、やはりグループホーム(GH)に帰ってきた途端に「帰ります。」と訴えられます。


帰りたいのは当たり前のことなので無理に止めようとは思いませんが、宇野さんは高血圧の持病を持っていて通常血圧がとても高く徘徊が始まると最高血圧が200を超えるほどになります。


本人は帰ることに必死のため自覚はないようですがフラフラと足元もおぼつかなくなりとても危険な状態でした。なので、徘徊をやめさせたいと言うよりは血圧を心配して少し休んで欲しいのが職員の願いでした。


お誕生日の前日、娘様に連れられて外泊に出掛けられました。マッサージに行き温泉に入り、とても充実した時間を過ごされたとのことでした。心なしか、穏やかな表情に見えました。私は担当だったためお誕生日会の計画を立て、プレゼントを用意していました。喜ぶ顔が楽しみでした。


しかし、帰宅した夜に宇野さんが就寝してしばらくしたあと遅番者が夜勤者と交代し、巡回に行くとベッド上で激しく嘔吐され意識がなく血圧も計れないくらいの数値でした。すぐに応援を呼び心肺蘇生をして、救急車を呼び搬送されました。面会に行こうとしましたが治療もなす術なくそのまま亡くなってしまいました。


娘様は、自分が温泉やマッサージに連れて行ったことが引き金だったのではないかとすごく気にされて落ち込んでいましたが主治医いわく、もともと高血圧で血管が脆くなっておりプツプツと切れていて、たまたま大きな血管が破裂してしまい死に至ったとのことでした。


突然の出来事で、職員も家族もなかなか現実を受け入れられずに悲しむ間もないまま時間が過ぎていきました。

ご本人はどんな方でしたか What kind of person was he



宇野さんは穏やかで真面目で物静かな方でした。認知症の症状としては帰宅欲求がとにかく強く、会話は成立するのですが常に「家に帰らなければいけない」「早く帰りたい」といった感じで帰ることばかり気にされていました。


「夕方になったら娘さんが迎えに来てくれるそうなので、それまでご飯の準備を手伝ってもらえませんか?」と声をかけると手伝ってくださるのですが、終わるとすぐに帰る支度を始めます。何をしてもその繰り返しで、気を紛らわせることはできませんでした。


娘様が理解のある方で、電話をして安心させてくれたりするのですがすぐに忘れてまた帰り支度を始めます。娘様がご自宅へ外泊に連れ出してくださり、ご家族に会ったりドライブに行ったりして気分転換をされて来て「とても穏やかに過ごしていました。」と報告されるのですが、やはりGHに帰ってきた途端に「帰ります。」と訴えていました。

病気はどんな経過を辿りましたか How did the disease progress

宇野さんは高血圧の持病を持っていて通常血圧がとても高く徘徊が始まると最高血圧が200を超えるほどになります。


本人は帰ることに必死のため自覚はないようですがフラフラと足元もおぼつかなくなりとても危険な状態でした。なので、徘徊をやめさせたいと言うよりは血圧を心配して少し休んで欲しいのが職員の願いでした。


お誕生日の前日、娘様に連れられて外泊に出掛けられました。マッサージに行き温泉に入り、とても充実した時間を過ごされたとのことでした。心なしか、穏やかな表情に見えました。私は担当だったためお誕生日会の計画を立て、プレゼントを用意していました。喜ぶ顔が楽しみでした。


しかし、帰宅した夜に宇野さんが就寝してしばらくしたあと遅番者が夜勤者と交代し、巡回に行くとベッド上で激しく嘔吐され意識がなく血圧も計れないくらいの数値でした。すぐに応援を呼び心肺蘇生をして、救急車を呼び搬送されました。面会に行こうとしましたが治療もなす術なくそのまま亡くなってしまいました。


娘様は、自分が温泉やマッサージに連れて行ったことが引き金だったのではないかとすごく気にされて落ち込んでいましたが主治医いわく、もともと高血圧で血管が脆くなっておりプツプツと切れていて、たまたま大きな血管が破裂してしまい死に至ったとのことでした。

やってよかったこと What are you glad you did?

習字が得意な方だったので、書道を教えていただきました。落ち着いているときは集中されて先生のように指導してくださりました。


あとは私たちがやってよかったというよりは、ご家族の協力が何より助かりました。電話や外出、外泊に連れ出してくださりとても理解のあるご家族でした。宇野さんも、ご家族と過ごす時間は安心されていたと思いますし、知らない人だらけのGHで過ごすよりは見慣れた環境で過ごす時間が多くてよかったかと思います。

もっとこうすればよかった Things I'm glad I did

血圧さえ高くなければ、好きなだけ歩いていただけたのですが、体調を見ながらになるので休んでいただかないと危険なレベルになってしまいます。そのため行動を制限してしまったことが申し訳なかったなと思います。それでも、自力で帰りたいという気持ちを尊重して一緒に外に出たりドライブに出かけたりできればよかったかなと思います。

もっとこうだったらいいのに I wish it was more like this



家に帰りたい気持ちを尊重したいのですが、体調面での心配もあったため阻止する形になってしまうのが申し訳なかったです。


不安な気持ちが少しでも消えるように、もう少しご家族に宇野さんのことを聞いたり、いろいろ関わってみて他に興味が持てることを見つけてサポートできればなぁと感じました。好きなときに外出ができて血圧も安定する薬があれば1番なのですがそうもいかないですよね。

この先 家族を看取る方へ伝えたい事 What I would like to convey to those who will be caring for their families



「死」は何の前触れもなく突然やってきます。毎日を後悔なく過ごしましょう。そしてご家族にも後悔ないように過ごしていただきましょう。



宇野さんはGHに入居したために「自宅に帰りたい」という帰宅欲求が強かったのですが、認知症になると自宅にいても「自宅に帰りたい」と徘徊することがあります。



認知症当事者の帰宅欲求は不安感の現れだと思います。まずは話を聞いてあげることが大切だと思います。帰りたい理由は人それぞれです。宇野さんは「娘が心配」「ご飯の支度をしないと」と言っていたので「さっき娘さんから電話があって、仕事が遅くなるからここでご飯を食べて待っていてと言っていましたよ。」と声をかけて安心できるように対応しました。



「ちょっと待って」「大丈夫だから」などと曖昧な返答は本人を混乱させてしまい、不安にさせてしまいます。帰りたいという言葉の裏には不安や焦り、恐怖心があるといってもいいでしょう。「ここがあなたの家です」ではなく「私がいるから大丈夫」と寄り添ってあげることが大切だと思います。



大切なのは、帰宅欲求がなくなることではなく不安感が少しでも軽減されることです。施設では、見慣れない場所で落ち着かないということもあります。居室には使い慣れた家具やインテリアなどを置くといいと思います。宇野さんの居室には観葉植物や写真がたくさん飾ってありました。



あとは会えるときにたくさん会って、家族孝行をしてください。宇野さんは娘様とたくさん外出、外泊に行かれいろんな人に会っていろんな場所を楽しまれていました。娘様からもそのときの様子をお聞きすることができました。懐かしいものに触れたり、いろんな体験をすることは刺激になります。そしてご家族と過ごす時間はかけがえのない時間です。



GHでお誕生日会はできませんでしたが、ご家族に祝ってもらって温泉やマッサージにでかけられてきっと幸せな思い出になったと思います。

ご家族も、脳出血を起こす直前まで一緒に過ごせてよかったのではないでしょうか。逆に、さっきまで元気だったのに…と思うかもしれませんが最期まで元気に一緒に過ごせて宇野さんは喜んでいたと思いますよ。

旅立ったご本人へのメッセージ A message to the person who has departed



居室担当をさせていただきありがとうございました。達筆な宇野さんに書道を教えていただき少しは字がきれいになったと信じたいです。宇野さんの不安な気持ちに寄り添っていたつもりでしたが、帰りたいという欲求は消えることなく毎日具合が悪くなるまで歩き続けていましたね。




私たちがもう少し工夫して関われば宇野さんの不安感や焦燥感などを軽くすることができたかもしれません。未熟で申し訳ありませんでした。娘様とたくさんおでかけできたのはよかったですね。私たちとのおでかけも楽しく感じていただけていたら嬉しいです。




慣れない環境で知らない人ばかりで不安でしたよね。ちゃんと納得できる説明ができなかったことを反省します。ご自宅を守りたいという家族を想う強い気持ちが素晴らしいと思いました。見習いたいと思います。ありがとうございました!