私の看取り体験談 ~ 看取った家族の物語り ~ Last Shirahama Trip and Sushi
Stories of each family
家族が語る「それぞれの最期」
言葉にできなくても伝えたいことはある

言葉にできなくても伝えたいことはある

Last Shirahama Trip and Sushi
看取った方
看取り体験者 (女性)
ごんごん さん (女性)
34歳 介護福祉士 兵庫県
看取られた方
認知症グループホーム入居者
Dementia group home resident
享年 87歳
主な疾患 認知症/誤嚥性肺炎
闘病期間 0年 2ヶ月
最期を迎えた場所 施設

どんな看取りだったかお聞かせ頂けないでしょうか



アイさん(仮名)は、花や自然が好きで子供や動物が大好きな優しい方でした。ご自宅で介護をされていましたが、認知症の症状が重く意思疎通ができず徘徊もあり夜中に外に出て行ってしまったりと、家族も目が離せない状態で大変とのことで入所となりました。



要介護1で入居されたため、ある程度の日常生活はできるものだと思っていたのですが全く言葉を話さず表情もなく、本人からの情報が一切入ってきませんでした。こちらの指示も通らずどうすればいいか悩み、手探りで接していたところ介護認定の再審査で要介護4との判定が出ました。



言葉は発しませんが尿意はあるためトイレが近くなるとソワソワし出し、誘導するとズボンを脱いで自分でトイレで排泄できます。下着も普通の下着でした。食欲旺盛で「食べる」ということは理解されてご自分で食事もされていました。歩行も自立でスタスタと歩かれます。



しかし、なかなか表情が読めず言葉も発しないため意思を汲み取るのが難しく上手に関わるのに時間がかかってしまいました。私が一方的に話して反応を伺う形にはなってしまいますが、とにかくマンツーマンでたくさん話を振りました。また、いろんな景色や写真を見てもらって反応を見たり、ご家族からも家での様子を聞きました。



そのうちに好きなことが少しずつわかってきました。まずはお花が好きで花壇を散歩すると笑顔が見られました。足元がおぼつかないですが、一緒に花壇の水やりをすると楽しそうにされていました。



買い物は好きですが、スーパーに行くと商品を破ったりしてしまうことがあるとご家族から聞いていました。それでも試しに一緒に買い物に行きました。カートを押していただくと足取りも良く、商品を眺めながらスタスタと歩かれていました。車に乗ると景色を見ながら笑顔が見られました。



子供や動物がとにかく好きで、テレビで赤ちゃんの映像を流すと泣いている赤ちゃんをあやすようにテレビのそばに行き「どうしたんだ?なんで泣いてるの?大丈夫だよ。」と、言葉を引き出すことにも成功しました。外の風に当たって景色を眺めると四季を感じることができるようで、畑や田んぼの心配をしたり近所の家の話を聞かせてくださいました。



ご家族にその話をすると、家では花壇でお花を育てていて畑や田んぼもやっていたので近所の人とも交流があったため気にされているのかもとのことでした「野菜は育ってるよ。◯◯さんも元気にしてるよ。」と娘さんが言うと安心したように笑顔が見られました。



夜間不眠が見られ、私が夜勤のときにアイさんが夜中に徘徊していると、一緒にリビングでテレビを見ながらホットミルクを飲み、悩み相談会を開いて話を聞いてもらったりしていました(笑)普段は会話が成立しないのですが、たまにピントが合うとしっかりとした的確な返答が返ってきて若い私に人生のアドバイスをくださいました。



その後、身体は不自由ないのですが認知症がかなり進行してしまい、集団生活が困難になってしまったので、特別養護老人ホーム(特養)へのお引っ越しが決まってしまいました。一緒にお昼寝をしたり恋バナを聞いてもらったり、頼れる人生の先輩だったのでお別れは寂しかったです。



特養は人数が多いため1人1人に関わる時間が短く、マイペースに歩くアイさんは「歩行困難」とみなされたようで引っ越してすぐ車椅子になっていました。自分で食事をすることもできるのですが、片付ける都合上なのか食事も介助になってしまい結局全介助に。



その後、誤嚥性肺炎を起こし亡くなったとの話を聞きました。



あのままグループホームで過ごしていただいていればそんなことはなかったのかなとも思いましたが、誰が悪いとかではないのでアイさんが幸せを感じて最期まで暮らせていたらいいなぁと今では思います。

ご本人はどんな方でしたか What kind of person was he



アイさんは、花や自然が好きで子供や動物が大好きな優しい方でした。買い物は好きですが、スーパーに行くと商品を破ったりしてしまうことがあるとご家族から聞いていました。それでも試しに一緒に買い物に行きました。カートを押していただくと足取りも良く、商品を眺めながらスタスタと歩かれていました。


車に乗ると景色を見ながら笑顔が見られました。子供や動物がとにかく好きで、テレビで赤ちゃんの映像を流すと泣いている赤ちゃんをあやすようにテレビのそばに行き「どうしたんだ?なんで泣いてるの?大丈夫だよ。」と、言葉を引き出すことにも成功しました。


外の風に当たって景色を眺めると四季を感じることができるようで、畑や田んぼの心配をしたり近所の家の話を聞かせてくださいました。ご家族にその話をすると、家では花壇でお花を育てていて畑や田んぼもやっていたので近所の人とも交流があったとのことでした。


普段は会話が成立しないのですが、たまにピントが合うとしっかりとした的確な返答が返ってきて若い私に人生のアドバイスをくださいました。

病気はどんな経過を辿りましたか How did the disease progress



発語はないですが尿意便意はあり、態度などでトイレ誘導をして排泄をしていました。介助は必要なく普通の下着をつけていました。しかしだんだんとパットから紙パンツになっていきました。


ご飯もご自分で食べていましたが「食べる」ということを理解できなくなり介助が必要となりました。身体は不自由ないのですが認知症がかなり進行してしまい集団生活が困難になってしまったので、特養へのお引っ越しが決まってしまいました。


特養は人数が多いため1人1人に関わる時間が短く、マイペースに歩くアイさんは「歩行困難」とみなされたようで引っ越してすぐ車椅子になっていました。自分で食事をすることもできるのですが、片付ける都合上なのか食事も介助になってしまい結局全介助に。その後、誤嚥性肺炎を起こし亡くなったとの話を聞きました。

やってよかったこと What are you glad you did?



表情、発語の少ない方でしたがマンツーマンで関わったことで、たくさんの表情と言葉を聞き出せたことがよかったです。飼っている猫の話、お孫さんのこと、田んぼや畑のこと、近所の人のことなどたくさん聞き出せました。


他の入居者がいるときはなかなかできませんが、テレビで子供や動物の映像を流したのも発語が増える刺激になったとおもいます。また、運動機能の低下を防ぐためにボール投げや風船バレーなどをして身体を動かすゲームをしました。


「理解できないからやらない」ではなく、様々なことをやっていただくことで生活に張り合いができたかなと思います。外出の機会も増やして、五感からの刺激を多くしました。


また、ご家族の理解がすごくあったのがよかったと思います。娘さんは車が運転できないのでなかなか来られませんでしたが、来られた際には一緒にいる時間を大切にしてたくさんお話をされていました。


お婿さんも理解ある方でアイさんが徘徊をして居室から飛び出し興奮気味に施設内を歩き回っても「どこに行くの?何かあった?」と制止せずに見守っていたことが印象的でした。何にも縛られずに自由に生きられたことが幸せだったと思います。

もっとこうすればよかった Things I'm glad I did



住み慣れたグループホーム(GH)で最期まで過ごしていたらよかったかなとは思います。


特養では人数が多いため1人1人に関わる時間が短く、マイペースに歩くアイさんは「歩行困難」とみなされたようで引っ越してすぐ車椅子になっていました。


自分で食事をすることもできるのですが、片付ける都合上なのか食事も介助になってしまい結局全介助に。その後、誤嚥性肺炎を起こし亡くなったとの話を聞きました。


あのままGHで過ごしていただいていればそんなことはなかったのかなとも思いました。誰が悪いとかではないのでアイさんが幸せを感じて最期まで暮らせていたらいいなぁと今では思います。

もっとこうだったらいいのに I wish it was more like this



認知症と一括りに言っても進行状態もみなさん異なりますし、身体機能や認知機能がどれだけ保たれているかもかなりの差があります。アイさんは発語や表情すらない方だったため、他の入居者の声かけに反応できずに浮いた存在となっていました。




職員がその都度、仲介はするのですが常に付きっきりになっているわけではないのでトラブルが起きることもありました。もっと職員数を増やしたり家族に頻繁にきてもらって、アイさんとのマンツーマンの時間を増やせばもっと発語も増えたかもしれないですしいろいろなものを引き出せたかもと思います。

この先 家族を看取る方へ伝えたい事 What I would like to convey to those who will be caring for their families



認知症が進んでいき、物事を忘れることが増えて、ご家族の顔も忘れることが増えてくると悲しい気持ちになると思います。しかしそこから徘徊したり、大声を出したり、泣いたり怒ったりと病状は進行していきます。アイさんのご家族は、要介護4のアイさんをよく在宅介護で今までやってこれたなと正直びっくりしました。


アイさんは、ふとした変化によく気が付き、トイレの失敗などはなくとも本当に意思疎通ができませんでした。「夜中に外に出て行ってしまって探し回るのが本当に大変だった」ご家族もそうおっしゃっていました。事故や怪我なくここまでやってこれたのは奇跡なくらいです。


思い通りにいかない介護は虐待などにも繋がりかねません。面会に来るご家族を見て思ったのは「アイさんが本当に家族として愛されていて、どんなに変わっていくアイさんでも家族は変わらない気持ちで愛していた」ということでした。それはきっとアイさんが今までご家族に注いできた愛の分だけあるんだと思います。素敵な家族だなと思いました。


認知症に静止や否定、強制は逆効果です。共感することから始めましょう。相手が今、何を考えて望んでいるのか。普通の人付き合いと同じです。アイさんのご家族は日々の様子を私が伝えるととても喜ばれました。


「◯◯と言っていたのですが、近所の方ですか?」と聞くと「近所の仲のいい方です。覚えているんですね。◯◯さん、元気だよ。」とアイさんに向かって話しかけていました。単語だけですが畑や田んぼを気にされる発言も見られたので「散歩の際に外の景色を見て、畑や田んぼの心配をされていましたよ。」とお伝えすると、家の畑や田んぼの状態を伝えるとアイさんも安心したように笑顔が見られました。


また、居室で面会している時に何を思ったのかアイさんがドアを開けて居室を飛び出して行ったことがありました。ご家族は一緒に廊下を覗き「何かいた?何が見えるの?」と質問し、歩き回るアイさんを無理やり居室に連れ戻すことなく自由に動いてもらっていました。アイさんは不穏なわけではなくとても笑顔で、誰かに何かを訴えたい様子でしばらくするとまたご家族のいる居室へ戻って行きました。


在宅介護というものはご家族の理解なしでは到底無理です。徘徊などが始まると、周囲の方の理解も必要になってきます。元々ご近所付き合いがある方でしたら理解も得られるでしょうが、なかなかうまくもいかないこともあると思います。


そのために施設があるのでぜひ活用してください。認知症ケアのプロがたくさんいます。また、施設に入居してからもご家族の協力なしでは、私たち職員だけでは限界があります。身体的な介護はできますが、最終的にご本人様を安心させてあげられるのはご家族の存在です。後悔のないように、寄り添ってあげてください。

旅立ったご本人へのメッセージ A message to the person who has departed



アイさんは私にとってとても癒しの存在でした。認知症が進行してご自分から訴えることはほとんどなく表情も乏しかったですが、こちらからたくさん話しかけると笑顔になってくださいました。


休憩時間に和室で一緒にお昼寝したことや、夜勤中起きてきたアイさんと一緒に飲み物を飲みながら語り合ったこと忘れません。穏やかで優しくて、照れながらもお茶目なアイさん。私にとって本当に癒しでした。


アイさんを笑顔にすること、アイさんから言葉を引き出すことが私の1日の目標であり幸せな時間でした。ご家族も私の名前を覚えてくださり、名前で呼んでくださったことがとても嬉しかったです。


「職員の中の1人」ではなく「1人の職員」として見てくれているんだ、ちゃんとアイさんのことを伝えたい、アイさんの可能性を引き出したい!とさらにやる気に繋がりました。しかし、アイさんの気持ち全てを汲み取れていたとは思っていません。至らない点も多々あったと思います。不安な思いをさせてしまってすみません。


アイさんは本当にみなさんから愛されています。私もアイさんのように、みんなに優しい人間でありたいと思いました。たくさんの学びをありがとうございました。