愛されキャラで最期まで頑張って生き抜いた入居者さん
どんな看取りだったかお聞かせ頂けないでしょうか
阿部(仮名)さんは若いころ、女学校で和裁をして過ごされていたそうです。とても穏やかで優しい性格の方で、物静かでしたが自分の意見はハッキリと言われる方でした。
高齢のため身体が弱く、他の方と一緒に激しく身体を動かすような余暇活動はできませんでしたがテレビを見たり本を読んだり書き物をして過ごされていました。
口数は少ないですが入浴はマンツーマンなのでわりとお話をしてくださいました。お湯の温度や身体を洗って欲しい部分、爪を切って欲しいなどしっかりと自分の希望を言われる方だなという印象でした。
ご家族が大好きで、特に旦那様ととても仲良しでお風呂では旦那様との思い出を話してくださいました。ゆっくりお湯に浸かりながら懐かしそうに話すのが印象的でした。
過活性膀胱、不眠症のため夜間も頻繁にトイレに起きてきます。普段は手引き歩行なのですが、職員がいるリビングまで1番近い居室だったため手すりに掴まって自分でリビングまで来られ「おしっこ」と訴えられ介助をすると言った感じでした。
あまり認知症を感じさせない方だったと思います。ご家族ととても仲が良く、旦那様、娘さん夫婦、お孫さん、ひ孫さんが面会に来られると喜んでおり、赤ちゃんを抱いている時には母の顔になっていました。
嚥下機能が低下されているため、食事は刻み食、とろみ食で、量もあまり食べられないので栄養剤などで補っていました。
ご自分でゆっくりと食事することはできますがむせ込むことも多いため、吸引機を常にそばにセットして職員全員が吸引をできるよう研修をしました。タッピングで治ることもありますが、やむを得ず吸引機を使用することも何度かありました。その時はチアノーゼが出ていて危なかったです。
むせ込む回数が増えたことと食事量の低下、高齢のため介助も増えることを見越して特別養護老人ホーム(特養)へ移ることになりました。私も時々会いに行きましたが、認知症の症状も進行は見られず、元気な顔が見られたので安心しました。
そんな日々が続きましたが、あるとき誤嚥性肺炎を起こし頑張っていましたが高齢のせいもあり亡くなってしまいました。
私の担当の方だったため、お葬式で旦那様とお嫁さんにとても感謝され「こんな素敵な家族に最期まで愛されて幸せな生涯だっただろうなぁ」と思いましたし、私も阿部さんやご家族に大変お世話になり多くのことを学び感謝の一言に尽きます。