プライドが高くて面倒見のいい江戸っ子入居者さん
どんな看取りだったかお聞かせ頂けないでしょうか
玲子さん(仮名)は東京で生まれ結婚、空襲で夫の実家に疎開されました。洋服屋を営んでいたということもあり、身だしなみはいつもとても綺麗でお上品。たくさんの高級なコートやセーター、ジュエリーを身につけていて、認知症を患ってグループホーム(GH)へ入居してからも美意識はとても高かったです。
江戸っ子気質で気前がよく、他の入居者の面倒を見てくれたり、職員のお手伝いもたくさんしてくださり助かっていました。認知症ゆえに危険な場面やトラブルにつながることもありましたが、職員が仲介してみんなの人気者&頼れる姉御的存在でした。
タバコを吸う習慣がありましたが病気のため禁止されていて、紙やティッシュをタバコのように細長く丸めて「火、ちょうだいよ」と言うことがあり可愛かったです。
とてもきれい好きで掃除やゴミ出しを手伝ってくださいましたが、認知症の進行に伴い掃除用具の認識、時間の認識がなくなっており、真夜中にご自身の肌着を濡らして雑巾代わりにして廊下をびしょ濡れにするという珍事もありました。
おしゃべりもとても好きで、いろんな人とたくさん話をして、たくさんおでかけをして毎日を楽しくとても自由に過ごされていました。
やる気があるのはいいことなのですが、夜も活動的でお昼寝もせずに興奮状態が続いたため主治医に相談して軽い安定剤を飲むことに。しかし、薬が合わず寝たきりになってしまいました。発語もできない、今までできていたことが何もできなくなり廃人のようになってしまいました。
こんなの玲子さんじゃない!!と薬をすぐに中止し、車椅子からのリハビリを経て少しずつ体力が回復し車椅子を自走、ゆっくり自力で食事ができるようになりました。うまく言葉にはできないけどおしゃべりはしたいようでたくさん話してくれるようになり、マンツーマンでたくさんお話を聞きました。
時間はかかりましたが、服薬前の興奮はなくなりました。また、服薬直後の廃人状態でもなくなり、穏やかに過ごせるようになりました。そんな中、高齢と認知症の進行、日常生活動作(ADL)の低下に伴い特別養護老人ホーム(特養)への引っ越しが決まってしまいました。
GHと特養は併設されているため、入居者を連れて毎日遊びに行きました。以前のような活気はなくなりましたが、久しぶりに口紅を塗ってあげたりマニキュアを塗ってあげると、鏡を見て笑顔が見られました。
特養へ行ってからは環境の変化もあり、GHより刺激が減ってみるみる体力が失われていき寝たきりになってしまいました。それでも声をかけたり手を握ると反応を返してくれました。
ご飯が自分で食べられなくなり、最期は老衰で亡くなってしまいました。最期まで職員、入居者の人気者でご家族もたくさん面会に来てくださり、自分らしく生きられたのではないかと感じました。入社したばかりの私の初めての担当で、多くのことを学ばせてくれた、人生の大先輩です。